本屋のない町にあかりを灯す本との出会いの場「蔵と書」/出雲崎町


2022年04月01日 10985ビュー
皆さんの暮らす町に本屋さんはありますか?
インターネットを使えばクリックひとつで様々な書籍が届きますが、本屋さんでの思わぬ出会いや、装丁に触れる体験もそれに変え難い魅力だと思います。
店主さんの選書や棚の作り方も本屋さんに足を運ぶ醍醐味。
個人の本屋さんが少なくなりつつありますが、出雲崎町には蔵をつかった本と出会える場があります。名前は「蔵と書」。
蔵と書の店主、石坂優さんは大阪出身。地域おこし協力隊として出雲崎町に来ました。
この蔵と書も地域おこし協力隊の活動として「本屋のない町に本と出会える場を」と運営されています。
もともと本が大好きで、出雲崎に移り住む前は東京でブックディレクターとして勤務していた石坂さん。その場や建物、利用する人に合わせて本を選書し売り場や本棚をコーディネートする仕事にやりがいを感じ、本のある空間を自分自身でも作りたい・持ちたいと考えていました。ちょうどその頃、知人のSNSで出雲崎の関係人口を増やすための地域おこし協力隊の募集を目にします。
「本のある空間を出雲崎に作り、町と人とを繋げたい!」石坂さんのこの思いが形になったのが「蔵と書」です。
名前の通り、蔵をリノベーションした蔵と書。2階建の蔵は、もともと薬の倉庫として使われていたものだそう。主に1階が古本の販売と閲覧スペース、2階が展示と企画のスペースになっています。置いているのは、“どこか何かが、新潟・出雲崎に繋がる”をテーマに石坂さんが選書した書籍の数々。
こちらは中身も表紙も見えない状態で、本の中の一節とそれをイメージした写真のみで本を選ぶコーナー「ホント(本と)の出会い」。
2階には、自分の好きな本をメッセージ付きで寄附してもらう「もう一冊買ってでも誰かにおすすめしたい本」も並びます。
本が好きで、本に込められた作者や読者の思いを大切にしている石坂さんならではの、アイデアたっぷりの仕掛けで新たな本と出会うことができます。
古い建物ならではの、味のある急勾配の階段を登った2階は「蔵と書ー時間(くらとショータイム)」。
訪れた方や石坂さんが撮影した写真が並ぶ「蔵と写 みんな と ここ」。
(写真提供:蔵と書)

出雲崎町と関わりのある方から届く絵も飾られています。蔵と書の様々な場所を切り取って描かれた精密な水彩画の数々。石坂さんはこの絵を描いて送ってくれる方と文通されているそう。訪れた際には、地域の方が作られた干支の手芸作品も並んでいました。
出雲崎に暮らす方や蔵と書に関わる方が想いを込めてつくられたものに囲まれ、あたたかい気持ちになりました。
張り紙からもこの蔵が刻んできた年月を感じます。
もともとの蔵の味わいや、使ってきた方の息吹をそのまま残しているのも、蔵と書の特徴のひとつ。
サインボードとして使われているのは、古い箪笥の引き戸! 本を並べている什器として、もともと蔵に残されていた家具が使われていたり、地域の方から譲り受けた古い小物が並んでいたり。もともとこの場所で使われてきた物たちが、形を変えて活躍しています。
本の世界にひたれる、新たな本当の出会いの場、蔵と書。
本が大好き!という方はもちろん、普段はあまりたくさん読まないけれど、たまにはスマホを本に持ち替えて時間を過ごしたい、という方にも、ぜひ訪れてほしい場所でした。
蔵と書

蔵と書

所在地:新潟県三島郡出雲崎町尼瀬
(※既存の蔵を利用しているため、蔵のみの正確な住所は不明とのこと。お出かけの際は、天領の里 第4駐車場向かい、もしくはGoogleマップで「蔵と書」と検索し位置をご確認ください)
営業日時:月4回程度、不定期
(オープン日は蔵と書のinstagram(https://www.instagram.com/kura_tosho/)でご確認ください)

せっかく出雲崎町に足を伸ばしたので、もう少し散策を。
蔵と書の道路を挟んで向かいにあるのが、道の駅「越後出雲崎天領の里(天領出雲崎時代館)」  
天領の里は目の前が海!
取材に訪れたこの日は、平日ながらツーリングを楽しむ人のバイクがたくさん停まっていました。
美味しいと聞いた良寛コーヒーソフトクリームを海を見ながらいただきます。
道の駅「越後出雲崎天領の里(天領出雲崎時代館)」 

道の駅「越後出雲崎天領の里(天領出雲崎時代館)」 

住所:三島郡出雲崎町大字尼瀬6番地57
電話番号:0258-78-4000
営業時間:9時~17時(最終受付16時30分)
定休日:第1水曜日(5、8月無休)、年末年始
駐車場:普通車 134台
    大型車 バス7台

出雲崎といえば、有名なのは妻入りの街並みと良寛さん。
両方楽しめる場所を、と訪れたのは、良寛と夕日の丘公園。
高台にあるこちらの公園からは、日本海と浜辺のすぐそばに軒を連ねる妻入りの家々が見られます。
「にいがた景勝百選」でも一位に選ばれたという眺め。
良寛さんと子供たちの銅像もありました。
高台で海を眺めながらベンチに座り、蔵と書で出会った本を持ってきて読むのも気持ちよさそう。
新潟で好きなスポットが、また一つ増えました!
良寛と夕日の丘公園

良寛と夕日の丘公園

住所:新潟県三島郡出雲崎町大字米田1
駐車場:普通車:10台
    大型車:2台

今回訪れたのはこちら

この記事を書いた人
よはくや

新潟県の北の端、村上市の小さな宿「よはくや」のオーナーです。観光地からガイドブックに載らないふだんのまちの様子まで、地元ならではの視点でお届けします!