豪商の館で紅葉を楽しみながら建物探訪。旧齋藤家別邸/新潟市


2021年11月20日 6421ビュー
かつて新潟三大財閥のひとつとして数えられた齋藤家。その4代目当主・喜十郎が本宅とは別に迎賓館として大正7年に作った邸宅が「旧齋藤家別邸」です。ちなみに本宅は残っていませんが、その一部が白山公園に移築され「燕喜館」として活用されています。四季折々に表情を変える庭園は1年を通して見どころたっぷりですが、せっかくなら紅葉の季節に!ということで、訪ねてみました。

庭屋一如の美しい邸宅と庭園

旧齋藤家別邸は「庭屋一如(ていおくいちにょ)」の考えのもとに作られたお屋敷です。これは「建物と庭園を一体として考える」ということ。そのため室内から庭園を見たときにいかに美しく見えるかということが考え抜かれて作られています。
まずは1階大広間の入り口脇にある「板戸絵」に注目。孔雀があしらわれています。ガイドの方も「(お庭を見る前に)まずは板戸絵を見てください」と来場者に案内していました。こちらは皇室の御用品を多く手掛け、宮内庁三の丸尚蔵館などに作品が収蔵されている佐藤紫煙の作です。ほかの部屋に紫煙作品はもう2枚あるので見落とさないように……。
こちらが1階の大座敷で、注目ポイントは「欄間」です。通常、こういった屋敷の欄間は豪奢な彫り物が施されていることが多いのですが、あえてシンプルな作りになっています。ここを作った四代目齋藤喜十郎が、京都の桂離宮に着想を得て、あえてこのようなしつらいにしたそうです。
昔のお屋敷にはさりげないところに、素敵なあしらいがあります。床脇の違い棚もぜひチェックを! 漆塗りに金の蒔絵で描かれているのは「四君子」です。四君子とは蘭、竹、菊、梅のこと。日本では美人のことを「いずれアヤメかカキツバタ」と表現しますが、古来の中国では人格者=君子を美しい植物花四種にたとえており、それが四君子です。転じて、日本では江戸時代から吉祥紋様として使われるようになったそうです。
こちらは1階の大広間から見た庭園です。ガイドの方いわく「砂丘の斜面をうまく使った庭園」で、この土地のあるがままの姿を活かしているそうです。ここは県で11番目、新潟市では初めての国指定名勝になります。
縁側から見た庭園の風景。松の緑に紅葉が生えて美しいですね。
大広間の西隣は四畳半の茶室になります。正面に見える木は梅です。床の間を背にした主客席に座ると垣根が立てられていて、広大な庭園を見ることができないようになっています。華麗な風景を隠すことで、茶の湯の侘びさびを表現しているそうですよ。じつに粋ですね!
西端にあるのが「西の間」です。ここは主人の部屋であり、人をもてなす場としても使っていたそうで、数段階段を登らないと入れないようになっていて、床を上げることで格の高さを表しているそうです。ここからは竹を望むことができます。
というわけで、庭を東から西までずっと見ると吉祥の「松竹梅」が揃う仕掛けになっていたのです!同じ庭を見ているのに、窓をうまく使った演出で「違った風景を部屋ごとに楽しめる」ようになっています。
ここでガイドの方にいざなわれて2階に移動しました。「皆さん、必ず声をあげて驚かれますよ」と言われました。そうですよね。私も何度か訪れていますが、そのたびに「きゃー!ステキ!」と叫んでしまいます。今回もやはり声をあげてしまいました。
旧齋藤家別邸では紅葉の季節に合わせてライトアップも行われています。
こちらが同じビューでライトアップしたときの様子です。ちなみに2021年は紅葉がやや遅いようです。通常は11月中旬が見頃のところ、11月下旬頃になりそうだということでした。
1階と同じ庭を見ているのに、視点が高くなるだけでまったく違って見えるのも魅力です。
ベンチが用意されているので、座ってゆったりと眺めることもできます。ぜひいろんな角度からお庭を堪能してみてください。
さて、1階に戻って次にガイドの方に案内されたのは、かつて茶の間や女中室として使われた和室です。ここでは齋藤家の歴史などについての展示があります。各界の名士とのつながりも深くノーベル賞作家、総理大臣経験のある政治家など、ジャンルの違うさまざまな人物の来訪があったことも写真入りで紹介されています。
主屋の東側にはがあります。かつては外蔵でしたが、その後増築してつないだそうで現在は内蔵となっています。ここではその時々で季節のしつらいの飾り付けをしたり、企画展を行ったりしています。訪ねたときには秋のもみじのしつらいがされていました。

庭園散策も楽しもう

屋内をたっぷり堪能したところで、次は庭園散策をしてみました。一度、玄関から外に出て、右に曲がり石畳伝いに進んで行きます。
こちら庭園から見た屋敷です。
築山を登って、頂上にある茶室を目指しました。この茶室は非公開で入ることはできませんが、縁側でゆったりすることができます。茶会などの催事で特別に開放することもあるそうです。
ガイドの方が「百年を過ぎた古民家と、近代的なビルを一度に俯瞰できる風景が見られる」と解説されていましたが、まさに過去と現代、ふたつの時代がひとつの画角に収まる不思議な光景を堪能することができました。
下山して、池越しから見た屋敷です。どこから見ても絵になるとしみじみ。
こちらは邸宅側から池を見たときのライトアップの様子。幻想的な風景ですね。

抹茶でまったり。穏やかなひととき

最後に喫茶コーナーに立ち寄りました。メニューは抹茶、コーヒー、甘酒(いずれもお菓子付き・税込500円)です。ここはやはり抹茶をチョイス。秋らしく、付いてきた和菓子にも紅葉を発見。アマビエさまを象った和菓子で昨年話題になった新潟市中央区の金巻屋さんのお菓子だそうです。
かつて新潟は湊町という地の利を生かした回船業で栄え、旦那様が多くいました。そのため社交の場として花街が発展し、それに応える料亭もあり、風情ある街並みが作られていきました。そのような古き良き旦那衆の名残のひとつがこの「旧齋藤家別邸」になります。そんな街の歴史に思いを馳せつつ、お抹茶を飲んでほっと一息。
ここは何度来ても、飽きることがありません。一度訪れた方も、ぜひリピーターとして訪ねてほしい施設だと改めて感じました。

旧齋藤家別邸

住所:新潟県新潟市中央区西大畑町576
TEL:025-210-8350
開館時間:午前9時30分から午後6時(4月〜9月)/午前9時30分から午後5時(10月〜3月)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)/祝日の翌日(土・日に当たる場合は火曜日)/年末年始(12月28日〜1月3日)
観覧料一般:大人300円/小中学生100円
毎年秋にライトアップイベントあり(2021年は11月12日〜14日/19日〜21日・午後5時30分〜7時30分)

旧齋藤家別邸

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新潟・阿賀エリア

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この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中