生活感の残る豪農の館「旧笹川家住宅」/新潟市


2021年01月28日 13044ビュー
北方文化博物館」として知られる旧伊藤邸をはじめ、魚沼の目黒邸、関川の渡辺邸、田上の椿寿荘など、新潟県には多くの「豪農の館」が存在します。

今回ご紹介する旧笹川家住宅もそのひとつ。
重要文化財に指定されている建築物です。

笹川家は14代300年以上にわたって味方(あじかた)に続いた名家で、江戸時代には味方組8ヵ村の合計8,000石を束ねる大庄屋として、年貢の取りまとめや警察、裁判の仕事をしていたそうです。


古い建物が大好きな新之助ですが、きれいな建物よりも「暮らしていた証」が垣間見えるような汚れや傷みの残る建物が好きなのです。
 
そういう意味では、この旧笹川家住宅はまさにどストライク。昭和45年まで暮らしていたということもあり、生々しい生活の跡が残っている豪農の館なのです。

 
文政21年に火災があって母屋は焼けて建て直されましたが、この表門は火災を免れたので建てられた天正のときのままなのだそうです。

 
雪の中に建つ姿も風情があります。

玄関は4つあって、藩主は一番左の「三の間」に続く玄関、家の者や使用人は一番右の土間に続く玄関という風に、お客や用途で入口が分かれていたようです。
見学者は一番右の入口から中に入ります。

 
歴史を重ねてきた土間や柱がお出迎え。
大広間」へ進む前に右側にある「下男部屋」を覗いてみます。
板敷きに筵(むしろ)が敷いてあって冬は寒そう。
格差を感じて切なくなりつつ「大広間」に進みます。

 
28畳もある「大広間」は庄屋の集まりなどに使われたそうです。
広間と「三の間」を仕切る板戸には約157cmもある杉の一枚板が使われているのだとか。

 
三の間」は村上藩主が来たときに休憩に使う部屋。
卍くずれ紋様」という「米」の字を図案化した模様が、襖や壁に使われています。

 

 
この模様の他にも、いたるところにお洒落な意匠がみられます。
釘を隠す金具にも装飾を施している凝りよう。

 
客間の近くには「上便所」というお客専用のトイレがあります。長い棒がついたふたを開けるともみ殻を敷き詰めた箱があって、1回使うごとに取替えていたのだとか。

 
その隣にはお客専用の「上湯殿」。
湯船はなくて、お湯で身体を洗うだけの場所だったようです。
床は真ん中が凹んだ作りになっていて、穴が排水口になっています。

 
渡り廊下にも見どころがあります。
警護に使った「六尺棒」という警棒。長さは約180cmあるそうです。

 
それから「龍吐水」という消防ポンプに使うホースのようなもの。

 
見事な箪笥階段もありました。
せまいスペースを生かすための日本人の知恵ですね。

 
いろいろな古道具を眺めながら歩いていると「囲炉裏の間」があります。
家族団らんを感じることができるアットホームなスペースでほっとしますね。

 
そこから天井を見上げると、雪国家屋独特の構造になっていました。

 
料理や配膳などの作業をする「仲の間」と「勝手場」。
左に食器棚があります。

 
床板をめくると床下収納になっていて、こんなところにも省スペースの知恵を感じますね。

 
仲の間」の端っこに「女中部屋」への階段があったので、登ってみました。
けっこう急勾配の階段です。

窓の少ない筵敷きの暗い部屋でした。
本当に寝るためだけに使っている場所だったんですね。

 
残念ながら、2階や仏間は耐震調査中で立ち入りできませんでした。

 
表に出てみると「米蔵」や「土蔵」が並んでいます。

 
中に入ってみると民俗資料館のようになっていて、古民具が展示されています。
消防ポンプ泥舟など珍しい道具の他、行灯(あんどん)や行火(あんか)、枕といった身近な生活用品も展示されていますが、どれも使用感があってなかなか生々しいんです。
枕なんか使っていた人の汗がしみ込んでいるよう。

 
旧笹川家住宅の魅力は、生活の跡がそのまま残っていることだと個人的に思っています。
見学する際には、そんなことを意識しながらあちこち細かくチェックしてみると、もっと楽しむことができますよ。

また最近はコスプレ撮影にも開放しているそうですので、撮影スポットを探している人は申込んでみてはいかがでしょうか。

 
隣には味方が生んだ偉人・曽我量深(そがりょうじん)と平澤興(ひらさわこう)の功績に触れることができる「曽我・平澤記念館」もありますので、そちらも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

旧笹川家住宅

新潟県新潟市南区味方216
tel.025-372-3006
営業時間/9:00−17:00(最終入館16:10)
休館日/月曜日(休日の場合は翌日)
    休日の翌日(土曜日が休日の場合は火曜日)
    12月28日〜翌年1月3日
入館料/大人(高校生以上)500円(団体400円)
    小人(小・中学生)300円(団体200円)
    ※小・中学生は土・日・祝日無料

この記事を書いた人
田中新之助(たなかしんのすけ)

新潟を愛する万年新米ライターです。持ち前の粘り強さで味わい深い記事を書いていきたいと思ってます。とくに観光ガイドには載っていないような、新潟の珍スポットや変スポットに力を入れて紹介していきたいです。

この記事を見ている人は、こんな記事も見ています