幻の長岡黒いなり復活!定番からスイーツまで楽しめる老舗「吉田屋とうふ店」/長岡市


2021年12月28日 10558ビュー
創業1940年の吉田屋とうふ店。現在の店主は四代目にあたる佐藤剛純さんです。ん?吉田屋なのに佐藤さん?じつは創業者が吉田善吉さんという方で、そこに修業に入ったのが剛純さんのお祖父様だったのです。創業者、祖父、父、そして剛純さんとバトンをつないで来た吉田屋とうふ店。その特徴は昔ながらの手づくりにこだわり、県産大豆を使用していること。地産地消、SDGsを地でいくとうふ屋さんなのです。

リニューアルオープンしたばかりの店舗

2021年秋に改装を行ったばかりという店舗に、早速行ってみました。
店内に入ると、右側の棚には店長が選りすぐったオーガニックな食品がずらり。大豆ミート、添加物・化学調味料不使用のカレールーなどがありました。商品棚の奥にはイートインコーナーもあります。
左側には豆腐や豆乳を使った商品などが並んだ冷蔵棚があります。どれもおいしそう!
こちらは定番商品の豆腐。上段のふたつがおぼろ豆腐(小・170円、大・450円)。左下が木綿とうふ(1丁・300円)と生ゆば(350円)になります。ほかに絹豆腐(1丁・320円)、胡麻豆腐(1パック・400円)、生揚げ、がんもどきなど(いずれも1個100円)もあります。
※以下、記載する価格はすべて税込

職人の技が光る絶品の手づくり豆腐

さてこの豆腐たちはどのように作られているのか、その製造工程を見せてもらいました!
水につけて水分を吸った大豆をすりつぶし、それを煮窯で煮ます。それを濾すとおからと豆乳に分かれます。写真は濾し取ったおからをさらに手作業で絞っているところ。
こうして出来上がった豆乳ににがりを加えて混ぜるとおぼろ豆腐になります。機械化が進んだ今、このように手作業で行っているところはかなり少ないそうです。「その日の気温や湿度などによって仕上がりが変わるため、毎日微妙に調整しながら作業しています」と佐藤さん。
こちらは油揚げを作っているところ。先ほどの工程と同様に、その日の気象条件に合わせて油の温度、引き揚げるタイミングなどを変えるとのこと。吉田屋の作業は「職人の勘」による部分が大きいのです。

明治創業の味を受け継いだ「長岡黒いなり」

吉田屋のもうひとつの看板商品は「長岡黒いなり」です。これは明治43年に創業した配達寿司専門店「山澤屋」の人気商品でしたが、2007年に惜しくも閉店。その後も注文の電話が鳴り止まないためやむなく電話番号を変えたという逸話が残るほどで「なんとかあの黒いなりを復活してほしい」という声に応えるべく、油揚げを納品していた吉田屋とうふ店が製造を引き継ぐことになったのです。
写真は黒いなりの生地となる油揚げを切って中を開いているところ。すべて手作業!柔らかいので生地が破けないように気を付けながらの作業です。
大きな鍋に数百枚の生地を投入!一煮立ちさせたあと、油抜きのためもみ洗いを行います。もみ洗いは水を替えて繰り返すこと、3〜4回!この手間をかけることで、生地に味がしみやすくなるのだとか。
その後、醤油ときび砂糖を投入し2日間かけて煮込んで、ようやく「長岡黒いなり」の完成!とても手間がかかっている一品なのです。
店頭にはいなりだけをまとめてパックしたもの、細かく刻んだもの、そして駅弁の「池田屋」が中身の酢飯を詰めて作ったいなり寿司のパックが並びます。「ご飯嫌いのお子さんに、これを混ぜたものを出したら『甘塩っぱくておいしい』とパクパク食べてしまったそうですよ」と佐藤さん。たしかに箸が進みそうですね。
(左:長岡黒いなり5枚入り350円、右:長岡黒いなり10枚入り680円、手前:刻み長岡黒いなり150円、1枚目の写真のいなり寿司3個入りは480円)

スイーツも展開

豆腐やお揚げ以外に、豆乳を使ったスイーツも展開しています。
長岡市のイタリアンレストラン「アルチェッポサバン」に豆乳を提供して作ってもらっているのはブラマンジェ(220円)です。聞きなじみのないスイーツかもしれませんが、ババロアやパンナコッタのような食感が特徴で「醤油を1〜2滴たらして食べてもおいしい」そうです。
さらに牛乳のかわりに豆乳を使ったラテシリーズ「Touffee(トウフィー)」もあります。
最初に雪室珈琲を使った珈琲ラテと、宇治抹茶を使った抹茶ラテを開発。その後お店のリニューアルに合わせて、宇治ほうじ茶を使ったほうじ茶ラテ、ガーナ産ピュアカカオを使ったカカオラテ、長岡黒いなりの濃厚なタレを使った長岡黒いなりラテを開発し、現在は5種類が販売されています。
開発のきっかけは佐藤さんがコーヒーに豆乳を入れて飲んでみたところおいしかったから。「牛乳と違ってとろみがあるのでコクのある仕上がり」になっています。
(左から珈琲ラテ230円、抹茶ラテ230円、長岡黒いなりラテ230円、カカオラテ250円、ほうじ茶ラテ250円、いずれも200ml)
ほかに長岡・栃尾地域の「三崎屋醸造」とコラボレーションした豆乳甘酒も販売。三崎屋醸造は新潟県で初めて甘酒を販売した蔵元だそうです。
(左:豆乳甘酒400円、右:豆乳320円、いずれも500ml)
昨年秋のお店のリニューアルに合わせて、店外に自動販売機を設置しました。これでお店がお休みの日や営業時間外でも、吉田屋の人気商品を買うことができます。長岡黒いなり、Touffee(トウフィー)もこちらでも販売しています。(いなり寿司はありません)
思った以上に人気があり、仕事終わりの方が閉店後に購入していくことも少なくないそうです。自販機で買えるいなり……せっかくなので私も購入してみることにしました。
普通の自販機と同じようにほしい商品のボタンを押します。すると、缶コーヒーが落ちるようにゴトンと音がして、長岡黒いなり5枚入りが落ちてきました。
観光に来られた方も手軽に立ち寄って買っていけるので便利ですよね。

いざ実食!

家に戻って早速いただいてみました。
左の3つあるものが「長岡黒いなり寿司」として売られていたもの、右が自販機で購入した長岡黒いなりに自分でご飯を詰めたものです。プロの技と比べるとだいぶ見た目が違いますね……でも、味はどちらもいけました!
いなり寿司で売られているものは、駅弁の池田屋さん特製のゴマとショウガ入りの酢飯が詰められており、風味抜群です。自分で作ったものはただの白飯を詰めただけですが、皮の味が濃厚なのでそれでも充分で、しっかりとしみ込んだ奥深い味が口いっぱいに広がりました。
さらに残ったいなりをアレンジして、きつねうどんを作ってみました。
かけうどんに、長岡黒いなりを乗せるだけで完成!お手軽でぐーんと美味しいきつねうどんに仕上がりましたよ!
デザートはもちろん、豆乳を使ったブラマンジェ。豆の風味と優しい甘さが際立つ一品でした。
地元の伝統を守りつつ、新しい味にも挑戦している吉田屋とうふ店。
ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。

吉田屋とうふ店

住所:新潟県長岡市川崎町2222-2
TEL:025-32-1547
営業時間:午前8時から午後5時30分(月〜金曜日)/午前8時30分から午後5時(土曜日)
休日:日曜・祝日

吉田屋とうふ店

エリア

長岡・柏崎エリア

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この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中