いまこそ世界遺産「佐渡島の金山」を訪ねてみよう!後編「史跡 佐渡金山」/佐渡市


2024年12月24日 25ビュー
世界遺産の関連地を回る旅の最後は佐渡奉行所跡から車で約5分、「史跡 佐渡金山」です。

佐渡金銀山絵巻の世界がよみがえる宗太夫坑

防寒着ヨシ!歩きやすい靴ヨシ!と準備をして江戸時代の鉱山の様子がわかる「宗太夫坑(そうだゆうこう)」へ行きます(約30分コース)。そうだ、行(ゆ)こう!

坑道内は年間を通じて10度前後で、夏は涼しく冬は思ったよりも暖かい?と感じるのではないでしょうか。
再現された人形のみなさんはずいぶん薄着ですが、海水面よりも深く掘った場所では地熱の影響で30度前後になる場所もあるそうです。掘りすぎですね!
※画像提供 株式会社ゴールデン佐渡

坑道内では人形たちが江戸時代の様子を再現しています。
有名な「早く外に出て、酒を飲みてえ。馴染みの女にも会いてえなあ」としゃべる馴染みの女おじさんですが、「金穿大工(かなほりだいく)」という高給取りの専門職で、悪いことして捕まっている人ではありません。仕事が終われば繁華街に遊びに出たことでしょう。おじさんは自分が小学生の時からずっと「外に出たい」としゃべっていますが…。

これら人形の顔はリアルにするため製作当時の従業員さんの顔写真をモデルに作られたそうで、地元の人が来て「これうちのお父さんだ」と言われたことなどもあるそうです。成程どうりで、アイドルのようなイケメン人形が見つけられ…、いえいえイメージに合った人形ですね!
鉱山開発は「地下水」との戦いだったそうです。その排水のために1653年頃に導入されたのが「水上輪(すいしょうりん)」です。ヨーロッパで開発されたアルキメデスポンプ(名前がカッコイイです)のことで、ハンドルを回転させると筒の中のらせん状の羽が水を汲み上げます。
水上輪人形は見学道をはさんで上と下にそれぞれ人形がいて、下から上まで水を汲み上げる長い水上輪リレーが見て取れます。
すごいシステムだなと感心する水上輪ですが、時代が進み坑道が地中深くなっていくと運用が難しくなり、手桶でバケツリレーする「水替人足(みずかえにんそく)」が必要になりました。
人手不足のため1778年からは諸事情で戸籍を失った「無宿人(むしゅくにん)」が佐渡へ送られて水替人足にあてられたそうです。これは厳密に罪人というわけでもなく、歴史の解釈は難しいなと思います。

排水の他にも排気、測量、落盤防止、安全祈願の「やわらぎ」神事とたくさんの試行錯誤が行われてきました。
見学すると当時世界トップクラスの産出量の陰にはトップクラスの苦労があったことが感じられます。

 

まさに深掘りな金山の資料館

宗太夫坑を抜けると「佐渡金山資料館」に入り、ここで採掘後の勝場での選鉱、灰吹(はいふき)・焼金(やききん)などの製・精錬、さらに小判を製造するまでの工程を模型で見ることができます。

精錬のその次は「小判所」で細長い「延金(のしきん)」に叩きのばしてから小判一枚分に荒切りし、「後藤役所(ごとうやくしょ)」で形を整え、色付け薬に浸してから表面を焼いて黄金色にしてやっと「小判」の完成です!完成までいったいどれだけの人手がかかっていたことでしょうか。
この採掘から小判製造までをギュッと狭い地域にまとめて行うのは世界的にも珍しいことだそうです。さすが世界遺産!
町を作った長安さん、馴染みの女おじさん、鉛板の場所を忘れるくらい忙しかった役人さん、みんなお疲れさまでした!
あ、あれはまさか「馴染みの女」がいたお店の再現では!?
 
ケースから金塊を取り出す体験はケースの中で金塊の重さを感じる体験に変更になりましたが、金価格の高騰により時価は1億5千万円にまで上がっています!
また地下水との戦いでもう一つ重要だった6カ所から同時に手掘りで掘り進めたのにわずか1mほどしか誤差のなかった「南沢疎水道」についての展示や、鉱脈全体の模型、小判や大判の時代による変遷も見ることができます。

 

トロッコや古い機械が魅力な道遊坑

明治から平成元年まで使われた「道遊坑(どうゆうこう)」まで歩くとさらに時間がかかりますが(約40分コース)、江戸時代と近代の比較になりますし、古い機械や工場見学が好きな人にはこちらもお勧めです!宗太夫坑とのお得な共通券もあります。
「道遊の割戸」のフォトスポットもあります。人が手掘りでやったとは思えない跡ですね。
 

ついつい目がいく「ここでしか買えない」お土産

金山資料館の下にはお土産を買える売店があります。金山まんじゅう、金箔栗羊かん、ガレット&フィナンシェ、Tシャツにオリジナルマグネットなど、「ここでしか買えない!!」マークの佐渡金山限定商品がたくさんあります。
その中で特に気に入ったのが「埋蔵金最中」です。
商品名は最中なのに下段には小判の形のチョコレートが!これを買って佐渡奉行所跡に行って「お主も悪よのう」「いえいえお代官様ほどでは」ごっこをするなんてワンランク上の楽しみ方もあるかもしれません!これには越後(新潟)のちりめん問屋のご隠居が出てくる番組を見ていた世代もニッコリですね~。
冬期は売店の外ではなく中で販売していますが、金箔の入った「金箔ソフトクリーム」「金箔コーヒー」で一息入れることもできます。
金箔コーヒーは坑道内で熟成させた珈琲豆を使用しているそうです。坑道を経験した豆だと思うと味わい深いですね!
史跡 佐渡金山

史跡 佐渡金山

住所:新潟県佐渡市下相川1305
電話:0259-74-2389
営業時間:8:00~17:30(4月~10月)、8:30~17:00(11月~3月)
定休日:無休
駐車場:乗用車500台 大型バス3台
料金:宗太夫坑 大人1,000円 小学生500円
   道遊坑  大人1,000円 小学生500円
   ガイド付き山師ツアー 2,500円(中学生以上、4月~11月のみ) ※要予約
   アイランド・ミラージュ 大人3,000円 小学生2,550円 ※要予約

いろいろと説明してくださった世界遺産推進課の宇佐美亮さんは「金や銀を求めてたくさんの人が来て、時には山ひとつなくなってしまうようなこともあった佐渡の歴史をぜひ感じていただきたい」と話されていました。

金銀山をとりまく歴史を振り返ると、尖閣湾のある姫津では増えた人口の食料確保のために島根県石見から移住した「石見さん」たちがはえ縄漁を伝え、水上輪は昭和の初めまで田んぼの水汲みにも使われ、鉱石をすりつぶした石臼の技術は蕎麦作りなどにも活用されたそうです。
佐渡は魚や米や蕎麦だけでなく、美味しい食べ物も古い建物も独自の文化も、どこかで金山につながる島だったのだと感じました。
この世界遺産登録を機会に、ぜひ「佐渡島の金山」を訪ねてみてください!


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この記事を書いた人
まきたろう

若い頃は自転車日本縦断や四国八十八ヶ所の歩き遍路など旅を住み家とし、新潟に戻っても漂泊の思いやまず仕事の傍ら県内外をさ迷っている人生まだまだ旅の途中の人。 昭和とか縄文とか古いものが好き♪五泉市在住。