阿賀野の人と産業を、外の世界とつなぐ架け橋になりたい/阿賀野市


2023年04月22日 3063ビュー
2022年8月にグランドオープンした「道の駅あがの」。広い店内を忙しく走り回る一人の女性に出会いました。道の駅あがのの駅長、坂井文さんです。聞けば、この仕事に就くまでに数々の職を経験したユニークな経歴の持ち主。興味を持ったら走り出さずにはいられない、そんな坂井さんの人柄と、坂井さんが愛してやまない阿賀野市の魅力に迫ります。
坂井 文
1987年、阿賀野市(旧水原町)生まれ。アパレル販売、製造、飲食店などさまざまな仕事を経験。23歳で結婚し、子育てをするうちに食に興味を持つようになり、農産物直売所や生協で働く。道の駅あがの新設の話を耳にし、駅長に応募。全国から集まった30人近くの候補者の中から見事選ばれ、駅長に就任。地域の6次産業化を支援する「新潟県地域プランナー」の肩書きも持つ。

かつての夢は演歌歌手。「道の駅あがの」の駅長になるまで

―今、平日の朝9時半です。すでに多くのお客様でにぎわっています。

ありがたいですね。お客様に喜んでいただけるように、もっといい道の駅にしたいです。オープンから約半年、まだまだこれからです。
開放感のある店内にこだわりの農産物や食品が並ぶ

―坂井さんが駅長になるまでの経緯を教えていただけますか?

長くなりますけどいいですか(笑)。私は生まれてからほとんど阿賀野市を出たことがなくて、ずっと地元で暮らしながらいろいろな仕事をしてきました。アパレル販売、製造、自分で物を仕入れてネットで販売したり、コンビニで働いたり、パチンコ屋さんってどんな業界だろう?と思って飛び込んだり。興味が湧くとやってみたくなるんです。それが悩みでもあり、周りから「安定しないね」とも言われてきました。


―確かにちょっとめずらしい働き方ですね。

もともとは氷川きよしさんに憧れて、演歌歌手になりたかったんです。コンビニでバイトをしながらボイストレーニングに通って、休日はホテルで歌わせてもらったりしました。16歳から22歳くらいまでは演歌歌手が一番の夢でしたね。


―それは驚きました。その後はどうしたんですか?

23歳で結婚して24歳で長男を出産しました。離乳食がきっかけで食に興味が湧いて、農産物直売所にパートで入りました。それから生協のパルシステム新潟ときめきに転職します。生協は、農家や生産者を大事にする組織。協同組合という考え方にもすごく興味を惹かれました。飛び込み営業で1軒1軒お宅を訪問するのですが、それが本当に楽しくて。消費者が何を求めているのか学ばせてもらい、素晴らしい農家さんや製造業者さんとつながるきっかけにもなりました。その後、阿賀野市のNPO法人食農ネットささかみに入り、農家と消費者の方をつなぐ活動や、地域資源を活用した商品開発に取り組みました。そんな時、道の駅あがのの駅長公募の話を聞いたんです。

―ようやく道の駅の話が(笑)。

そうですね(笑)。全国から30人近くの応募があったと聞いています。書類選考後にプレゼンテーションと面接があったのですが、プレゼンは緊張でガタガタ震えちゃって…。ダメかなと思いましたが、ありがたいことに駅長に任命していただきました。その時は阿賀野市の皆様の器の大きさを感じましたね。
生まれも育ちも阿賀野市。生粋の地元っ子の坂井さん

―駅長としてはどんなお仕事を?

館内全体の統括や新メニューの開発です。道の駅あがのとは別に「株式会社あがの」という地域商社の機能もあり、地域のいい商品を集めて販売したり、地域事業との連携商品開発、株式会社あがのの自社商品開発をしたりしています。どれも私がやりたいと言ったことなので、全てに関わりたい。欲張り過ぎて目が回りそうな忙しさです(笑)。
地元の恵みを生かして開発したオリジナル商品。ささかみのトマトソース648円、あがの醤油せんべい324円など。オンラインショップでも購入可能。

めざすのは、地域に愛される道の駅

―道の駅あがのを作る上で最もこだわったのはどんなことですか?

「食べることは生きること」をスローガンに掲げています。そのために地域の一次産業に光を当て、農家の所得を上げることを応援させていただいています。稲作農業だけでなく新しく園芸品目に挑戦する農家さんの応援もさせていただいています。隠れた地域資源を生かした商品づくりにも力を入れたいです。
「食べることは生きること」のスローガンが店内のイラストで表現されている

―生協ともタッグを組んでいると聞きました。

実は全国でも初めての例なんです。生協の強みは、物流や産地とのつながり。それを生かして株式会社あがのとの協同事業として、阿賀野地域と一緒にやらせていただいています。例えばバナナひとつにしても、道の駅として「ここにしかないおいしいバナナ」にこだわり、めずらしいタイ産の無農薬無化学肥料のバナナをパルシステムの協力で仕入れています。併設するパルシステムの店舗は、組合員様限定ですがお買い物ができ、注文した品物を自宅配送ではなく道の駅でピックアップすることもできます。今後は配食事業や買い物難民の方への支援など、阿賀野市と一緒にいろいろな取り組みをしていく予定です。


―道の駅は観光施設のイメージがありますが、道の駅あがのは地元に目線が向いているんですね。

観光客も大事だけれど、地元に愛されないと続けていけないと思っています。理解を得るのは簡単ではありませんが、地道に取り組んでいるところです。


―どんなところに難しさを感じていますか?

地域柄なのか、地元以外の人や、新しいものをなかなか受け入れない風潮を感じます。ある程度取り入れるのですが、うまく回り始めると「あとは自分たちでやれるから」と。でも、中の人だけで完結するのはもったいないと思うんです。常に外の客観的な考え方が入ることで、良い空気が循環すると考えています。いろいろな人達との出会いを大切にしながら、息の長いお付き合いをしていきたいですね。
大好きな阿賀野をもっと良くしたいという思いがあふれる

心と体を元気にしてくれる阿賀野のお気に入りスポット

―ところで、坂井さんの阿賀野市のお気に入りスポットはどこですか?

一つは旦飯野(あさいいの)神社。ふと「呼ばれた」と感じる時があって、出勤前に行ったりします。朝の澄んだ空気の中、人のいない神社は神聖さを感じます。本殿に向かう長い階段の途中で振り返ると、阿賀野市を一望できるんです。心が洗われて、「また頑張ろう」と思わせてくれる景色が大好きです。
阿賀野市随一のパワースポット、旦飯野神社

あとは有機農業をしている夢の谷ファームさん。生協で働いている時に知り合って、田植えや稲刈りのお手伝いに参加させてもらいました。大きく深呼吸をして、きれいな空気を体いっぱいに吸い込むと、パワーをもらえるんです。一般の人も見学や商品の購入ができます。事前に電話するとスムーズですよ。
夢の谷ファームの石塚美津夫さんは、笹神地域で最初に有機農業を始めた第一人者

―休日はどんなふうに過ごしていますか?

子どもと遊びに行ったり、県外に出かけたりして外の文化に触れるようにしています。「仕事に生かせそうな何かいいものないかな」って。仕事の頭って、結局なくならないんですよね。あと最近行けていないのですが、地元のレストラン「ポンパドール」さんは子どもの頃から大好きなお店です。
坂井さんが「行くと必ず食べる」というハンバーグステーキ。ハンバーグは250gとボリューム満点。サラダが付いて1,540円。
居心地の良いレトロな店内

―今後はどんなふうに活動していきたいですか?

さまざまな資源の値上げが続く世の中ですが、個人の暮らしが少しでも良くなればと思います。経済的なこともそうですが、自然や生活環境などあらゆる面で「あの時よりも良くなったね」と言い合えるような地域の暮らしと、心豊かな未来を目指して活動していきたいです。

道の駅あがの

阿賀野市窪川原553-2
0250-25-7011
9:00〜18:00
元日休み 不定休あり

旦飯野神社

阿賀野市宮下968
0250-62-4755

夢の谷ファーム

阿賀野市沢口57
080-7040-5406

ポンパドール

阿賀野市中島町1-4
0250-62-6905
10:00~15:00(L.O.14:30)*ランチは11:00から
17:00〜20:30(L.O.20:00)
毎週月・火曜休み *祭日の場合も休み

この記事を書いた人
新発田地域振興局 魅力見つけ隊

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