里山に暮らすように働き、遊ぶ。「里山ワーケーション」で新しい故郷づくり/胎内市


2021年08月05日 1020ビュー
そういえば最近、故郷を思い出すことが多い。

昨今の状況が続くとふと騒がしさから逃れて落ち着ける場所へと考えるのは、心の拠り所がそこにあるからだと思う。さらに近年、生まれ育った土地以外にも故郷をつくる人たちが増えているそう。なぜかと聞くと何度も訪れたくなる地域を第2第3の故郷として愛おしむようだ。

こうした動きを加速させたのは働き方改革をきっかけに定着したリモートワーク。地域に滞在しながら都内の仕事を行う働き方で、私の生まれ故郷である胎内市でも2020年4月に『里山ワーケーション』が発表された。
里山に暮らすように働き、遊ぶ。新しい暮らしを体験できるプログラムとはなんだろう。

わたし、ライター水澤は帰郷がてらに故郷らしさを再発見するため、里山ワーケーションの拠点となる『ロイヤル胎内パークホテル』を訪れました。そこで、里山ワーケーションの企画と実施を行う胎内市の比企寛一さん、ロイヤル胎内パークホテル副支配人の樋口透さんと地元への想いと可能性を探ります。
胎内市商工観光課観光振興係の比企寛一さん(左)ロイヤル胎内パークホテル副支配人の樋口透さん(右)

山と川、海。何度も訪れたくなる胎内市

※写真提供:胎内市のチューリップフェスティバル

人口2万9000人ほどの自然に恵まれた胎内市。日本らしい四季折々の原風景と集落が点在し、国内でも珍しい山と川、海が交わる地形です。

胎内市の村育ちの私にとって暮らしの余白をもたらす光景を見ながら澄んだ空気をいっぱい吸い込み、大きく深呼吸。里山ならでの視界がパッと広がる故郷です。
※写真提供:胎内市築地にある養老牧場『松原ステーブルス』では競走馬から引退した馬たちが暮らす

胎内らしさを生む風土は農業や林業、漁業にとっても恩恵が大きい。市の花であるチューリップは国内有数の産地のひとつに数えられ、広大な土地を活用した養老牧場の松原ステーブルスでは馬たちとふれあえる乗馬体験など地域が生業と一体となって育まれています。

私にとって何もないようで何でもある故郷。比企さんは加えて胎内市の未来についてこう話します。
「胎内市では2019年度から観光資源を暮らしへとつなげるために『旅人を“ムラビト”へ』というビジョンを掲げています。観光で訪れた方たちが単なる旅で終わらない、地域との新たな関係性を築く環境づくりを始めました。里山ワーケーションもそう、旅人が何度も訪れたくなるふる里にむけての取り組みです」(比企)

原風景に故郷像を重ねる

新緑あふれる初夏、里山ワーケーションの舞台となるロイヤル胎内パークホテルを訪れました。JR中条駅から車で20分ほどの距離にあって、道中にはのどかな田園が広がります。
夏の風物詩に後ろ髪をひかれながら進むと見える、川の水面に広がる古城のような佇まいがロイヤル胎内パークホテルです。
この田園風景を前にして懐かしさを感じながらも、ロイヤル胎内パークホテルの樋口さんに初めて胎内市に訪れる方たちをどうお出迎えしているのかをお聞きました。
「毎日当たり前のように見ている光景も、初めて訪れる方からは、ここはすばらしいロケーションで周囲の緑は季節によって色々な表情を想像でき、1日では足りない魅力的な場所と言っていただきます。

私自身、こうした地域の良さとは本来訪れた方によって再発見され続けるものだと考えます。人によっては日常から逃れたい気持ちがあり、自然に帰れば気持ちが落ち着いてリラックスすることができます。その過程では、家族や職場の同僚とのたわいもないコミュニケーションは変化していき、ここでしか得られない発想や関係性も育まれます。

私どもは、滞在者の皆さまがありのままの胎内市で見つけた魅力をさらに磨き上げるプロセスへとつなげていきたと考えています。地域としてバージョンアップするためには、外からの目線と内からの行動が必要ですから」(樋口)

里山探索に出かけてみよう!

ワーケーションとは仕事(ワーク)と休暇(バケーション)をかけ合わせた造語で、日本らしさを味わうために四季折々の地に数週間滞在して、リフレッシュしながら遠隔地で働くものです。

ロイヤル胎内パークホテルではリモートワークで働くための環境が整えられています。全館はWi-Fi完備、インターネット速度は早くて仕事がスムーズに行えます。しかも、宿泊先の部屋に入ると窓越しからみえる自然に癒されて移動の疲れさえ忘れてしまう。
※部屋に備え付けられているコーヒーとお茶で一息

ロイヤル胎内パークホテルではワーケーション用のプランがあり、申し込みを行うと館内中2階にあるビジネスセンターの利用やカフェテリアBaumuのコーヒー無料サービスが付くといった仕事に没頭する時間を持つことだってできます。
仕事の合間に休暇したい方にとってもサービスが充実しています。電動アシスト付きの自転車(1組2台まで)やテニスコートの貸し出しも無料、気分転換でひと汗を流すことも簡単です。さらに里山散策も旅の醍醐味で心躍らせるひとときです。

受付でもらえる胎内リゾートマップを片手に周辺をおでかけしてみましょう。
※写真提供:自然が多いエリアでのサイクリングは風が心地よい。
里山には野生の動物たちが棲みついていて、道端で猿の群れや渡鳥と出くわすことも。私も日陰で一休みする猿たちの姿を発見しました!
 
多様な休暇を楽しめるように他にもアクティビティを用意していると樋口さんは語ります。
「ご覧いただいたようにホテルを拠点に歩ける距離に遊び、働くための環境がすべて揃っています。さらに、車で数十分進むだけで、まだ見ぬ深い自然の木々と出会える奥胎内エリアもあります。

ホテル敷地内ではアウトドア・スウィートルームをコンセプトにしたグランピング施設のご利用、県内アウトドアブランドのスノーピーク商品を提供する『てぶらでキャンプ』などでアウトドアを追体験できるはずです。

そしてホテルでゆっくりと星空を眺めながら化粧水のような泉質の温泉に入って日常の疲れを癒していただきたい
」(樋口)
※胎内ロイヤルパークホテルでは、アウトドア・スウィートルーム『ザ・ロイヤルグランピング』など外で過ごすためのサービスがある

地域全体を使った学び場の可能性

※写真提供:奥深い自然と同居する奥胎内ブナ巨樹

2021年7月、ロイヤル胎内パークホテルでは県内小学校の修学旅行を受け入れの際に、豊かな自然を生かした学びを実現すべく周辺施設と協力してキャリア教育を実施しました。樋口さんは胎内市の歴史を知るきっかけもつくれたと笑顔を見せます。

「当館を拠点にして樽ケ橋遊園を楽しんでもらったり、胎内自然天文館で夏の星空について学んだり。ライフル射撃場や黒川郷土文化伝習館での体験、当館でテーブルマナーを学んだり、天然石を使ったアクセサリ作成体験を行ったりと胎内を満喫していただき、大変好評でした」(樋口)
写真提供:JR中条駅からロイヤル胎内パークホテルまでの道中にある樽ケ橋遊園
※写真提供:週末には星空観望会を行う胎内自然天文館。

「私どもスタッフも、キャリア講習会としてお話させていただく機会があり、子どもたちのキャリアにつながるきっかけを生み出せたと考えます。こうしたキャリア学習も周りの地域と人の関係があってこそ。胎内の地を魅力的にお伝えする環境がここにはあります」(樋口)

地域密着型プログラムを通して双方向に愛着を持つ故郷へ

ロイヤル胎内パークホテルの近くには、本格的な地ビール製造を目指して開園したビール園『胎内高原ビール』や四季折々の花が咲く『胎内フラワーパーク』、昆虫を知ってふれあえる『胎内昆虫の家』などと他にも学び場となる施設や環境があります。
※新緑の夏から紅葉の秋に移り変わる今、無料開放を行う胎内フラワーパーク
※写真提供:生きた昆虫とふれあえる胎内昆虫の家
胎内市の観光資源を生かすために里山ワーケーションをきっかけにブラッシュアップすることで、ここでしか体験できない地域密着型プログラムができると比企さんは言います。
「我々の取り組みは胎内市をまず知っていただくことから始まります。地域を知ってもらう中で地域との強いつながりを深めていただき、観光だけでは体験できない思い出をつくってもらえればと。

例えば、ボランティア休暇で訪れた方には松原ステーブルスでの馬のお世話や胎内市村松浜の海岸沿いのクリーンアップ、農業体験など希望する方たちに里山ワーケーションの一環として体験していただくことも可能です。

もちろん迎え入れる人たちにとっても、良い循環が生まれると考えています。滞在する方たちとコミュニケーションをすることで、胎内に住む私たち一人ひとりが主役となるきっかけが生まれ、全員主役となることで地元への愛着が育まれていきます。また滞在する方も胎内をふるさとと思い、また行きたい、また帰りたいと。そういった思いがあふれる地域をつくっていきたい」(比企

終わりに

里山ワーケーションとして滞在するロイヤル胎内パークホテルと胎内市には、新しい暮らしを体験するための土壌が耕されていました。

豊かな自然を享受しながら多彩なアクティビティで感性を磨くのもよし。地域密着型プログラムを通して地域の人との関係性を築いたり、原風景を眺めながら澄んだ空気のもとリフレッシュするのもよし。今回訪れた初夏以外にも、季節によって享受できるものが多彩にある故郷の在り方。

ただ残念ながら、コロナ禍の影響で首都圏からの受入が厳しい状態となっています。そこで県内に暮らす方たちにも、新しい働き方を体験しに胎内市を訪れてみてほしい。
※夏はパラグライダーをアクティビティとして楽しめる『胎内スキー場』も拠点の近くにある

胎内市を散策するたびに「子どもの頃に親戚と昆虫の家へ遊びにいったな」「ここでバーベーキューをしたな」と私自身の記憶が蘇ってきて、無意識に心が落ち着くことができました。きっと記憶の積み重ねが日々の暮らしに豊かさを生み、また頑張ろうと思えるのだろう。

第2第3の故郷像を見つけに、胎内市で遊ぶように暮らしてみてくださいね。
 
ロイヤル胎内パークホテル

ロイヤル胎内パークホテル

〒959-2822 新潟県胎内市夏井1191番地3
TEL:0254-48-2211
FAX:0254-48-2000

胎内ロイヤルパークホテル

この記事を書いた人
水澤 陽介(みずさわ ようすけ)

新潟県生まれ、東京、沖縄を経て地元新潟にUターン。2021年2月、三条市の中央商店街に本屋「SANJO PUBLISHING」を立ち上げ、“まちを編集する本屋さん”をモットーにまちの魅力を集め、届けています。 まちを編集する本屋「SANJO PUBLISHING」(https://note.com/ncl_sanjo