トビシマカンゾウの秘密を探れ!


2018年06月28日 16985ビュー
佐渡、大野亀といえばトビシマカンゾウで有名。
全国からトビシマカンゾウ目がけて、旅人やカメラマンが海を渡って佐渡・外海府海岸(そとかいふかいがん)を目指します。カンゾウを漢字で書くと萱草(かんぞう)。

ニッコウキスゲ(ゼンテイカ/禅庭花)も同じ仲間ですが、「日本一のトビシマカンゾウの群落が、なぜなぜ佐渡に」に迫ります。

万葉の昔には「忘れ草」と呼ばれた!!

萱草(かんぞう)は、中国の古書『文選』には「憂いを忘れさせる草」と記され、日本に伝わってこれが「忘れ草」というロマンチックな呼び名に。

「萱草(わすれぐさ)我が紐に付く香具山の古(ふ)りにし里を忘れむがため」は、万葉歌人・大伴旅人(おおとものたびと)が任地・大宰府(だざいふ/現・福岡県太宰府市)で詠んだ、故郷を偲ぶ歌。
というわけで、万葉の昔から日本全国に咲いていたと思われるカンゾウの仲間ですが、霧ヶ峰や尾瀬などで群落をなすのが、ニッコウキスゲ(ゼンテイカ)。
そして北海道に行けば、湿原を黄色のジュータンと化すエゾカンゾウもその仲間です。

飛島で固有種であることが判明したので、トビシマカンゾウに

トビシマカンゾウは、もともと山形県酒田沖の離島、飛島で発見されたのが最初のため、飛島萱草と呼ばれました。
飛島は昭和6年に牧野富太郎博士が島に渡るなど、植物研究の盛んな場所。 そうした土壌を背景に、発見され、鶴岡市出身の植物学者・佐藤正巳博士が命名したのです。

飛島と佐渡島の間には、粟島(新潟県岩船郡粟島浦村)もありますが、なぜか粟島にはトビシマカンゾウが生育しません。
外海府海岸を中心とする佐渡、そして飛島、酒田海岸(山形県)のみに生育する貴重なカンゾウなのです。
このトビシマカンゾウ、仲良く、酒田市の「市の花」、そして佐渡市の「市の花」(佐渡では八重咲きのカンゾウもあるためカンゾウとして登録)になっているのです。

飛島と佐渡の共通点といえば、寒冷系の植物と沖を流れる暖流の影響で比較的温暖なこと(とくに佐渡は島内で北海道・沖縄両地方特有の植物が同居する特異な場所といわれています)。

もともとの佐渡での呼び名は漁期を表す「ヨーラミ」

そんなトビシマカンゾウですが、飛島で最初に固有種として認定されたので、トビシマカンゾウというのが正式名。

では、佐渡ではなんと呼んでいたかといえば、「ヨーラミ」(ヨーラメ、ユーラミ、ヨラメとも)。
「ヨー」は魚のことで、「ラミ(ラメ)」は卵をはらむこと。

つまり、5月下旬〜6月上旬に見頃を迎えるトビシマカンゾウの開花期は、ちょうど魚の産卵期にあたるということになります。

「産卵時期に咲く花」(ヨーラミ)とは、いかにも魚の美味しい佐渡らしい呼び名です(トビシマカンゾウが咲く季節は、ちょうど魚が穫れる時期ということに!)。

外国ではどう呼ばれるのかといえば、カンゾウの仲間は1日しか咲かない1日花のため「Day-lily」(lily=ユリ)というそのものズバリの名前が付いています。

トビシマカンゾウの日本一の群落が佐渡・大野亀

かつては大野亀周辺に自生し70万株を数えたトビシマカンゾウですが、大野亀での佐渡牛の放牧が行なわれなくなり、雑草が茂って一時は30万株まで減少する危機に直面。
平成6年から、地元の区長会と海府観光協会が中心となり、トビシマカンゾウの保護増殖活動を積極的に推進しています。

鳥海山・飛島ジオパークに登録された飛島ではもっと事情は深刻で、平成25年版『山形県レッドデータブック』(植物編)で絶滅危惧種にランクされ、その後もさらに生育環境が年々悪化している・・・とのこと。

5月もゴールデンウィークを過ぎたなら、そろそろ佐渡行きの予約を!(トビシマカンゾウの開花時期は佐渡汽船も宿も混雑します。早めの予約をおすすめします)。

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