「欧風厨房 サントピアット」と「かやもり農園」で生み出した、発芽玄米のイタリア料理/加茂市
『ミシュランガイド新潟2020特別版』のビブグルマンに選出された「欧風厨房 サントピアット」。
県内はもちろん、県外からも多くのお客さんが訪れる加茂市の名店のひとつです。オーナーシェフの桑原宗紀さんは質の良い材料にこだわり、調理方法を研究。常に新たな料理を生み出し続けています。
そんなイタリアンレストラン「サントピアット」がこの夏新たに始めた新メニューがあると聞き、取材に伺ってきました。
地元の食材で本場直伝のイタリア料理を創作する「サントピアット」
JR加茂駅から車で5分。サントピアットは三条市へ向かう国道403号線沿いにあります。
目印はロッジのような造りの建物。しっかり外観を頭に入れておかないと、うっかり通り過ぎてしまうので気をつけてくださいね。
店内は木の温もりが感じられる雰囲気。高級なレストランは異なる空間で、温かみを感じさせてくれる造りです。
サントピアットといえば、パスタ料理を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
特に定番メニューの「漢のミートソース」は絶品です。
味も濃く、どっしりとした見た目ですが、太い麺とソースがしっかりと絡み合って、あっという間に平らげてしまうほど。
本場イタリアで修行を積んだ桑原さん渾身の料理が、スープパン付きのパスタ料理で1,650円(税込)で食べられるなんて、幸せなランチタイムを過ごせそうですね。
精米よりも栄養価が高い加茂産の「発芽玄米」を使ったイタリア料理
そんなサントピアットで今春から新たなメニューが始まったそう。それが、加茂市内で米農家を営む「かやもり農園」の発芽玄米を使ったコースです。
発芽玄米とは、玄米を少しだけ発芽させたお米。玄米よりも栄養価が高く、食べやすくなるといわれています。
玄米は食物繊維やビタミンE、ビタミンB群、鉄、マグネシウムなどを含みますが、ぬか部分が食べにくく、独特な匂いがすることも。食べにくい玄米を発芽させることで栄養価はそのままに、食べやすい発芽玄米をつくれるのです。
そんな発芽玄米の生育に成功したかやもり農園。その発芽玄米を使って新たに考案したメニューが今回ご紹介するコースです。
サントピアットと、かやもり農園で加茂産の新たなコースづくり
最初に出していただいたのは、かやもり農園のズッキーニをふんだんに使った「ズッキーニの冷製スープ」です。
スープの上にあるのは、ズッキーニの花に鮎を丸ごと包み込んだフリット。私たちにはあまり馴染みのない言葉ですが、イタリア料理では定番の料理で、通常、魚や肉、野菜などを揚げた料理を指すようです。
緑が濃く、味も濃厚なかやもり農園のズッキーニ。スープにすることで濃厚な味がギュッと凝縮! 甘みとほろ苦さの両方が口の中で広がってきます。
発芽玄米を土台にその上に魚とサラダ、きゅうりのソースを使用。最初は別々に、あとで混ぜて食べてもらえればと桑原さんが食べ方を教えてくれました。
お米のサラダという今まで食べたことがない料理でしたが、あっという間にお皿は空っぽに……! 自分自身でびっくりしていると、思い出されたのは、お寿司の構造。魚と酢飯を一緒に食べるお寿司と、魚とビネガーを加えた発芽玄米を一緒に味わうのは案外似ているのかもしれませんね。
新たな創作料理を味わいに、加茂に足を運んでみてはいかがでしょうか。
欧風厨房 サントピアット
住所:新潟県加茂市下条甲840-1
営業時間:11:30~15:00(L.O.14:30)、17:30~22:00(L.O.21:30)
定休日:水曜日
電話:0256-53-6680
都内の有名料理店も一目置く、良質な米を生産する「かやもり農園」
かやもり農園は加茂市で300年以上続く米農家。米の旨さに評価が高く、東京都港区の日本料理店「分とく山」をはじめ、数々の名店がかやもり農園のお米を使っています。
ふっくらと煌めくご飯に、見ているだけでもお腹が空いてきますね。白米だけで食べても、噛めば噛むほど甘みが出てきます。
その美味しさの秘密は、栽培方法と肥料。化学肥料を使わず、稲が根から分泌する有機酸を利用し、土壌の浄化と活性化を施す「植酸栽培」で生育しています。一般的な栽培方法に比べ、根をしっかりと張り、自力で成長していく方法です。
かやもり農園の特徴はそれだけではありません。
なんと、加茂川にのぼってくる鮭を使って自分たちで肥料を作っているそう。鮭から自分で肥料をつくる。そんなことが可能なのでしょうか。
お話しを伺うと、加茂川で獲れた鮭を引き取り、専用の機械で発酵熟成させて肥料にしているそうです。加茂川漁協は毎年約1万匹の鮭を捕獲し、稚魚を孵化させるため卵を採取。しかし、川を登ってきた鮭は臭く、食べられるようなものではありません。
その処分方法に困っていたところ、萱森さんが引き取り、肥料にすることに。土壌に良い効果が生まれるようになったそうです。
だからこそ、旨みと甘みの強いかやもり農園だけの味が生まれるのですね。
自分や周りの健康のために。コロナ禍で研究を始めた「発芽玄米」
そんな美味しいかやもり農園の米を発芽させたのが、今回紹介する発芽玄米。開発のきっかけは、自分や友人の健康のためだったといいます。
「コロナ禍で今までと異なるストレスが増え、身近な友人たちも心身ともに疲れるようになっていました。血圧を抑えたり、便秘の改善、痛風にも効果があるといわれる発芽玄米に成功したら、そういった人の手助けにもなるんじゃないかと思ったことが開発のきっかけです」(萱森さん)
しかし、単に発芽させるだけでは、いけません。発芽させすぎない適温でゆっくりと発芽。匂わない発芽玄米ができるようになったのです。
発芽玄米ができてから、萱森さん自身も寝起きがスッキリするといった効果を感じられるようになったのだとか。毎食精米と発芽玄米を1対1の割合で炊き、3食そのお米を食べています。それでも食べにくい人はリゾットやカレーに合わせてもよいそうですよ。
そんな萱森さんの発芽玄米はWebでも販売できるように生産体制を構築中。準備が整ったら、HPで告知をするみたいなので、ぜひチェックしてくださいね。
サントピアット×かやもり農園。発芽玄米サラダ開発のきっかけとは?
その経緯を紐解くと、同じ産地で活動を続ける生産者ならではの関係性が見えてきました。
以前から知り合いだった萱森さんと桑原さん。地元の強みを生かした食材をと考えていたときに萱森さんが発芽玄米に成功したことを知ります。
「初めて発芽玄米をいただいたとき、純粋に美味しくて、すぐにどんな料理に合うか脳内会議が始まりました。料理人の性なのか、美味しい素材を前にすると、すぐに考えてしまうんですよ(笑)。最初はリゾットも考えたのですが、美味しい発芽玄米を使う意味がないなと思って。それで、イタリアでは一般的なお米のサラダを思いつきました」(桑原さん)
そうして試行錯誤の末に生まれた今回のサラダ。上に乗るサラダは、基本的に旬の素材を使っていくので、季節によって変化するそうです。
できるだけ地産地消の料理を提供したいと考えている桑原さん。同じ加茂市に生産者がいる強みはあるのでしょうか。
「直接畑を見れて、直接話を聞けるのが、一番でかいですよね。直接触れることで創作意欲も沸くし、想像力も働く。萱森さんの野菜は前から仕入れていて、間違いない美味しさをわかっていたので、今回話を聞いたときもワクワクしていました」(桑原さん)
この話を受けて、萱森さんは産地で巡る素材の価値について語ってくれました。
「加茂川で鮭をとって、肥料にして、米が育つ。その米を発芽玄米にして、サントピアットで料理として提供してもらう。そうやって加茂市内で素材が循環してお客さんのもとに届けられるのは、何より嬉しいことですよね」(萱森さん)
産地の中で循環していく素材。その素材を利用して米に転換させるのが、かやもり農園で、最大限活用してお客様に届ける役目がサントピアット。お互い作用しあっているからこそ、新しい料理、新しい食文化が生まれていくのかもしれませんね。
加茂生まれの食材を使った新しいイタリア料理。この夏、新食感のサラダを味わいに加茂に訪れてみてはいかがでしょうか。