五感を研ぎ澄ます旅へ!「ニューラグジュアリーツアー」参加レポート/十日町市


2020年09月02日 6909ビュー
こんにちは、三条市在住ライターの渡辺まりこです。
 
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、なかなか旅行に行けずにもどかしく感じていませんか?そんななか十日町市が提案するのは、新しい生活様式に対応した「ニューラグジュアリーツアー」。“自然と共存するサスティナブルな暮らし”をテーマとした1泊2日の旅です。
 
今回はそのモニターツアーに参加してきました。従来の観光旅行とは一味違う、ガツンと価値観を揺るがされる旅の魅力をご紹介します。
まずはバスに乗り込み、宿に向かいます。チェックインを済ませたら、最初の目的地へ。広々としたバスは、一人ひとりの間隔が広く確保され、コロナ対策もばっちりで安心です。
宿から5分ほどバスを走らせたら到着! 里山にあるホーリーバジル畑「まつのやま茶倉」で花摘みを体験します。
こちらはオーナーの嶋村彰(あきら)さん。埼玉から移住して約9年、十日町市松之山地域の大自然の中で子育てをしながら、ホーリーバジルの栽培・販売を行っています。自然と共存する“サスティナブルな暮らし”を実践する達人です。
嶋村さんにレクチャーしてもらいながらバジルの花を収穫。畑に入ると、爽やかな香りがふわ~っと立ちのぼります。ミントに似た清涼感の中にほんのり甘い香りも混じり、いつまでも嗅いでいたいくらい心地良い!
 
参加者のみなさんからは、「いい香り~」「幸せ!」「癒される!」と感嘆の声が上がっていました。
実は、ホーリーバジルは効能がすごいんです。精神安定・免疫力アップ・美肌効果・ボケ防止など、ストレス社会に生きる私たちの強い味方になってくれます。インドのアーユルヴェーダでは「不老不死の薬」とも呼ばれているそう。
 
こちらの畑はすべて手摘みで無農薬・無化学肥料。害虫も手で駆除するそうで、手間ひまがかかっています。「大変だから簡単にはマネできないんですよ」と嶋村さん。通常、摘み取り作業は涼しい早朝に音楽をかけながら一人で行っているそうです。
「そろそろ休憩しましょうか。ホーリーバジルのお茶をどうぞ」と淹れてくれたのは、フレッシュホーリーバジルを水出ししたハーブティー。ひんやりと喉元を通ると、華やかな香りと甘みが広がり、身体中の細胞に活力がみなぎっていくようでした。
こうして約1時間花摘みを楽しみ、どっさり収穫できました。続いて、摘み取ったホーリーバジルをお茶にする加工所に向かいます。
こちらが加工所。ホーリーバジルを洗ったら9割陰干しをして、残り1割は日干しで仕上げるそう。さらに一本一本しごき、花と葉、茎を分けていきます。もちろんすべて手作業だというから脱帽です。
 
こうして完成するのが「神目箒茶(かみめぼうきちゃ)」(カミメボウキはホーリーバジルの和名)。芳醇な香りと甘みを楽しめる極上の味わいです。無農薬・無化学肥料で丹精込めて作られたお茶には、爆発的なエネルギーが宿っているように思えます。商品はホームページからも購入可能です。

まつのやま茶倉

住所: 新潟県十日町市松之山黒倉1150
電話:090-9740-7625

爽やかな汗をかいた後は、本日宿泊する「BAR&HOSTEL醸す森」へ。松之山温泉街から10分ほど離れた場所に佇むおしゃれなホステルです。
 
コンセプトとして掲げるのは“あなたを醸す”。お米と麹や酵母が出会ってお酒が生まれるように、風土やお酒やヒトと出会うことであなたの中に何かが生まれてほしいという想いが込められています。
宿泊したのは8畳の和室部屋。シンプルかつ清潔なお部屋で、窓からは里山の大自然を満喫できます。Wi-Fi完備なのも嬉しいポイントです。
 
お風呂は、単純硫黄鉱泉の温泉で、窓から緑豊かな大自然が望めます。
さっぱりと汗を流したら、お待ちかねのディナータイムです。
 
会場は1階にある「醸す森バル」。常時100種類以上のワインや日本酒、フレンチをカジュアルに楽しめます。かの有名なミシュランガイド新潟2020特別版で「ミシュランプレート」として評価され、その味はお墨付きです。
 
新型コロナ対策に伴い、席は1テーブル2名で使用。向かい合わせにならないようにと配慮も十分になされています。
まずは日本酒で乾杯!こちらは津南町の苗場酒造によるオリジナル日本酒「醸す森」。まるでヨーグルトやライチを思わせるフルーティーな爽やかさ。これまでの日本酒のイメージを覆す味わいに驚きでした。
切りたての生ハムとパンコントマテ。やや厚めに切った生ハムは食べ応えあり。クミン入りのフレッシュ感あふれるトマトを、バゲットにのせていただきます。
フレッシュバジルのサラダは、まつのやま茶倉のホーリーバジルの葉がアクセント。丸パンには米粉が配合されていて、もっちりとした食感と甘みがたまりません。
トウモロコシの冷製スープ。今が旬の甘いトウモロコシのうまみがぎゅっと凝縮しています。
メインディッシュは越の鶏のコンフィ。パリパリの皮とホロホロ崩れるお肉が絶品。付け合わせの野菜の力強い味わいにも驚きました。
最後のデザートは、ホーリーバジルのブラマンジェ。ホーリーバジルのスパイスを配合することで、味わいに奥行きをプラス。フレッシュバジルと共に味わえば、爽やかさがさらにアップします。
 
ゆっくりとディナーをいただき、お腹はいっぱい幸せ気分に。さて、眠りにつく前に、外に出て気持ち良い夜風に当たることにしましょう。
夜空に輝くのは満天の星たち!こぼれんばかりに光り輝き、あまりの美しさに感動してしまいました。星空観察をじっくり楽しむために、野外にはイスやハンモックも用意されています。美しい夜空を眺められるのは、里山ならではの醍醐味ですね。
 
これにてツアー1日目は終了です。静かな森に包まれながら、いい夢が見られそうです。おやすみなさい。
そして翌朝、ツアー2日目です。早起きして、宿の周りを散策します。昨日に引き続きアテンドしてくれたのは、まつのやま茶倉オーナーの嶋村さん。片道約30分間かけて、今取り組んでいる新事業の現場に案内してくれるそうです。
 
道中、自然栽培で作物を生産する農家さんに出会ったり、食べられる野草を発見したり、絶景の棚田風景を眺めたり。新鮮な空気を吸いながら、山道を進んでいきます。そして辿り着いたのが、嶋村さんがこれから稼働させるという、山塩の工房です。
松之山温泉は、約1200万年前の海水が温泉となり湧き出る珍しい温泉で、温泉水を煮詰めることで塩ができるそう。山で製造するから「山塩」なんですね。嶋村さんは友人に依頼した手づくりの山塩窯で、今後塩づくりに取り組むそうです。
 
試食させていただいたところ、まろやかな塩味にうまみがたっぷり。そのまま食べても美味しくてびっくり!約1200万年前の化石海水が使用されるため、マイクロプラスチックの問題がなく安心安全なのも利点です。
 
この窯の熱源となる火は、地元でとれた薪で起こすそう。さらにこの熱エネルギーを応用できないかと検討しているのだとか。
 
豊かな地域資源を掘り起こし、自らの手で広める活動を続ける嶋村さん。そこには自然で遊びながらも、着実に経済活動を営む、常識にとらわれない確固としたスタイルがありました。私だけに限らず、きっと他の参加者のみなさんも、嶋村さんの自由な生き方に感銘を受けたに違いありません。
宿に戻ると、朝食の準備ができていました。お料理を作ってくれたのは、地元のお母さん方。この地域に伝わる郷土料理がずらりと並び、心が躍ります。
 
この日のメニューは、のっぺ汁、サバの塩焼き、山菜の煮物、白和え、茶碗蒸しなど。ご飯は地元産コシヒカリ、みそ汁に使用するみそも自家製です。飲み物は、甘酒、シソジュース、ホーリーバジルのハーブティー。滋味深い料理に満たされる幸せな朝食でした。

醸す森

住所:新潟県十日町市松之山黒倉1879-4
電話:025-596-2200

宿を後にして、次の目的地へ向かいます。到着したのは「やぶこざきキャンプ場」です。
ワークショップ会場となる建物の2階はとても開放的!
こちらで体験するのはミツロウクリームづくりです。ミツロウとは、ハチが出す分泌液でできる蝋(ろう)のこと。ハチの巣を煮溶かし精製すると、写真中央のような黄色いミツロウがとれます。黄色い色は花粉によるものなんですって。
 
やぶこざきキャンプ場の敷地内では養蜂も行っていて、今回使用するミツロウもこの地でとれたものです。
このミツロウを細かく刻んでビンに詰め、ホホバオイルを加えて湯せんにかけます。溶けたら室温に戻してひたすら混ぜて、冷めるまで放置。意外と簡単です。
ミツロウクリームが冷めるのを待つ間、周辺を散策することに。オーナーさんのアテンドで、森の中を進みます。「やぶこざきキャンプ場」の由来が、やぶをこざく(またぐようにして歩く)という通り、なかなか険しい道のり……。
そんな森の中で発見!高級楊枝の材料としても使われるクロモジです。薬効のある植物で、この辺りには普通に生育しているのだとか。枝を割ると、森林の豊かな香りがあふれだし、脳内はリラックスモードに。みんなでこれを持ち帰ってお茶にします。
 
その他にも、森には食べられる野草がいっぱい。鳥や虫たちの風情ある鳴き声が響き渡り、清々しい気持ちで散策を楽しみました。
ワークショップ会場に戻り、それではクロモジ茶作り開始です。作り方は、採取したクロモジを葉と枝に分けて、お湯で煮出して成分を抽出させるだけ。わずか数分で完成してしまいました。
葉だけのお茶は緑色ですっきり。葉と枝のお茶はピンク色で香りがより豊か。さらに、葉と枝を乾燥させたお茶は、芳醇でふくよかなうまみが楽しめました。三者三様どれも美味しい!
参加者のみなさんと一緒にパチリ。おいしいクロモジ茶を飲んで和みのひとときです。
さて、ミツロウクリームは最後の仕上げです。各自好みのエッセンシャルオイルを数滴入れます。私はホルモンバランスを整えて女子力をアップさせるというゼラニウムを選びました。これでオリジナルミツロウクリームの完成!いい香りに癒されます。
 
森林に自生するクロモジを使用した香り高いお茶をいただき、森林で活動を営む日本ミツバチのミツロウでクリームをつくるという贅沢な体験。自然の恵みをまるごといただいているような、かけがえのない豊かな時間を満喫できました。

やぶこざきキャンプ場

住所:新潟県十日町市松代7216
電話:025-594-7216

ツアーもいよいよラスト。ほくほく線まつだい駅と連結した「農舞台」でランチをいただきます。こちらは「大地の芸術祭」の作品の一つでもあり、建物や部屋それ自体が複数のアーティストによる作品となっています。
建物周囲にもアート作品がいっぱい。こちらは世界的アーティスト草間彌生氏の作品「花咲ける妻有」です。
昼食会場は、農舞台の中にある「越後まつだい里山食堂」です。内観全体がポップな水色という異空間!大きな窓からは、山々と棚田の風景を楽しめます。
いただいたのは、里山おむすびセット。大きなコシヒカリのおにぎり2種、から揚げ、惣菜4種と具だくさんのみそ汁が付いてきます。どれも素材の良さが際立っていますが、注目すべきはお米の美味しさ!ツヤツヤご飯は噛むたびに甘く、絶景の棚田を見ながらいただくことで、より一層美味しく感じられました。

越後まつだい里山食堂

住所:新潟県十日町市松代3743-1 まつだい「農舞台」内
電話:025-594-7181
定休日:水曜

これにてニューラグジュアリーツアーは終了です。十日町市の大自然に包まれる旅は、味覚や嗅覚、触覚など五感をフル活用することで、全身で心地良さを感じられ、心も体も浄化されていくようでした。そして自然と共存しながら暮らす人々と触れ合うことで、本質的な豊かさとは何かを考えさせられる二日間でもありました。
 
今回参加したのはモニターツアーでしたが、秋のツアーの募集が10月3日~4日、10日~11日、17日~18日の日程で始まっています。詳しくは十日町市観光協会にお問い合わせください。

十日町市観光協会

TEL 025-757-3345

この記事を書いた人
渡辺まりこ

新潟県三条市在住のフリーライター。主人が“金物のまち”を代表する職業の包丁職人ということから、地場産品に興味が芽生え、ローカルのおもしろさを日々発信中。 これまでの執筆実績はブログで紹介しています。http://www.watanabemariko.com/

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