本格会席料理をカジュアルに楽しめる「手紙」/新発田市


2021年12月25日 10105ビュー
料亭や割烹などでいただく「会席料理」。
ちょっと敷居が高いイメージがありますが、そんなイメージを覆すお店が新発田市にあります。
それが今回ご紹介する「手紙」さんです。

会席料理をカジュアルに楽しめるお店なのですが、まずは…店名が気になりません?!

そんな素朴な疑問も含め、今回、お話を伺ったのは総料理長の廣岡雅志さん。
同じく新発田市内にある江戸創業の老舗割烹・北辰館(ほくしんかん)の9代目であり、手紙は廣岡さんが手掛けるカジュアル会席のお店です。
 
廣岡さんは東京でくずし割烹で知られる名店「割烹 枝魯枝魯(ぎろぎろ)」で修業。(枝魯枝魯は本店が京都にあり、海外にも店舗を持っています)
料理長を務めるなど同店で和食の腕を磨いた後、地元に凱旋し、2010年に新発田市内に「手紙」というお店をオープンします。その後2017年の移転リニューアルしたそうです。
なるほど、店名の謎が解けました。
 
ちなみに店名には、手紙のように“思いを込めて大切な人に届ける”という願いが込められています。

本格和食の数々を気軽に楽しんでほしい

ランチは御膳と会席料理、夜は会席料理とアラカルトなどを提供する手紙。
今回は夜の会席料理から数品をご用意いただきました。
 
ちなみに、会席料理は「月替わり会席」(4,950円/税込)」がベースで、内容がグレードアップする「特別会席」(6,600円)、「雅会席」(8,800円)などがあり、いずれも旬の地元食材が堪能できます。
 
本格的な和食をリーズナブルに楽しめるという点は、枝魯枝魯のコンセプトを踏襲しています。
 
それでは料理のご紹介、まずは前菜から。
左奥:ほうれん草と舞茸の白子豆富和え
右手前:(さば)の千枚蕪(かぶら)寿司

小鉢に入っているのは、ほうれん草と根菜をこくのあるマダラの白子と豆富で和えた一品。舞茸の風味が秋を感じさせます。
上に乗っているイクラは麹漬けにしてあり、白子豆富と合います!
日本酒が合いそうですね。

締め鯖と蕪の千枚漬けの押し寿司は、べったら漬け(麹漬け)にしたカブと軽く締めたサバの脂が好相性。
一手間掛けたこだわりの味に、一品目からわくわくが止まりませんよ!

続いては椀物。
地場野菜と原木なめこの鰤(ぶり)しゃぶ仕立て

「一つの椀の中で、ブリのしゃぶしゃぶを表現した」という一品。コンセプトが面白い!
大根やニンジンなどの野菜(なめこ以外)は生で盛り付けてあり、鍋料理風でありながら野菜の食感を残しています。
だしでさっと湯通しされた旬の鰤と野菜を、すっきりとしただしが引き立てます。

上品さと遊び心

2品をいただいて感じるのは、京料理のような上品さです。
廣岡さんはあまり意識されていないそうですが、千枚漬けやぶりしゃぶ仕立ての料理は京都発祥のお店での経験がなせる技なのかもしれないし、京都の千枚蕪を東京のべったら漬けにしてしまうあたりは、東京で修業した廣岡さんならではの粋なセンスを感じさせます。
 
ちなみに、手紙の箸はちょっと長めなのですが、これは京都のお店などが盛り付け用に使う箸だそう。
 
先ほどの2品は「月替わり会席」で楽しめる料理の例でしたが、続いては「特別会席」で味わえる一品をご紹介。
新発田牛(しばたうし)の炭火焼き
 
透かし彫りが素敵な器に載っているのは、近年誕生したブランド牛「新発田牛」のイチボ。
「にいがた和牛」の中でも4等級以上で、新発田産の稲わらで育てるなどの条件を満たした和牛は、上質な肉質を誇ります。
 
焼き加減が絶妙なこのイチボは、赤身と脂身のバランスがとてもいいですね。
仕入れてからお店で寝かせたそうで、熟成された香りとうま味が感じられます。
 
添えられているのは、地元産の甘長唐辛子の醤油漬け。
「ソース代わりにどうぞ」と廣岡さん。なるほど、これは肉だけで食べるのとはまたひと味違うおいしさです。
いわゆる“味変”でしょうか。上品な甘さをより強く感じます。
 
「和食では四足の肉(牛や豚など)は使わないのがセオリーなんですが…」と無邪気に語る廣岡さん。
そういう意味も含めて特別な料理と言えそうですが、新発田のおいしいものを提供したいという思いと自由な発想が表れている一品です。

今回のお料理はここまでですが、取材におじゃました日の会席コースでは他に、ソース状にしたあん肝ポン酢でいただくヒラメのお造り、ぬた和えを添えたアンコウの天ぷらや、鰤タレかつとサトイモの土鍋ご飯など。
う~ん…これはフルコースで食べてみたい!

ちなみに、甘味のフロランタンは自家製。シルクスイート(蒸し)は、高温でじっくり焼いたサツマイモを寝かせ、蜜を戻してから蒸すというふうに手間を惜しみません。

地元の素晴らしい食材の魅力をお届けしたい

東京から地元に戻り、「手紙」をオープンした頃は、“新発田の人々に、地元にはないおいしい食材を提供したい”という考えだった廣岡さんですが、地元でお店を続けていく中で、いつしか“幅広い人々に、地元のおいしい食材の魅力を”というスタイルに変わったそう。
市外・県外からのお客さんには新発田の食材の魅力を伝え、そして地元の人には「やっぱり新発田の食材っておいしいよね」と感じてもらえるお店作りが現在の手紙の存在意義となっているようです。
 
まるで一文字ずつに思いをしたためるように、一品一品に手間暇をかける。
起承転結があるように、京料理をベースとしたさまざまな技法やアイデアで食べる人を楽しませてくれる手紙。

コストパフォーマンスという言葉だけでは言い表せない、作り手の想いが感じられるお店でした。
 

最後に、おいしい会席料理に欠かせないお酒のご紹介など。
私からの追伸です(笑)
地酒は新発田市内の酒蔵をはじめ、佐渡や県内各地のものを取りそろえています。
また、地ビールは月岡温泉以外ではあまり飲めない「月岡ブルワリー」を取り扱っています。

店内は、カウンターの他、オープンな雰囲気のテーブル席と半個室風のテーブル席。
そして、6~8人程度で使える個室もあります。
人数がまとまるなら、落ち着いた雰囲気の個室でぜひ。
早めのご予約をおすすめします。
手紙

手紙

住所/新潟県新発田市中央町3-5-7
TEL/0254-21-2950
営業時間/ランチ 11:45~13:30(L.O.)、ディナー18:00~21:15(L.O.)
定休日/日曜、第1・3月曜

この記事を書いた人
ケバブー

長岡生まれ新潟育ち。 ​
郷土料理からラーメン、地酒やスイーツまで新潟の食を広く愛するフォトライター。