大地の芸術祭2024を楽しもう!【川西エリア編】/十日町市
2024年07月30日
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新作を中心に見どころをお届けしている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」の紹介記事シリーズ。3回目の今回は川西エリアをご紹介いたします!
動物たちがお出迎え
毎回、動物をモチーフにした多くの作品で彩られるナカゴグリーンパーク。今回は《Nakago Wonderland–どうぶつ達の息吹と再生》というタイトルで、17名の作家が参加しています。
入り口に設置された黄色と黒の標識ロープ。柵代わりに設置されているのかと思いきや、岡本光博の《トラロープ》という作品なのです。このトラ、よく覚えておいてくださいね。
入り口に設置された黄色と黒の標識ロープ。柵代わりに設置されているのかと思いきや、岡本光博の《トラロープ》という作品なのです。このトラ、よく覚えておいてくださいね。
乗り物と動物を融合させた木彫作品を手掛ける三松拓真の《Re:cycling!!》は、子ども用自転車などをモチーフにした、摩訶不思議な生きものたちです。近くには遊び心が利いた交通標識もありますよ。
テントの中には寝台が置かれ、その周りを動物彫刻が取り囲みます。靴を脱いで寝台に横たわると、見えてくるのは森羅万象のたくさんの命たち。まるでブッダの涅槃図のようなこの作品は、村山大明の《どうぶつ涅槃》です。横たわって天井を見ていると、何か大きなものに包まれているような気持ちになって、心落ち着きました。
フェンスの網が動物となって飛び出し、芝生の草を食んでいるように見えるこちらの作品は、五月女かおるの《食事の風景》です。顔の先端ははっきりと、フェンスとの境界線はあいまいに溶け込んでいます。「生命が食材となる境界の希薄さ」を描いているそうです。
切り絵作家、早川鉄兵の《アニマルピクニック》は、ナカゴグリーンパークの中で、クマやウサギ、シカなどがまるで楽しそうに遊んでいるような作品です。絵画を見ているときに、そこに描かれている人物の背景を想像することがありますが、この作品も動物たちが持つストーリーや、それぞれの関係性についてなど、つい物語を読み解くような気持ちで考えてしまいました。
卵形のオブジェに近づいて見ると、それはなんと椅子。ゆらりゆらりと揺れる感覚が心地よく、まるでロッキングチェアのよう。笠井祐輔の《生まれてきてくれて、ありがとう》という作品で、遠くから見ると、大きな丸い卵が生きもののように左右に動いているようで、面白い情景でした。
会場入り口にあった、標識ロープから着想を得た岡本光博の《トラロープ》。会場の奥にはなんとこんな大きなトラもいるのです。あの小さな可愛いトラから一転。迫力ありますよ!
関口恒男の《越後妻有レインボーハット2024》は、今回で6回目の出展。2006年から《越後妻有レインボーハット》とタイトルを冠した作品を作り続けています。日本での美術活動に行き詰まりを感じていたという関口さんは1980年代に放浪の旅に出ます。訪ねた先はインド。ヒッピーの聖地と呼ばれたゴアで過ごした経験から生まれた作品です。1989年にゴアで作ったのを皮切りに、日本をはじめニュージーランド、台湾など、世界各地でさまざまなデザインのレインボーハットを作ってきました。踊ることができるように、中は広い空間になっています。
会期中、関口さんは休みの日を除いてほぼ毎日、会場へ来て音楽を流しています。「作品鑑賞しながらぜひ踊ってほしい。練習したダンスを披露するのもいいですが、できれば聞こえてくる音に合わせて、その時の感覚で好きに自由に体を動かしてもらえれば」と話しました。
外に置かれた、鏡を入れた水盤に太陽の光が差すと、レインボーハットの天井に虹のような光が映し出されるという仕掛けになっています。レインボーが綺麗に見えるのは「お昼から午後1時くらい」だそうです。
オレンジ、ピンク、赤など、カラフルな水玉模様の種がころころと並ぶ、一色智登世の《Dance of prayer -seeds-》。陶を素材に作られています。この種からは何が生まれて育つのでしょうか。作品には、明るい未来への願いが込められているそうです。
「『鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館』の宣伝部長」と自ら名乗っていた、アーティストおおたか静流の楽曲「回転木馬」に着想を得て制作されたのが、中里繪魯洲の《くるくるさんば》です。設置されたハンドルを回すことで、メリーゴーラウンドを動かすことが出来ますよ。涼やかな音色を響かせる仕掛けがあるので、最初は無音でもぜひ一周させてみてくださいね。
通常は外から回すだけですが、8/11(日)、25(日)の2日間は、回転木馬体験日として実際に乗ることができます。(13〜16時まで。予約不要、無料)
なお、《Nakago Wonderland–どうぶつ達の息吹と再生》は公開時期が10月6日までと、他より早く終了するので、ご注意ください。
通常は外から回すだけですが、8/11(日)、25(日)の2日間は、回転木馬体験日として実際に乗ることができます。(13〜16時まで。予約不要、無料)
なお、《Nakago Wonderland–どうぶつ達の息吹と再生》は公開時期が10月6日までと、他より早く終了するので、ご注意ください。
ベリーを育てることで、人々が関わりあえる果樹園をつくるアートプロジェクト、ベリー・スプーンは2003年の芸術祭で誕生しました。地元のお母さんたちが育てているベリー畑の側にあるかまぼこ型の建物を、芸術祭開催期間中の1カ月間のみ(7/13〜8/12、10:00〜16:00、火水木休み)、限定オープン。ジャムの販売やジャムづくりワークショップを開催しています。
ジャム作りワークショップは月・金・土・日の9:30~(受付9:00、1日1回、500円)
ジャム作りワークショップは月・金・土・日の9:30~(受付9:00、1日1回、500円)
カフェ営業も行っていて、ベリーを使った美味しいスイーツを楽しめます。
写真左から、フローズンヨーグルト(ブルーベリー味)450円、アイスクリーム(ストロベリーソース)400円
写真左から、フローズンヨーグルト(ブルーベリー味)450円、アイスクリーム(ストロベリーソース)400円
越後妻有の空が作り出す芸術
アメリカ人の建築家ジェームズ・タレルが、谷崎潤一郎の『陰影礼賛』からインスピレーションを得て造ったという《光の館》。芸術祭の作品であり、宿泊できるゲストハウスでもあります。
2階はキッチンと隣り合った6畳間。アウトサイドインと名付けられた12.5畳の和室の二間です。このアウトサイドイン、屋根がスライドして天井が開き、空を直接見ることが出来るのです。何度訪れても、観る度に感動してしまいます。畳にごろりと横になり、うつろう空を眺めているときの開放感!ここでしか味わえない格別な美術鑑賞のひとときです。
1階には8畳の和室と、浴室があります。陰影礼賛の影響を強く感じられるのが1階の和室。差し込む自然光にうっすらと照らされた畳の淡い光などは、近年の家ではなかなか見ることができません。吹き抜ける風も心地良く、2階のアウトサイドインとはまた違った光と開放感を楽しむことができます。
光の館での宿泊ですが、すでに今年分の予約は埋まっており、予約はキャンセル待ちで受け付けているそうです。
《光の館》の営業時間:
[7/13〜10/31]11:00〜15:30(最終入館15:00)
[11/1〜3/31]11:30〜15:00(最終入館14:30)
光の館での宿泊ですが、すでに今年分の予約は埋まっており、予約はキャンセル待ちで受け付けているそうです。
《光の館》の営業時間:
[7/13〜10/31]11:00〜15:30(最終入館15:00)
[11/1〜3/31]11:30〜15:00(最終入館14:30)
野外の新作も要チェック
ギリシア神話では、旅人に謎かけをして答えられないと殺してしまうという怖ろしい存在として描かれているスフィンクス。顔が人間、体がライオンという不思議な生きもので、古代エジプトでは神殿や墳墓の守り神でした。久保寛子の《三ツ山のスフィンクス》は、「山あいに鎮座する守護神」だそうです。青、緑、黄色とカラフルなスフィンクスたちはいずれも優しい表情をしていました。
川西地区全学校の児童生徒を対象にしたワークショップで作られたオブジェを展示して、作品化した丹治嘉彦+橋本学の《小脇の学校》。作品が並ぶのは小学校の分校跡地です。紹介パネルには「表現の集合体から感じられるダイナミズムを体感してください」とありました。
加藤力・渡辺五大・山崎真一、3人の作家によるグループ、力五山。2009年の芸術祭から参加し、十日町市の高倉集落で作品を発表し続けてきています。
今回の作品は力五山ー加藤力・渡辺五大・山崎真一ーの《時の回廊 十日町高倉博物館》。体育館中央に設置された階段の向こうでは、かつての集落の様子が分かる映像が上映されています。それを鑑賞したら、下に並んだ土地の文化を感じられる展示を見ながら戻り、2階へと進みます。
2階には民具のほか、学校らしい展示もありました。黒板があり、力五山の高倉集落との関わりが分かる年表や、上映プログラムの時間割が紹介されています。映像上映のほか、10時から16時30分まで、30分ごとに『光と音と物語り』というプログラムが行われます。こちらは展示してある民具、農具がライトアップされ音を出すという仕掛けです。開催時間に合わせて訪ねるのがおすすめ。2階からだと全てが俯瞰できてダイナミックに楽しめますよ。
大地の芸術祭の川西エリア編、いかがでしたでしょうか。次回は中里エリア編をお届けする予定です。お楽しみに!
大地の芸術祭の川西エリア編、いかがでしたでしょうか。次回は中里エリア編をお届けする予定です。お楽しみに!
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024
期間:2024年7月13日〜11月10日
定休日:火水曜日(8月13日、14日は一部作品・施設特別開館)
開催時間:10:00~17:00(10、11月は10:00~16:00)
※作品により公開日時が異なる場合あり
パスポート料金:
会期中(7/13〜11/10) 一般4,500円/小中高2,000円/小学生未満無料
個別鑑賞券もあり、各施設で販売
Nakago Wonderland–どうぶつ達の息吹と再生(ナカゴグリーンパーク) 一般600円/小中学生300円
光の館 中学生以上600円/小学生300円
十日町高倉博物館 一般600円/小中学生300円
2024年は11月10日までの土日祝日、越後湯沢駅=清津峡=十日町駅を結ぶ実証運行バス「YukiMo!(ユキモ)」を運行しています。
大地の芸術祭2024を楽しもう!【川西エリア編】
この記事を書いた人
長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中