大地の芸術祭2024を楽しもう!【見どころ解説編】/十日町市・津南町


2024年07月06日 8636ビュー
今回で9回目を迎える「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」。前回はコロナ禍の影響で1年遅れの2022年に行われたため、2年ぶりの開催となります。7月13日の開幕に向けて、まずは見どころや基本情報をお届けします。総合ディレクターの北川フラムさんと広報担当の大平友紀子さんにお話を伺いました。

今回のテーマは「五感体験」

大地の芸術祭は、越後妻有地域の旧6市町村(十日町、川西、中里、松代、松之山、津南)に300点以上点在するアート作品を巡って楽しむお祭り。今回は「五感体験」がテーマで、85点の新規・新展開作品があります。「閉校になった学校の校舎、県境に近い山奥の里、川のほとり、田んぼの横など、あらゆる場所に作品があります。そこに行くまでの道中で草いきれの香りがしたり、柔らかい大地を踏み締めたり、地元の人たちと挨拶や会話を交わしたりする。芸術祭では作品そのものと同じくらいに、それを取り巻く環境も、鑑賞者に与える影響が大きい。まさに『五感』を全開にして楽しむお祭りなんです」と北川フラムさんは解説します。

作品鑑賞パスポートと公式ガイドブックをゲット

芸術祭を巡るのに欠かせないのが、会期中(2024年7月13日から11月10日)に有料公開作品を1回鑑賞できる「作品鑑賞パスポート」です。越後妻有里山現代美術館MonET、うぶすなの家、まつだい「農舞台」など、7施設はパスポートの提示で2回まで入館できるほか、Tunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)、JIKU #013 HOKUHOKU-LINE(北越急行)、「森の学校」キョロロの各施設や有料イベントは、パスポート提示で鑑賞料金が割引になります。
大地の芸術祭の広報担当で、FC越後妻有の選手でもある大平友紀子さんは「エリア内の一部の飲食店や施設でパスポートを提示すると割引が受けられるなど、鑑賞料金以外にもお得な特典があります。開幕前は1,000円安く購入できるので、お買い求めの予定のある方はお早めにどうぞ」とおすすめします。ところで芸術祭巡りで何か気を付けたほうが良いことってありますか?「ぜひ歩きやすい靴で!田んぼ、山道など未舗装の場所は当日天気が良くても、前日に雨が降っているとぬかるんでいることもあるので、それを考慮して服や靴を選んだほうがいいと思います」とアドバイスをもらいました。

作品鑑賞パスポート

前売(6/10〜7/12)一般3,500円、小中高1,000円
会期中(7/13〜11/10)一般4,500円、小中高2,000円
※個別鑑賞券は各施設で販売。料金は施設の鑑賞料金に準じる
※小学生未満は無料
(料金は全て税込)

そして芸術祭のお供といえば「公式ガイドブック」(1,200円)です。公開作品の解説、場所や料金などの基本情報はもちろん、エリアごとの案内所、芸術祭会場やその周辺のカフェやレストランなどの飲食店まで、さまざまな情報が網羅されている一冊です。
私は芸術祭終了後も大切に保管しているのですが、過去のガイドブックを開くと、アート巡りをしたときの思い出が蘇ってきますよ。
作品を巡る方法のひとつに「オフィシャルツアー」があります。
ガイド&ランチ付きの1日コースは、話題の新作と主要施設を巡る芸術祭の全般が分かるダイジェストの「エチゴツマリコース」(越後湯沢駅発着)など3コースを用意。
ガイドが付かない半日コースはいずれも発着はまつだい駅でお昼の12時に出発。土曜日は松之山エリアの新作・旧作を巡る「松之山コース」、日曜日は松代エリアの新作・旧作を巡る「松代コース」を運行しています。ほかに、イベントや限定公開に合わせて開催する「テーマ型コース」も運行。いずれも詳細は公式サイトでご確認ください。

オフィシャルツアー

■1日コース
前売(7/12まで):一般12,000円/小中高10,000円/幼児3,000円/3歳未満無料
会期中:一般13,000円/小中高11,000円/幼児3,000円/3歳未満無料
締切:催行日前日の午後6時まで(エチゴツマリコースのみ催行日当日午前8時30分まで)、または定員になり次第
定員:25名(エチゴツマリコースのみ40名)※最少催行人数1名
発着:越後湯沢駅東口(十日町・川西コースのみ十日町駅西口)
※作品鑑賞パスポートが必要

■半日コース
前売(7/12まで):5,000円
会期中:6,000円
締切:催行日の午前11時まで、または定員になり次第
定員:20名※最少催行人員1名
発着:まつだい駅
※作品鑑賞パスポートまたは個別鑑賞券が必要

MonETの隣、クロステン十日町の前から「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」へは市営バス吉田線で行くことができるのですが、そのバスがなんと絵本と木の実の美術館の作家、田島征三さんのラッピングバスなのです。
2024年の春から走り始めたばかりのこのバスの絵柄は、田島さんの絵本『はたけうた』のものが使われました。運行は月曜から金曜まで1日片道10便/5往復。料金は1回の乗車につき200円(中学生以下無料)です。

旧津南小学校大赤沢分校

「アケヤマ –秋山郷立大赤沢小学校–」[監修]深澤孝史[会場構成]一般社団法人コロガロウ佐藤研吾(イメージ画像)

今回、津南エリアには北川フラムさん曰く「日本の最深部、秋山郷」に新しい作品「アケヤマ -秋山郷立大赤沢小学校-」が登場します。タイトルになったアケヤマは、秋山の語源となった言葉だそうです。2021年に廃校になった地元小学校に複数の作家が入り、地域の歴史や地元の民俗などをひもとく作品を展開する予定になっています。
「山の肚」永沢碧衣(イメージ画像)

津南の大割野商店街

「大割野おみくじ堂」佐藤悠(イメージ画像)

津南エリアでは街なかのメインストリート、大割野商店街でもいくつか新作を展開。昨年まで大口百貨店として営業していた店舗が「大割野おみくじ堂」や、「おりがみ:みんなで作る津南の森」などタイトルを聞いているだけでもワクワクするアート作品の舞台になります。
「おりがみ:みんなで作る津南の森」布施知子

奴奈川キャンパス

「惑星トラリス in 奴奈川キャンパス」松本秋則+松本倫子(写真:「惑星トラリス」BankART KAIKO 2023)

松代エリアにある「奴奈川キャンパス」は、2014年3月に閉校した奴奈川小学校を、食・生活・遊び・踊りを実践的に学ぶ場として生まれ変わらせたものです。北川フラムさんは奴奈川キャンパスを著書『越後妻有里山美術紀行』で副教科の五感体験施設と記しています。「僕は主要五科目が嫌いな子どもだった。好きなのは音楽、美術、技術家庭、体育の副教科。それを総合的に体感できるのが、大地の芸術祭の面白さ」と話します。今回は名作映画「惑星ソラリス」に着想を得た「惑星トラリス in 奴奈川キャンパス」や、奴奈川キャンパスの校長先生である鞍掛純一さんの新作「木湯」など、五感を刺激されそうな新品が展示されます。
「木湯」鞍掛純一+日本大学藝術学部彫刻コース有志(イメージ画像)

越後妻有里山現代美術館 MonET

「阿弥陀渡り」原倫太郎+原游(イメージ画像)

十日町エリアの主要施設のひとつ「越後妻有里山現代美術館 MonET(モネ)」。これはMuseum on Echigo-Tsumariの頭文字から名付けたもの。多くの作品がいつでも訪れる人たちを迎えてくれます。もちろん今回も新作が複数登場しますよ。
1階の中央には、世界的作家レアンドロ・エルリッヒの大胆な構図の作品が描かれた池がありますが、ここが「モネ船長と87日間の四角い冒険」として、あみだくじのように水上を歩ける「阿弥陀渡り」や、パターゴルフが出来る場所になるのだとか。さらに「明石の湯」館内でも作品が展開されるそうです。

世界とつながる

ニキータ・カダン個展「影・旗・衛星・通路」

北川フラムさんは「足はしっかりと大地に、目は遠く世界に」という思いを持ち、大地の芸術祭に取り組んで来られました。「狭い地域の中でクローズするのではなく、可能な限り世界と繋がっていかないといけない」と話します。そのため「多くの海外の作家に声を掛け、越後妻有にお呼びするようにしてきた」そうです。
2024年は、開幕前日の7月12日から21日までの10日間、越後妻有里山現代美術館 MonETにて「ウクライナウィーク」を開催。ウクライナの作家ニキータ・カダンを招き、カダンが選んだウクライナのアートフィルム3作品を上映。開幕日の13日には、シンポジウム「ウクライナの美術・文化の現在」を行います。また海外の食文化も楽しもうとMonET内の「サロンMonET」でウクライナ料理を提供予定です。さらに旧ソ連(現ウクライナ)出身で2023年に亡くなったイリヤ・カバコフのドローイング作品も展示されます。
「知られざるカバコフ–生きのびるためのアート」イリヤ・カバコフ

多彩なイベントも楽しみ

9/7(土)「大地の運動会」(photo by Nakamura Osamu)

9月7日には、陸上のオリンピック選手で大地の芸術祭オフィシャルサポーターを務める為末大さんを実行委員長に迎え、奴奈川キャンパスにて「大地の運動会」を開催。北川フラムさんは「地域の人たちも参加する学区型運動会は、実は世界中で日本だけで行われているもの。地域がひとつになれる素晴らしい行事」と話します。大地の運動会はその学区型運動会を、あらゆる垣根を越え「国籍・地域・世代・ジャンルを超えた人たち」が参加するイベントにするそうです。「運動会は体育だけじゃない。チーム看板の制作は美術、応援歌やダンスは音楽、お弁当は家庭科。いろんな楽しい学びを五感全開で感じられるイベントなんです」と北川さんは解説。「参加者はそれぞれ工夫して、いろんな仕掛けを用意していると思います。楽しみにしていてください」と笑顔を見せました。

大地の芸術祭の見どころ編、いかがでしたでしょうか。開幕したらエリアごとに、作家のコメントなどを交えながら作品を紹介していきたいと思います。

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024

期間:2024年7月13日〜11月10日
開催時間:10:00~17:00(10、11月は10:00~16:00)
定休日:火水曜日(8月13日、14日は一部作品・施設特別開館)
※作品により公開日時が異なる場合あり
パスポート料金:
前売(6/10〜7/12) 一般3,500円/小中高1,000円/小学生未満無料
会期中(7/13〜11/10) 一般4,500円/小中高2,000円/小学生未満無料
個別鑑賞券もあり、各施設で販売
越後妻有里山現代美術館 MonET 企画展(常設展示含む)一般1,500円/小中学生800円
鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館 個別鑑賞料金 一般800円/小中学生400円
奴奈川キャンパス 個別鑑賞料金 一般800円/小中学生400円
ほか

2024年は11月10日までの土日祝日、越後湯沢駅=清津峡=十日町駅を結ぶ実証運行バス「YukiMo!(ユキモ)」を運行しています。

大地の芸術祭2024見どころスポット

この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中