とがった大福対決!米どころ新潟の中心地で大人気の異色な大福を食べ比べ。新潟女子がオススメする見逃せない大福とは(後編)/新潟市


2022年08月03日 6412ビュー
前回の記事では米どころ新潟が誇る名物大福として
田中屋本店さんと万平菓子舗さんをご紹介しました。
これで終わりではなく、まだまだ新潟市には
大変魅力的な大福がひしめきあっています。

今回も古くから多くの方々に愛され続ける
その秘密に迫りたいと思います。

さわ山:幾度も波を乗り越え繋がる大福が人々を魅了する

新潟の大福といったら
こちらのお店は絶対に外せません。

新潟市中央区の「しもまち」と呼ばれるエリアにあり
毎日ひっきりなしにお客様で賑わう人気店。

そうです。老舗餅菓子店「さわ山」さんです。
一度食べると熱狂的ファンになってしまう人多数の
『名代・大ふく』は私の大好物の一つです。

さわ山さんの大福は
ギリギリまで薄~い皮が特徴です。
名代・大ふく(125円/税込)

え?これ大福じゃなくてあんこですよね?
というくらい薄いんです。

そして、その中にくるまれたあんこは
上品な甘さで食べ飽きることのない美味しさ。

「こんな美味しい大福がこの世にあるなんて」
初めて食べたときの衝撃といったらもの凄いものでした。

つい何個でもパクパクいきたくなってしまう
魔法にかかったかのように魅了される大福です。

市内市外問わず、ファンの数は数知れず。

多いときですとお彼岸には
2,500個もの大福が売れてしまうという

一見すると小さなお店ですが
その人気ぶりは他店との一線を画すものです。

しかも、ファンが多いだけではなく、
そのファンの熱烈ぶりも凄いんです。

その魅力を物語る熱すぎるファンたち

そのファンの一人が、とある百貨店のバイヤーさんです。

百貨店のバイヤーとなれば
よっぽどの“目利き”だと想像できますが、
そのバイヤーさんが当時、目を付けたのが
「さわ山の大福」でした。
2代目ご主人が何度も断ったそうですが
それでも諦めずに何日も通い詰めて説得。

その結果、実現したのが
新潟伊勢丹さんでの販売だったそうです。
(※現在は土曜日限定販売です)

一流のバイヤーさんをうならせ、とりこにする
さわ山さんの大福の魅力。
わざわざ上越からこの大福を買いに来る方もいらっしゃるくらい
根強いファンがいるということからも
記憶に残る美味しさだということが分かります。

他にも各所から熱いラブコールが寄せられる
超人気店なんです。

山あり谷ありを乗り越えたさわ山の幻の味

さわ山さんの創業は大正初期のこと。

これだけ人気の美味しい大福であれば
これまでも順風満帆だったのだろうと思いきや、
この味を守るためには相当な苦労があったそうなんです。

今回、4代目である小針嘉代子さんから
お話をお伺いすることができました。
初代が生み出した名物大福だったのですが、
太平洋戦争で砂糖が手に入らなくなってしまいます。

そうなるとお店も中断するしかありませんでした。

ようやく落ち着いた頃に「お店の再開を」となった時には
時すでに遅し。

初代はもう「帰らぬ人」となっていて
レシピも残されてはいませんでした。

「あの味が幻に・・・」

ですが、2代目は
「初代が作ったあんこの味」を目指すことにこだわります。

ただし「初代の味」を生み出すためには
それは相当なご苦労があったそうです。

「おやじあの味を教えてくれ・・・」
と初代のお墓に泣きつく程で
かなりの困難を極めた道だったそうですが

諦めずに挑み続けたのはそれほどの魅力があったから。

そしてご親戚の方々の協力もあり、ようやく苦労が実り
「初代の幻の味」を復活させることに成功したそうです。

苦労の末に何とか再現することができた
特別な「あんこ」を使った大福は
それから新潟の人々をどんどん魅了し、

新潟市を代表する餅菓子屋さんになっていきました。
ですが、ここで再び不幸が襲います。

その頃には代替わりし、3代目のご主人になっていました。
しかし、働き盛りのご主人が若くして
病気でこの世を去ってしまうことになります。

深い悲しみの中、
さわ山の味を繋ぐことを決意したのが
3代目ご主人の姉である嘉代子さんでした。

若い頃からお店を手伝っていたとはいえ、
いきなり経営者になるわけですから相当なご苦労があったと思います。

ですが、そんな苦労は微塵も感じさせない
明るく朗らかな笑顔の“おかみさん”が
さわ山の味を今も守り続けています。

そして、今日も
初代から変わらないさわ山の大福が店頭に並んでいるんです。

いつまでも愛されるさわ山のメニュー

名物の大福の他、
春は桜餅におはぎ、夏はくず饅頭
繁忙期を除いて、そら豆羊羹も並ぶそうです。
ごぼうだんご(140円/税込)は嘉代子さんのお母さんが作られた、
本当の「おふくろの味」。

こちらも大福に次ぐ人気商品だそうです。

シャキシャキした甘じょっぱい味が
お餅の味と絡んで美味しいんですよね。
甘くない小豆の入ったおやき(125円/税込)も、
お客様からの要望で商品化されたそうです。

あんこより小豆の味をしっかりと感じることができて
豆好きにはたまらない味でもあります。

超人気店で忙しいはずなのに
冬の寒風で乾燥させる昔ながらの保存食
「かた餅」の製造をまだ続けて下さっていたり

もち米100%のピザが
フライパンでさっとできちゃう
新商品「餅ペーパー」を開発されたり

とても精力的なご様子が伺えますが
それを陰で支えているのが5代目に当たる息子さんだといいます。

一度は途切れかかった
「さわ山」の名を息子さんが受け継いで下さる
という話もお聞きすることができました。
これからも地域に愛され、多くのファンの愛情に囲まれ
ずっと繋がっていく姿が想像でき

さわ山さんのいちファンとしてはとても嬉しいニュースでした。

多くの人を魅了してやまない
ずっと愛され、守られてきた大福。

そんな繋がる味を一度味わってみてはいかがでしょうか。
売り切れ次第終了なので早めのご来店をおススメします。
さわ山

さわ山

住所:新潟市中央区夕栄町4513
営業時間:8:00~18:00(商品がなくなり次第終了)
TEL:025-223-1023
定休日:火曜(月火連休あり不定)
駐車場あり(店舗左側2台・3軒右隣りに5台)

御菓子司 田家屋:明治創業老舗が作った鉄道の町の異色の○○大福

鉄道の町新津(にいつ)
今は新潟市秋葉区となっていますが

町の名前が変わっても
長年変わらずに愛され続けるお菓子屋さんが
秋葉区にありました。

そのお店の名前は田家屋さん。
「たいや」と読みます。
田家屋さんは、創業は明治という老舗。
120年以上もの間、
御菓子を通して町の人に幸せを届けてきました。

昔ながらのお店という感じがしますが、
写真右にある茶色い看板を見てください。

『もか大福』

これは異色の予感です。

老舗が生んだ異色の『もか大福』

今回は4代目店主の
田中隆一さんからお話をお伺いしました。

もともとお店で人気の商品は、
草餅といちご大福だったそうです。

ですが、どちらも期間限定ものの商品。

通年買えるものとして
35年ほど前に新たな新名物が誕生しました。

それが『もか大福』です。
もか大福(200円/税込)

今までの和菓子の常識を覆す新発想の大福。

見た目はぷっくりとした茶色い大福。
中身はなんととろけるクリームなんです。
あんこは一切入っていませんが「大福」です。
これが今や隠れた名物大福になっています。

名前の「もか」を表すのがほろ苦コーヒー味の皮。

このほろ苦が甘過ぎないクリームと相まって
ついついもう一つ手を伸ばしたくなるお味です。

柔らかいお餅ととろ~りとろけるクリームのコラボ。
至福以外の何者でもありません。

「ほろ苦」というと大人の味かと思いきや
小学生と年長の子どもたちも大好きなので
老若男女問わず愛されていることが伺えます。

こっそり店主が教えてくれた秘密の食べ方

実は今回の取材中にこっそり
もか大福のもう一つの楽しみ方を教えて頂くことができました。

もか大福の新提案。

それは・・・
「半解凍状態で食べる」という方法です。

お店では生のものと、冷凍のものが置いてあり
持ち運び時間が長いときは冷凍をおすすめするそうなんです。

ですが、ここであえて冷凍を買い
少し溶けた半解凍の状態で食べる“通”がいるというのです。

「ぜひ一度試してみて下さい」というお話。

えぇ、お言葉に甘えてそうさせて頂きます。
冷凍だと柔らかい餅も包丁で切れるので写真撮影にもバッチリです。

では、待望の「半解凍もか大福」を頂きます。
パクリ
おお!クリームがシャリシャリするではありませんか。

シャーベットでもなく、アイスでもなく
美味しいひんやりスイーツ発見です。

これは新食感。

今まで知らなかった新しい世界が私を待っていました。

とろ~りも美味しいですが、
このシャリシャリクリームもたまりません。

まさか、歴史ある古くからのお店で
こんな楽しみ方を教えて頂けるとは思わなかったです。
ぜひ食べ比べて頂いて「どっちが好きか論争」を
巻き起こして欲しいと思います。

真面目に味を守り続ける強さ

元々、3~5月の季節商品だった『草餅』は
お客様の熱い要望もあって

今は特別に10~12月には年金の支給日時期に合わせて
販売されるようになったそうです。

こうしたお話からも
お客様との繋がりを大切にされているご様子が伺え、

地域の方々にずっと長年愛され続ける理由が
分かった気がします。

“ずっと変わらない味が残っていること”

それが逆に町の人たちの支えにもなっているんだと思います。

お話の中でも、新しいもので話題を作ることより
このまま「今まで続いてきた大切なものを守り続けること」を
重視していらっしゃるご様子でした。

こんなご時世ですから
これまでお客様が愛してきたものを“変わらずに作り続ける”
ということは大変なことだと思います。
そんな田家屋さんのこだわりを田中さんにお聞きしたところ
「良い原料を使って美味しく作ることかな」
と温かな笑顔でお話されていました。

当たり前のことが当たり前でなくなっている世の中ですが
真面目に信頼を重ねてきたからこその言葉だと思います。

大切なものを守り続けることに挑むという“強さ”を感じました。

いつまでも変わらずにそこにいて欲しい
そう思えるお店です。
昔ながらのカスタードプリン(150円/税込)も美味しすぎて驚きました。

鉄道の町と共に歩み、変わらない味を守る田家屋さん。

ぜひ愛され続ける味を味わってみてはいかがでしょうか。
御菓子司 田家屋

御菓子司 田家屋

住所:新潟市秋葉区新津本町4-9-16
営業時間:8:30~19:00
TEL:0250-22-0430
定休日:月曜日
駐車場:4台(道路向かいにあり)

この記事を書いた人
古川綾子(綺麗道きれいどう)

昔から受け継がれてきた新潟の食や伝統、暮らす人たちの「こころ」を後世に繋ぎたいアラフォーママ。
新潟市秋葉区在住。普段は薬膳・畑の野菜・食を愉しみながらカラダを調えることに情熱を燃やしています。
ブログ: https://note.com/ayafull

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