地元で愛されてきた日本酒と、新しい顧客を狙う日本酒。双方を大事に育ててきた「笹祝酒造」の酒蔵見学/新潟市


2022年03月16日 2334ビュー
一方には角田山や多宝山があり、一方には日本海が広がる、新潟市西蒲区。越後平野の一角にあるこの地域は、県内有数の米の産地でもあります。
 
そんな西蒲区で、「地元の人に愛される酒を」と明治時代から地酒をつくり続けてきた酒蔵があります。それが、旧北国街道沿いにある「笹祝酒造」。近年は、酒蔵で開催するイベントや他業種とのコラボなど、業界の常識を覆す仕掛けを続け、多方面から注目を集めています。

一体なぜそんなに活動しているのか。
その想いはどこからきているのか。
 
その実態を知るべく、笹祝酒造に伺ってきました。

地元で愛される日本酒を造り続けてきた「笹祝酒造」

▲新潟駅から弥彦方面に車を走らせていると、右手に大きく「笹祝」と書かれた看板がある
 
新潟駅から車で30分ちょっと。笹祝酒造は、上堰潟公園近くの国道2号線沿いにあります。
 
1899(明治32)年創業と歴史を持つ笹祝酒造は、主力商品である「笹祝 新潟印」を始め、地元の人に愛されるお酒を提供し続けてきました。一方で、最近は日本酒に親しみのない人でも飲みやすい日本酒や他事業者とのコラボ商品も多数開発。少しずつ日本酒に触れる層の裾野を広げる活動も行っています。
 
現在の蔵元は一度関東の業務用酒販店で働いた後、2015年に新潟に戻ってきた、6代目代表の笹口亮介さん。今回はそんな笹口さんに蔵内を案内していただきながら、笹祝酒造の魅力に迫っていきたいと思います。
 

誰でも550円で体験できる、酒蔵見学

赴きのある建物に洗練された暖簾が印象的な笹祝酒造。門戸をくぐると、笹祝酒造のキャラクター「笹パンダ君」がお出迎えしてくれます。
 
笹祝酒造では、事前予約さえすれば誰でも550円(税込)で酒蔵見学をすることが可能です。しかも、試飲付き&お土産のおちょこ付き! なんとも贅沢なプランです。
 
ということで、さっそく蔵を案内してもらうことにしました。

こだわり盛り沢山の酒蔵見学スタート!

最初に説明してもらったのは、精米工程について。笹祝酒造で使っている酒米はなんと全てが新潟市産! 亀の尾や越淡麗、五百万石、雪の精、越いぶきが多いそうですが、亀の尾は西蒲区産を使用するなど、できるだけ近隣の農家さんから仕入れるようにしているそうです。
洗米し、水分を吸わせた後は、蒸米の工程へと移ります。笹祝酒造では、昔ながらの醸造器具「窯(かま)」と「甑(こしき)」を使って米を蒸しているそう。
このように日本酒の造り方を教わりながら巡る、笹祝酒造の酒蔵見学。日本酒がどのような流れで造られているか、笹祝酒造のこだわりが随所に感じられる内容です。改めて美味しい日本酒を造ってくれる酒蔵にありがたさを感じる時間となりました。
そして、酒蔵見学を終えると、試飲タイム! 以前使っていた桶や蓋などを使ってつくられたカウンターでいただきます。最後は、お土産としておちょこをもらえるんですよ。旅の記念にもなるので嬉しいですね。

笹祝ならでは!オススメ日本酒をご紹介!

昔ながらの日本酒から、日本酒に親しみのない人に向けたものまで多種多様な日本酒を造る笹祝酒造。たくさんあるラインナップの中から、気になる日本酒をピックアップしてみました!
●毎日でも飲める定番酒「笹祝 新潟印」
地元の人にとって笹祝といったら、「笹祝 新潟印」。昔から晩酌酒として重宝されてきた、飲み飽きない辛口のお酒です。
 
近年は新しい日本酒が注目されることが多いですが、笹口さんは「地元の人に愛されてきたお酒は、蔵の中心として残していきたい」といいます。地元の人が笹祝のお酒を愛してくれるから、この地で日本酒を造り続けられる。地酒という基盤があるからこそ、笹祝は新しい日本酒にどんどん挑戦していけるのかもしれません。
 
●日曜日の日本酒!? 「サササンデー」
もう一つ挙げてくれたのは、透明な瓶にシンプルなデザインが印象的な「サササンデー」。昼間の「太陽(SUN)」が出ているうちでも、「日曜日(SUNDAY)」でも飲める、甘「酸(SAN)」っぱい味わいの日本酒です。酒米は西蒲区でそら野テラスを運営する農業法人「そら野ファーム」の「亀の尾」を使用。アルコール度数は12度とライトに飲めるので、日本酒初心者からも人気の銘柄です。
 
実はこのお酒、酒屋や飲食店、一般ユーザーの有志で話し合って酒を造る「笹祝challenge brew」で出たアイデアから造られたそうです。「笹祝challenge brew」とは、商品アイデアから酒造り、価格設定、ネーミング、ラベル製作まで、通常酒蔵が考える工程を一緒に考える場。日本酒を自分でコンセプトから考えて造る企画です。大好きな日本酒に企画から携われると考えたら、ワクワクしてしまいますね!

継ぐつもりがなかった家業。きっかけは飲んでくれた人の美味しそうな笑顔だった

こうした新しい取り組みの立役者が、現蔵元の笹口亮介さん。2015年に笹祝に戻ってくると、酒蔵見学、蔵の中でのイベント、他事業者とのコラボ商品など、次々と仕掛けを広げていきました。
 
そんな笹口さんですが、当初は家業を継ぐことは考えていなかったそう。高校卒業後は、都内の経済学部へと進みます。しかし、大学で東京へ出たことが笹口さんにとっての転機となり、数年後に家業に入ることになったのです。
 
「大学生のときに立ち飲み屋でアルバイトをしていたのですが、そこでお客さんが笹祝のお酒を美味しいと言って飲んでいて。『東京のど真ん中で働いている人がうちのお酒を美味しいと言ってくれている』と衝撃と嬉しさを感じて、実家を継ごうと考えるようになりました」
 

若手の蔵元が注目される時代になる。全国各地の蔵を巡って感じた業界の潮目

卒業後は飲食店向けの酒販卸会社に勤務。その間に全国の酒蔵を巡り、これからどんな日本酒が流行るのかを見て回りました。そこで感じたのは、日本酒業界は変革期であるということ。若手の酒蔵が増えることを実感したといいます。
 
「『これからは若手の蔵元が注目される時代になる』という代表の考えから、新しい取り組みをする蔵を多く見学させてもらいました。酒屋万流(さかやばんりゅう)と言われるように酒蔵はそれぞれ個性がある。見学するたびに笹祝に帰ったら何ができるかを考えていました」

笹祝酒造の立地、歴史だから出せる蔵の個性を

卸会社として全国の蔵を巡り、2015年に笹祝に入社。一年間蔵人として酒造りに勤しんだ後、笹口さんがまず取り組んだのは、蔵に人を入れることでした。
 
「当時、新潟市には一般の方が見学できる蔵が少なかったんです。まして笹祝があるのは、古くから往来が盛んだった北国街道沿いであり、人口80万都市の新潟市。酒蔵に人を呼ぶことができるのではないかと考えて、イベントや酒蔵見学を始めました」
 
その後も新しい取り組みを企画する笹口さん。飲み手を巻き込んだ酒造りや三条スパイス研究所とコラボした日本酒とスパイスのセット販売、笹祝酒造のグッズ作成など、次々と新たな企画、商品を出し続けていきました。
 
こうした取り組みがメディアにも多く取り上げられ、注目される一方で、地元で愛される日本酒も残していきたいともずっと考えていたそうです。
 
「地元の人が飲んでくれたからこそ、今の笹祝があると思っています。観光色を強めると一層地酒を残していく必要性を感じます。観光客が買いたいのは、地元の人が飲むお酒。そういうお酒が無くなったら、足元がぐらついてしまう。だからこそ、地元の人を大切にすること、観光客に地酒を知ってもらうこと。この両方を意識して定番酒を一番に守っていきたいですね」
 

終わりに

▲お土産としてもらえる、おちょこ

一見すると新しい取り組みが目立つ、笹祝酒造。ですが、その取り組みは長年地元の人が愛し続けてきたからこそ、その上に成り立っているものでした。
 
第一に地酒。第二に新しい取り組みで酒蔵としての裾野を広げる。
その両輪があるからこそ、今の笹祝酒造がある。
 
そんな強い想いを感じた取材でした。日本酒がどのように造られているか、その裏側を知ることができる酒蔵見学。新潟駅から少し足を伸ばして、西蒲区で笹祝酒造の想いに触れる旅に出かけてみてはいかがでしょうか?

笹祝酒造株式会社

住所:新潟県新潟市西蒲区松野尾3249
TEL:0256-72-3982
休み:不定休
<試飲営業と直売所と蔵見学の営業時間>
通常時期:9時~12時、13時~17時
醸造時期:13時30分~17時
酒蔵見学は、要予約。

この記事を書いた人
madoka

新潟県在住ライター。旅での気づきを日常に持ち帰ってもらえるように、地域の人や暮らしも含めて伝えるようにしています。