河井継之助と酒を訪ねる旅のススメ①〈小千谷編〉/小千谷市
〈深く、濃く、美しく 新潟を伝える保存版観光誌〉『新潟発R』の編集長をしております髙橋真理子です。
新潟県長岡地域振興局さんとのコラボ企画で投稿させていただきます。
作家の司馬遼太郎さんが幕末の長岡藩家老・河井継之助を描いたベストセラー小説『峠』が初めて映画化され、6月17日(金)から全国公開を控えています。
映画『峠 最後のサムライ』をきっかけに、河井継之助ゆかりの地と、その地で醸される日本酒を楽しむ〈歴史と酒を巡る旅〉に出かけてみませんか。
まずはリーフレットをチェック!
幕末を激しく生き抜いた継之助ゆかりの小千谷市、長岡市・摂田屋、見附市・今町の〈歴史と酒を巡る旅〉レポートを3回シリーズでご紹介します! 初回は小千谷編です。
談判の舞台の旅は小千谷駅からスタート
地下通路の入り口近くには、ポケモンの絵が描かれたマンホール蓋「ポケふた」の「コイキング」も! 探してみましょう。
小千谷には、「たかの井」蔵元の高の井酒造と、「長者盛」蔵元の新潟銘醸があります。どちらも駅から徒歩圏内ですが、今回は先に継之助ゆかりの地から訪ねることに。
小千谷の中心市街地は信濃川の河岸段丘上に発展してきました。駅から徒歩約20分歩き信濃川を渡ったエリアに、歴史を伝えるスポットが点在しています。
小千谷市と聞くとすぐに思い浮かぶのが、へぎそば、錦鯉、片貝の花火、牛の角突きなどの特産品や伝統行事ですが、小千谷の歴史に大きな影響を与えてきたのが小千谷縮。
国の重要無形文化財でユネスコ無形文化遺産にも登録されている特産品です。
江戸時代には宿場町であり、信濃川舟運の要衝地でもあった小千谷。江戸中期に伝統の麻織物を改良して生まれた小千谷縮の産地として、さらに魚沼地方から塩沢紬などの織物が集まり、江戸や京都へ移送される地として栄えていました。
信濃川を渡った元町や本町エリアを巡る前に、継之助が戦争回避のために新政府軍と談判をした慈眼寺を目指しましょう。ここでの談判決裂により、歴史は北越戊辰戦争へと動いていきました。
慈眼寺までは駅から徒歩約30分、タクシーを利用すれば約6分です。今回は小千谷の町の空気を味わいながら、歩いて向かいました。
談判の舞台で、小千谷商人の気風に触れる
新政府軍が小千谷陣屋に本陣を構えたとき、縮問屋の小千谷商人たちの判断により、即座に新政府軍に協力したことで、小千谷は戦禍を免れました。
「談判の日は旧暦でいえば6月。梅雨のじめじめとした空気が、この会見が決裂することを予言していたのかもしれませんね」
新聞連載開始前の1965(昭和40)年に取材で訪れた司馬遼太郎さんの芳名帳は、現在でも大切に保管されています。
慈眼寺では継之助が使っていた茶碗などの貴重な品も保管しており、会見の間に飾られた2人の肖像画や継之助の書などとともに鑑賞できます。
慈眼寺から徒歩8分ほどの船岡公園の一角には、船岡山西軍墓地もあります。
慈眼寺は2004(平成16)年10月の中越地震により、「会見の間」の壁が崩れ落ちるなどの被害を受けましたが、全国の檀家や歴史ファンからの寄付によって復興。
「皆さんに感謝しています」と船岡住職。見学希望の場合は事前に連絡を入れましょう。
慈眼寺
小千谷市平成2-3-35
TEL.0258-82-2495
見学は要予約
公式サイト
江戸時代から続く割烹で歴史に酔う
慈眼寺や船岡公園を訪ねた後は、信濃川へ向かって約10分歩き、談判決裂後に継之助が昼食をとったといわれる1730(享保15)年創業の老舗割烹東忠へ。
現在は居食亭 東忠としておよそ300年の歴史を受け継いでいます。
地元小千谷の高の井酒造と新潟銘醸の地酒は、季節限定酒を含め各種メニューに並びます。他に県内の人気地酒も扱っています。
談判決裂後の継之助の気持ちを想像しながら、小千谷の幸と桜めし、そして地酒を味わってみたいですね。
居食亭 東忠
小千谷市元町11-11
TEL.0258-82-2033
営業時間/11:00-13:30(カフェは-16:00)、17:00-22:00(夜のみ要予約)
定休日/不定休
天領だった港町・小千谷の歴史を歩く
幕府直轄の天領だった小千谷。その陣屋は、1724(享保9)年からは会津藩が管理する出張陣屋となっていました。
陣屋跡から約5分歩き、真言宗の寺・五智院へ。
この寺院には、1868(明治元)年に日本初の公立学校といわれる振徳館が開講されました。
その歴史は現在の小千谷小学校に受け継がれています。
五智院から信濃川へ向かって徒歩約6分。
支流の湯殿川河口近くに、かつて小千谷港(舟改番所 ふなあらためばんしょ)がありました。
元町に隣接する本町には、江戸時代に縮仲買業で財を成した西脇邸の邸宅があります。
映画では、継之助の妻・おすが役の松たか子さんや旅籠屋の娘・むつ役の芳根京子さんらのシーンが撮影されました。
西脇邸は、雪どけとともに庭園を公開しています。園内には県内の地酒を販売する売店もあるので、美しい庭園の中で地酒を味わいながら、映画のシーンや、自分なりの継之助の人間像を思い描いてみるのもいいですね。
小千谷駅近くの酒スポットへ
2022年3月25日には蔵元直売所ゆきみず庵がオープンしました。直売所限定品を含む高の井酒造の商品を購入できるとともに、有料試飲も楽しめます。
酒蔵に転職したのは「地元に恩返しがしたかったから」と木村さん。丁寧な酒造りを若い蔵人たちにも徹底指導し、皆で透明感のあるきれいな味わいを追求しています。
「越淡麗ならではの、きれいでふくよかな味わいが楽しめます」と木村さん。
全国で初めて取り組んだ雪中貯蔵によって仕上げた限定販売の「越の初梅 雪中貯蔵酒」や、代表銘柄「たかの井」などを飲み比べてみましょう。
高の井酒造
小千谷市東栄3-7-67
TEL.0258-83-3450
<蔵元直売所>
TEL.0258-86-6090
営業時間/10:00-16:00
定休日/日曜・祝日
酒蔵見学/可能(要予約、有料、詳細はサイト参照)
通常のお酒はヤブタという機械で搾りますが、出品酒は「艘(ふね)」と呼ばれる四角いタンクに、もろみを入れた袋を積み重ね、重みで垂れてきたお酒を集めます。
出品酒は酒蔵の技術や意識を高めることにもつながっています。
新潟銘醸には地元の晩酌酒として愛される「長者盛」と、首都圏での販売展開に力を入れる「越の寒中梅」の2本柱があります。
星野さんは定番の「長者盛」を大切にしながら、「越の寒中梅」では新たな層に向けた商品に挑戦しています。
新潟銘醸
小千谷市東栄1-8-39
TEL.0258-83-2025
酒蔵見学/不可(商品購入のみ可)
高の井酒造と新潟銘醸の純米酒(300ml瓶)をオリジナルラベルでセット販売。小千谷土産にはぴったりですね。
高留商店
小千谷市東栄1-3-23
TEL.0258-82-2635
営業時間/9:00-18:00
定休日/不定休
さらに小千谷の2つの酒蔵の地酒、杜氏を多数輩出している杜氏の郷としての小千谷、そして伝統の小千谷縮の魅力を語ってくれました。
「小千谷の人たちが楽しみながら、地元の酒や食の豊かさを知って、発信してほしいですね」。樋口さんがさらりと着こなす小千谷縮。その風合いの素晴らしさが、旅のすてきな思い出になりました。
日本酒ルネッサンス倶楽部 ODIYA SAKE40
問い合わせTEL.0258-83-2121(樋口織工藝社)
写真協力:小千谷観光協会、高の井酒造、新潟銘醸
河井継之助と酒を訪ねる旅 立ち寄りスポット
地域で親しまれている隠れたスポットや住民ならではの贅沢な時間の過ごし方があります。
初めて訪れた方でもバスや電車でふらりと行けるプチ旅行や時間の過ごし方をレポートします。