かやぶき民家の残る荻ノ島のカフェ「陽の楽家」でランチ。「豪雪シフォン」を楽しく味わう/柏崎市


2024年08月27日 516ビュー
かやぶき屋根の家がある風景は、本当に珍しくなりました。全く無いわけではありませんが、集落の中に一軒だけ発見できるのがやっとで、何軒もとなると、南魚沼の付近であるのかしらと思っていました。

柏崎市高柳の「荻ノ島(おぎのしま)」集落

調べてみると、上越線六日町駅から約40キロ(車で約1時間)、もしくは越後湯沢駅から約50キロ(車で約1時間10分)に「荻ノ島かやぶきの里」がありました。写真を見ると、かやぶき屋根の家が何軒かあるようなので、早速、行ってみました。
荻ノ島集落に入ると、すぐに駐車場があり、そこに立て看板がありました。左の立て看板が「荻ノ島環状かやぶき集落」地図。環状道路は一周800メートルとあります。「荻ノ島ふるさと村組合」のパンフレットによると、約30世帯が暮らしているそうです。
田んぼを囲んで環状に民家が建ち並びます。すべてがかやぶき屋根というわけではなく数軒です。集落には宿泊施設「荻の家(おぎのや)」「島の家(しまのや)」と、交流施設「陽の楽家(ひかりのらくや)」があります。
駐車場から田んぼ越しに見えた風景。古き良き日本の美しい風景だなあと、しみじみ思いました。
宿泊施設2軒と交流施設1軒(現在はカフェを営業)、合計3軒は建ち並んでいます。環状道路を周って駐車場の反対側から3軒を見ると、こちらも美しい風景でした。集落の方々が生活している空間ですので、往来には皆さまもお気をつけくださいませ。

交流施設「陽の楽家(ひかりのらくや)」

2000年に隈研吾建築都市設計事務所と、地元の永井工務店によって建てられました。
写真右側の建物が「陽の楽家」で、左側2軒が宿泊施設です。

隈研吾建築都市設計事務所による、モダンなかやぶき屋根の家

伝統的な藁葺き屋根を再生し、その下に和紙でくるまれた「光る箱」を配置して、「陽」(ひかり)を発する楽しい家と命名した。(隈研吾建築都市設計事務所ホームページより抜粋)
地元の和紙職人、小林康生さんの和紙を全面的に用い、開口部にはガラス、アルミサッシュのかわりに、二重張り(太鼓張り)にした和紙を用い、床、壁等の内部の建築エレメントもすべて和紙貼りとしてある。(隈研吾建築都市設計事務所ホームページより抜粋)
19世紀以前の日本の住宅は、ガラスもアルミも用いず、植物と土だけで作られていた。もう一度人間と建築との幸福な関係を取り戻し、ヒューマンでやわらかい都市を取り戻すために、このプロジェクトでは工業素材を使わない建築の可能性に挑戦した。(隈研吾建築都市設計事務所ホームページより抜粋)

昔の民家は陽が入らず暗かった

昔の家は壁面が多く、窓が少なくて暗かったです。私の祖母は生前、「陽が入ったら畳が焼けるスケ」と言って、ただでさえ窓がなくて暗い座敷の障子戸をぴっちり閉めていました。

「陽の楽家」の中に入って、まず「うわあ、明るい」と驚きました。あと、和紙貼りのぬくもりに昔の民家との違いを感じ、「これが、あの有名な隈研吾さんの設計事務所がデザインした新しさか!」と驚きました。

「陽の楽家」と旧佐藤家住宅の天井を比較

こちらが「陽の楽家」の天井です。天井裏は無いので、明るいまま、よく見えます。
一方、1738年に建築された旧佐藤家住宅の天井裏。ライトをつけないと真っ暗でした。

窓際の席に座ってランチを注文

細い障子の間から、田んぼの緑が美しく見えました。
この日のランチセットは、1,100円(税込)。水出しアイスコーヒー、500円(税込)。
合い挽き肉とゼンマイ・ほうれん草のキッシュ、焼き人参のレモンマリネ、高柳野菜のサラダ、自家製の柿酢ドレッシング。
新じゃがの冷製スープ。お皿やカップなどの器は、柏崎市安田にある「明城焼 恒炎窯(みょうじょうやき こうえんがま)」の物で、地元の土を使っているのだそうです。
ガラス小物は、柏崎市上田尻にあるガラス工房「クラフト・ユー」の物。

デザートに「豪雪シフォン」!

(メニューは2024年7月時点)
さて、ランチを美味しくいただいた後は、デザートを注文します。
荻ノ島の冬景色をイメージしたデザート「豪雪シフォン」700円(税込)。プレーンとココア2種類の米粉シフォンの盛り合わせ。家の中には、いろり火をイメージした甘酸っぱいジャムが入っています。
まずは粉砂糖の粉雪を降らせます。荻ノ島のかやぶき屋根には12月上旬頃から、雪が積もり始めるそうです。粉雪では、まだほんのり雪化粧。それほど気温は下がらずに積もることはありません。
スプーンは、スコップの形になってます。こちらのスコップスプーンとフォークは、燕市の「NAGAO(ナガオ)」の物。
気温が一段と下がってゆくと、どかんと雪が降ってきた!
雪が積もれば逃れられないのが「雪掘り」。スコップのスプーンとフォークで雪掘りだ!プラス100円(税込)で「ドカ雪」も注文でき、クリームが山盛りになるそうです。
生クリームの雪がたっぷりの屋根は「雪下ろし」しないと、家が崩れてしまいそう。楽しく、美味しくいただきました。
 
カフェを営業する橋本和明さんは「かやぶき屋根の家、というのは荻ノ島のアイデンティティで、建物としての魅力をアピールしたいと考えたメニュー。写真や動画を撮りながら、楽しんで召し上がってもらえたら。」と話していました。
陽の楽家

陽の楽家

【住所】新潟県柏崎市高柳町荻ノ島1067
【営業日】土・日曜、祝日(冬季休業あり)
【営業時間】11:00~16:30(ラストオーダー16:00)

かやぶき屋根の民家は、この先…

かやぶき屋根は、修繕が大変で費用もかなりかかるそうです。職人が減っているので、今後は、もっと維持するのが難しくなっていくことでしょう。

先日、93才の小林守雄さんが「昔は草だって勝手に刈ったら“草泥棒”と言われた。かやぶき屋根に使うカヤだって、村に“カヤ場”て場所があって、村んショは年毎に交代で刈っていた。今は誰もカヤなんて採らねえんガ、荒れ放題ダコテ。」と話していました。

どんどん変化していく、私たちの生活。いずれ、古くからのかやぶき屋根の民家もなくなるかもしれません。そうなっても、新しいスタイルで継承していくのは明るい希望であるように、荻ノ島を訪れて思いました。

カフェという、誰もが立ち寄れる施設として利用されることも素晴らしいと思います。皆さまもぜひ、荻ノ島へご来訪ください。

陽の楽家

この記事を書いた人
シバゴー

南魚沼市在住。趣味は写真撮影と読書で、本で調べた所へ行って写真を撮ることをライフワークとしています。神社彫刻が好きで、幕末の彫刻家・石川雲蝶と小林源太郎、「雲蝶のストーカー」を公言する中島すい子さんのファン。地域の郷土史研究家・細矢菊治さんや、地元を撮影した写真家・中俣正義さん、高橋藤雄さんのファンでもあります。