寺町を拠点に、新発田の魅力を広く発信していきたい/新発田市


2023年04月19日 6105ビュー
新発田市の寺町通りにある「寺町びより」では、毎月第2日曜に「びよりマルシェ」が開かれ、多くの人々でにぎわいます。その運営をする伊藤正仁さんは、自他ともに認める「お寺大好き人間」! 朝起きるとまず坐禅を組み、仏壇にお参りし、週末には寺巡りを楽しむといいます。そんな伊藤さんがこよなく愛するお寺と新発田の魅力を伺います。
伊藤 正仁
1962年、新発田市生まれ。高校卒業後、立命館大学へ進学。京都で4年間を過ごした後、地元へ戻り、新発田市役所に勤務。産業企画室長として市内の文化財などを活かした地域活性化事業にたずさわる傍ら、2011年に「アサテラの会」、2016年には「新発田まち遺産の会」を有志とともに結成。2021年には市役所を早期退職して、「一般社団法人新発田まちなみネットワーク」を結成。さまざまなまちづくり団体が連携できる仕組みづくりを進める。

お寺はすごくステキなところ

―寺町に新しいスポットが誕生しました。

新発田市の寺町通りにある元釣り具屋だった空き店舗を借りて、事務所兼イベントスペースである「寺町びより」をつくりました。毎月第2日曜に開催する「びよりマルシェ」では、パンやコーヒー、焼き芋、手づくり雑貨などの販売を行っていますが、おかげ様で家族連れなど多くの方々が遊びに来てくれます。寺町が人々で賑わうようすを見られるのは、うれしいですね。

「びよりマルシェ」で賑わう「寺町びより」


お寺って、すごく魅力的なところだと思うんです。歴史があって、癒しの空間でもあって、もちろん仏教の拠点としての役割をもっている。そんなお寺のことをもっと知ってほしい、もっと気軽に訪れてほしい、という想いでスタートしました。お寺を拠点とした町おこしができたらと考えて活動しています。
「寺町びより」で地域おこし協力隊のメンバーとイベントの打ち合わせを行う伊藤さん
―お寺好きは、学生時代を京都で過ごされたからでしょうか?

いえいえ、せっかく京都の大学へ進学したのに、学生時代はお寺になんかまったく興味がなくて(笑)。お寺を訪れることも、その歴史を学ぶこともせず、今となれば、なんてもったいないことをしたのかと思いますね。

意外に思われるかもしれませんが、寺院に興味を抱いた最初のきっかけは、新婚旅行で訪れたイタリアでした。ローマの大聖堂などの建築物がすばらしく、言葉にならないくらい感動しました。その後、何年かたって京都を旅したときに、「ああ、日本のお寺もすばらしいんだなあ」と。それ以来、暇を見つけては京都へ出かけ、寺巡りを楽しむようになったんです。


―新発田にも多くのお寺がありますね。

新発田市には100ヵ寺以上もの寺があります。ただ、私自身、ずっとその魅力に気づかずにいたんですが、ある日、地元のお寺を訪れたときに、「新発田のお寺も京都に負けないくらいすごいぞ!」と。まさに目からうろこ。足元の原石にようやく気がついたわけです。

その魅力を多くの人に知ってほしくて、2011年に「アサテラの会」という会を立ち上げました。これは、毎月1回、早朝に市内のお寺を訪れて、お勤めに参加し、朝がゆをいただくという会です。訪れるお寺は宗派を問いませんし、誰でも気軽に参加いただくことができます。コロナウイルスの影響で今は朝がゆの提供はしていませんが、毎回20~30人の方が参加してくれています。朝のお寺で過ごすひとときは、とてもすがすがしく、良い一日の始まりを迎えられますよ。

「以前は、みんなでおいしく楽しく朝がゆをいただいていました。早く元に戻りたいものです」と伊藤さん

アサテラでは、住職のお話を聞くほか、ミニコンサートや坐禅なども
―寺町を舞台にさまざまなイベントも開催されています。

「アサテラの会」の活動を通じて、多くの寺好きな仲間や住職たちとの交流が生まれ、そこから「しばた寺びらき」といったイベントの開催へとつながっていきました。
寺町界隈においしいモノやすてきなモノが集まる「しばた寺びらき」。多くの人で賑わいます

「しばた寺びらき」は、寺町を中心とした市内のお寺や神社を会場に、雑貨や古道具、飲食などの店が出店するほか、ヨガや坐禅、写経なども体験できるイベントで、市内だけでなく市外からも多くの方々が訪れてくれるようになりました。私もスタッフのひとりとして参加しています。
和服姿の人の姿も見受けられ、見慣れた街並みもいつもと違った風景に

―「しばたひなびらき」もステキなイベントですね。

ありがとうございます。「しばたひなびらき」は、昨年スタートしたばかりですが、市内の寺や神社、飲食店などでひな人形を展示して、皆さんに楽しんでいただこうと企画したものです。

最近では、住宅事情の変化などでひな人形を飾る機会も少なくなってしまいました。家庭で眠っているひな人形を提供いただき、まちなかに飾り、おひなさまを楽しみながら早春の新発田のまちを散策していただけたらと思っています。
寺の荘厳な佇まいの中でみるひな人形はひときわ艶やかです

ひな人形には、一つひとつに家族の思い出などを綴ったメッセージを添えていただいています。どのひな人形にも家族のかけがえのない思い出が詰まっています。そんな家族の歴史も感じてもらえたら。家族を想う気持ちは、お寺のあり方にも通じるのではないでしょうか。

そして、寺や神社などの建物は、ひな人形とよく似合うんですよ。その風情ある雰囲気を感じていただき、文化や歴史を見直すきっかけとなってくれたらうれしいですね。
市内の和洋菓子店では、ひなびらきに合わせ期間限定スイーツも提供。

―趣味で茶道もたしなまれるとか。

2011年に、市内本町の故近藤 睦先生の社中「清閑会」に入会させていただきました。流派は、石州流怡渓会(せきしゅうりゅういけいかい)になります。当時、観光振興課で働いていたんですが、茶道体験の催しを担当した際に、茶道が日本文化の粋を集めたすばらしいものであることを知って感動。作法だけでも身につけたいと思い、妻と二人で習うことにしました。


―休日はどんなふうに過ごされていますか?

近くのお寺を訪ねたりして、寺町で過ごすことが多いですね。以前は、京都旅行が何よりの楽しみだったんですが、わざわざ遠くまで出かけなくても、新発田も本当にすばらしいんですよ。

よく、「新発田にはなんにもない。だから観光客も来ないし、シャッター通りが増えるばかりだ」とか聞きますよね。とんでもない! 新発田にはなんでもあって、とても豊かな町なんです。自然は豊かで、歴史や文化もあり、美味しいものもたくさんあります。でも、残念ながら、地元の人たちがそのことに気づいていない。これでは宝の持ち腐れです。なぜ新発田の人はみずからの魅力に気が付かないのかと、ずっと悔しさを感じていました。
大好きな寺町に建つ宝光寺の山門前で笑顔をみせる

―そんな地元の魅力を活かすために、今後はどのような活動を?

2016年に、「新発田まち遺産の会」を有志とともに立ち上げました。城下町である新発田は、歴史的な建造物や風情のある景観も多いのですが、老朽化が進み、取り壊されていく建物も多い。美しい街並みが失われてしまう前に、なんとか保存・活用していきたいと活動しています。

そして、2021年3月、定年まで2年を残して市役所を早期退職しました。まちおこしの活動にもっと積極的に関わりたいと思ったとき、2年後に果たしてそのパワーが残っているだろうかと考えると、「今しかない!」と。退職後に、「一般社団法人新発田まちなみネットワーク」を結成し、さまざまなまちづくり団体が連携できる仕組みづくりを進めています。

実は、新発田にはたくさんのまちづくり団体があるのですが、それぞれが個別に活動しているだけで連携がないために、なかなか大きな動きに結びつかないのが現状です。それらがお互いに連携し、協力し合うことで、新発田はもっともっと発展できるのではないかと考えて、その仕組みづくりに着手しました。

今後は、新発田市だけではなく、阿賀北エリア全域で協力し合っていけたらいいですよね。それぞれの地域で頑張っている人たちと手をつなぎ、阿賀北全体の魅力発信にも取り組んでいけたらと考えています。
伊藤さんがよく訪れるという「TAICOや」の「赤穂牡蠣のスパゲティ」1.100円(季節限定)

寺町びより(新発田まちなみネットワーク事務局)

新発田市諏訪町2-3-27
0254-37-3959
イベント開催時のみ営業
※毎月第2日曜「びよりマルシェ」開催

TAICOや

新発田市中央町1-2-1
0254-26-6269
11:00~17:00
定休日/日曜、祝日

この記事を書いた人
新発田地域振興局 魅力見つけ隊

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