売り切れ必至!名水で手打ちする十割そばの名店「岩瀬の清水そば」/阿賀野市


2024年06月30日 611ビュー
皆さん、こんにちは。取材ライターのエムコネです。蒸し暑い日々が続きますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。

今回ご紹介するのは、新潟県阿賀野市にある「岩瀬の清水そば(いわせのしみずそば)」。

ご存知の方も多いと思いますが、県内外からそば好きたちが訪れる十割そばの名店です。「新潟の名水百選」に選定されている “岩瀬の清水” と、福島県西会津産の“玄蕎麦”を使った十割そばの美味しさに、連日多くのファンが訪れています。

週末は営業時間の途中で、ゴールデンウィークやお盆には開店後30分で、蕎麦が売り切れてしまうということもしばしば。多くのそば好きを魅了する美味しさの秘密に迫ります!

お店に伺う前にちょっと寄り道

県都新潟市から南東へ車を走らせること約35分。阿賀野市中心部から少し外れた、自然豊かな笹神地区へと向かいます。

同店があるのは、阿賀野市立笹岡小学校の真向かい。そして、名水「岩瀬の清水」があるのは笹岡小学校のグラウンド脇!ということで、お店に伺う前に、まずは岩瀬の清水に立ち寄ってみました。
岩瀬の清水専用の駐車場に車を停めて、グラウンド脇を歩いていくと……清水場がありました!
「岩瀬の清水」は、古来越後三清水の一つとして有名であり、現在は新潟の名水百選、そして阿賀野市の指定文化財にも指定されている名水。地域の人々はもちろん、遠方からも水を汲みに訪れるそうです。そして、小学生たちが体育の終わりや放課後に喉を潤しに来るという、まさに地域のお宝。

この日も、この近所に住んでいるという方が「この水は美味しいし身体にいいんだよ~」と言いながら、水を汲みに来ていました。
この名水が店名になっている「岩瀬の清水そば」。どんな美味しさを味わえるのか、ますます楽しみですねぇ!

県内外のそば愛好家が訪れる名店

それでは、蕎麦を味わいにお店へ伺いましょう。小学校の前に、ポツンと佇む古民家風の一軒家。ここが「岩瀬の清水そば」です。

駐車場は店舗敷地内に5台、道を挟んだ砂地に6台と、計11台分があります。
まず最初にお伝えしておきたいことが。同店では、来店された方に気持ちよくお食事をしていただきたいと、2つの工夫をされています。

①【麺の取り置きシステム】

「せっかく行ったのに、売切れで食べられなかった…」ということを極力なくすために、食べる分量の麺の取り置きサービスをしています。電話でのみ受け付けているので、ぜひ事前予約をして伺ってみてください。(電話受付時間10:00~16:00)

くれぐれも、来店日と麺の分量の予約のみで、時間指定や席の予約はできませんのでご注意くださいね。

②【満席時の電話呼び出しシステム】

満席の場合は、店内のスタッフさんに名前と電話番号を伝えます。順番が近づくと電話で呼び出してくれるので、車の中で待つことができます。
店内は、テーブル席と座敷席があり、ほっと落ち着く和の空間。窓から見える、緑の木々や季節のお花に癒やされます~。

おしながき

メニューは、大きく分けて、そば、うどん、一品料理の三種類。そば店ですが、手打ちうどんも人気で、特に冬場はうどんのオーダーが増えるそうです。

同店のそばは、麺のコシを存分に堪能してもらうため、一年を通して水で締めた冷たいそばのみ。温かい汁に入ったかけそばは提供していません。

【そばメニュー】※税抜。2024年5月取材時の価格。
  • せいろ蕎麦(950円)
  • 天せいろ蕎麦(1,650円)
  • おろし蕎麦(1,050円)
  • すだち蕎麦(1,300円)
今回は、さっぱりとしたおそばが食べたい!ということで、2種類をいただきました。

唯一無二の絶品蕎麦を実食!

一品目は「おろし蕎麦(1,050円)※税抜」

大根おろし、かいわれ、ネギ、鰹節を乗せた、創業時から女性に人気のそば。大根おろしは辛味大根ではありませんが、ほんのりと辛味を感じ、かいわれの苦みとの相性も抜群です。キンキンに冷やしすぎないのがポイントだそうです。

つゆには、枯宗田節、枯丸鯖節、枯本節の3種と真昆布、そして創業以来30年間継ぎ足している、秘伝のかえしが合わせてあります。
そばは、福島県西会津産の玄蕎麦(収穫されたままの皮付きの蕎麦の実)を仕入れ、厨房裏にある工房で脱皮し、石臼で製粉を行います。

同店で提供するのは、つなぎに小麦粉やふのりなどを使わない、水と蕎麦粉100%の生粉打ち。毎朝汲みに行く、名水・岩瀬の清水を使った素材・工程・製法にこだわった手作りの十割そばです。

このそばの、おいしいこと、おいしいこと!

十割そばの中でも、更科系と呼ばれる白く透明感があるそばで、モチっとした食感があります。田舎そばと言われる固く黒っぽいそばと比べると、更科系は薫りが少ないそうですが、喉越し際立つなめらかな触感の良さに加え、そばの甘味が引き立っています。

薬味とつゆを絡めれば、旨味が何倍にも膨らんだように感じました。
そして今回、驚きのおいしさだったのがこちらの「すだち蕎麦(1,300円)※税抜」

目の前に運ばれてきた瞬間、ふわ~んとすだちの清々しい香りに包まれました。徳島産2Lサイズのすだちを贅沢に2個分スライスし、美しく盛り付けたすだちそばは、見た目にも涼やか。

そばをすすると、先程のおろし蕎麦とは全く違った味わいで、こちらもとっても美味しいんです!!すだち蕎麦専用に作られたつゆはだし感を強めにしてあり、すだちの果汁との絶妙な調和を生み出していました。

「すだちの実も種も召し上がれますので、お好みでどうぞ」とのことで食べてみると、ツーンと尖ったような酸味や苦みがなくとーっても爽やか!
そして、皆さん気になっていたはず……黄金色に輝く謎の液体を。

こちらの正体は、なんと、オリーブオイルなのです!

「麺が半量ほどになりましたら、オリーブオイルを入れて味変をお楽しみください」とスタッフさんがおっしゃったのですが、正直、半信半疑でした。そば(和)にオリーブオイル(洋)を入れるなんて、本当に合うのかな?と思っていたのですが……

これが、衝撃のおいしさ!!不思議なぐらい、合うんですよ!

すだちの酸味がまろやかになり、コクが増したように感じました。そして、すだちの風味とオリーブオイルの風味の相性が良く、これまでに味わったことのないハーモニーが。
そしてすだちを少し残して、そば湯とともにいただきます。このそば湯の味わいも、まるでレストランで味わうスープのように、完成度の高い美味しさでした。

この、すだちそばの絶妙なバランスは食べてみないと分かりません。ぜひ、ご賞味ください!

先代の味を守りながら日々進化を

1994年に創業し、今年で30周年を迎えた「岩瀬の清水そば」。美味しさの理由に迫るべく、2代目店主の羽賀博人さんにお話を伺いました。

「この店を初めたのは僕の両親です。父は中学を出て、東京のそば店で料理人の道に入りました。それから地元の五泉市に戻り、親戚が営む食堂で修業し、独立してラーメン店を開業したんです。ところが、僕には姉がいたんですが幼くして病気で他界してしまい、店は閉店することに。それから何年か経て、料理人の道の原点となったそば店をやりたいと、1994年にこの岩瀬の清水そばを開店しました」。

大切なお写真とともに、お店の歴史を教えていただきました。
「昔は下越地方にはそば店が少なく、新潟のそば好きの人たちはお隣の福島県まで食べに行っていたそうです。父は西会津地方のそば店に作り方を教わりに行き、我流で練習し、試行錯誤を重ねました。そこでは、そば農家が営むそば店がいくつもあって、父はそば栽培の種まきから収穫までも体験したそうです。それだけ、そばに対する情熱と誇りは人一倍強かったと思います。そんな父の情熱があったからこそ、今でも契約農家さんから上質な玄蕎麦を仕入れさせてもらっているので、感謝しかありませんね」と想いを語ってくださいました。
当時は不定休だったため、年間の休日はわずか10日間ほど。ご両親は働き詰めの日々を過ごされたといいます。今とは違い、メディアへの露出を一切していなかったそうですが、そば好きたちの口コミは一気に広まり、駐車場のほとんどが県外ナンバーの車で埋まるほど、創業年から多くの県外客が訪れたそうです。
「僕が店に入ったのは2002年です。それまでは建築や製造の業界にいたので、飲食業は全くの未経験でした。ところが、僕が入ってから約1年半後に父が急病で亡くなってしまったんです。まだまだ教えてもらいたいことは沢山あったのですが……。幸い“かえし”のレシピは残っていましたし、そば打ちなどは父のやり方を思い出したり、母に教えてもらったり、自分でも勉強しながら少しずつ経験を積んでいきました」。

お父様が築いたお店を守るべく、厨房の中心に立つこととなった羽賀さん。人気店を継ぐことになり、かなりのプレッシャーがあったのではないでしょうか。

「母がいて、全く一人きりで継いだわけではなかったので、あまりプレッシャーは感じませんでした。お客様も応援してくれましたしね。ただ、なんで父の味と同じにならないんだろうという葛藤みたいなものはあった気がします。近づけるように日々努力をしましたし、それと同時に自分なりに新しいメニューを作ってみたり、ホームページや、メニュー表なども手作りをして、自分のカラーも出していきました。すだち蕎麦や、牡蠣の天ぷら、冷やし梅うどんは、僕の代になってからできたメニューなんです」。
未経験から家業に入り、先入観がなかったからこそチャレンジができたと語る羽賀さん。何事も、できないことはゼロからでも学んでできるようにすればいいと、探究心と器用さ、そして挑戦し続けていらっしゃる姿が印象的でした。

「ここのお蕎麦じゃないと食べられなくなった、とか、他の店に行けなくなった、なんて言ってくださるお客様がいらっしゃるのがありがたいですね。あと、若いスタッフがわずかな時間でもうちの仕事を経験して、成長する姿は嬉しいです。僕も未経験から始めましたが、接客業ってとても楽しいので、若い子たちもこの経験を積んで社会に出る自信につなげてくれたらいいなと思います」。
最後に、今後の目標についてお聞きしました。

「コロナ禍を経て、そばのテイクアウトと通信販売を始めました。以前よりお客様からご要望を頂いていたのが、やっと実現できたんです。また、今後はうどんの方にも力を入れていきたいなと考えています。そば屋なので、そばがメインではあるですが、うちのうどんってちぢれ麺で美味しいんですよ。だから、ゆくゆくはうどん専門店もやりたいですね」と、新たな挑戦を語っていただきました。
先代から受け継いだ、名水・岩瀬の清水で打つ十割そば。その味を大切に守りながらも、新たな挑戦をし続けています。

今年の夏も厳しい猛暑が予想されます。食欲がない…元気がでない…という日こそ、さっぱりと涼やかなそばを楽しんでみてはいかがでしょうか。日付と分量の予約をして、ぜひ伺ってみてくださいね。
岩瀬の清水そば(いわせのしみずそば)

岩瀬の清水そば(いわせのしみずそば)

新潟県阿賀野市山崎97-1
0250-62-1510
営業時間/11:00~15:00(L.O.14:30)
定休日/日曜、祝日

※麺がなくなり次第終了
※月に1~2日臨時休業があります。来店前にホームページでご確認ください。
※事前に電話で来店日と食べる分量を予約するのがオススメです。席と時間の予約はできません。

岩瀬の清水そば

この記事を書いた人
エムコネ

富山県生まれ、新潟市在住のママライター。 グルメな夫、子鉄の長男、肉食の長女、リアクション芸人の私、の4人家族。 外食費と娯楽費が家計を圧迫していますが、おいしいモノとたのしいコトを求めて日々開拓中!
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