良寛さんゆかりの地 与板を訪ねる その一/長岡市


2023年03月20日 4089ビュー
こんにちは。長岡・柏崎地域振興局★ふらっと旅を楽しみ隊の智彦です。
かの文豪・川端康成氏はノーベル文学賞の授賞式で、良寛さんの「形見とて 何か残さむ 春は花 山ほととぎす 秋はもみぢ葉」という歌を紹介しながら、良寛さんのことを「日本の神髄」と称しました。
そんな良寛さんの家族や親類、親交を深めた人たちにゆかりのある地・与板。良寛さんもよく与板を訪れ、様々な逸話を残しています。今回は『良寛たずね道 八十八ケ所巡り』を参考に、与板の町を歩きながら良寛の足跡を訪ね、さらに与板の今の魅力を探ることにしました。(なお、以後は基本「良寛」と呼ばせてもらいます。)
ちなみに与板は、戦国時代、上杉謙信公の家臣・直江家の城下町だった由緒ある地で、その頃の刀鍛冶の技術が受け継がれ、大工道具など打刃物の産地として有名な町です。
今回の旅のスケジュールはこちらです。
長岡駅から与板方面行きのバスに乗りました。
雪に覆われた田園地帯を通り、30分ちょっとで「与板仲町」に到着しました。運賃530円也。

「日本のビールの生みの親 中川清兵衛生誕の地」の案内・碑

バス停を降りると、「日本のビールの生みの親」なる看板が私の目を釘付けにしました。
サッポロビールの創始者・中川清兵衛の生誕の地です。さりげない案内ですが、日頃より大変お世話になっており、私たちにとってはある意味聖地。与板はこんな偉人も輩出した地なんですね。

和泉屋・山田家

近くに造り酒屋の和泉屋・山田家の跡がありました。
良寛は主の山田杜皐(やまだとこう)と親交を深めていましたが、杜皐の妻およしはとても機転の利く人でした。
およしは夕方になるとお酒を求めてやってくる良寛を「ホタル」と呼んでいましたが、自分は「黄金(こがね)の水」を求めるホタルだと言いながらお酒をねだる良寛に、およしもお酒をふるまったなどといった逸話もあります。 でも、良寛の「戒語」や「由之への手紙」などから察すると、良寛は酒を飲み過ぎることはなかったようです。そこがわれわれ凡人との違いかな。
良寛の逸話については『良寛いつわ ~良寛さんってどんな人~』を是非ご覧ください。
与板の町並みを眺めながらアーケード街を歩いていきます。与板の旧字は「與板」ですが、新字の「与」という文字が城下町特有のカクカクした道を示しているようで面白いですね。
10分ほど歩きますと、小高い山に建物が見えてきます。
 

楽山苑

江戸時代、全国にもその名を知られた与板屈指の豪商「大坂屋・三輪家(おおさかや・みわけ)」。その11代当主の潤太郎(じゅんたろう)は、大工さんにわざわざ京都で修業させるなどして楽山亭(らくざんてい)という別荘を造りました。
 楽山亭を中心として、端正な樹木や灯篭などが美しく配置されています。この一帯は楽山苑(らくざんえん)と称されています。
楽山亭へと誘う石垣は「六方組(ろっぽうぐみ)」と称される堅固な技法で築かれており、平成16年(2004年)の中越大震災でも崩れなかったそうです。
露地口門(ろじぐちもん)を通って楽山亭に入ります。
冬期間は囲いがされていますが、長岡市与板支所より、中の様子がわかるイベント写真をご提供いただきました。
八畳座敷(はちじょうざしき)と呼ばれる客間からは、与板の町を一望することができます。今回建物の中は見ることができませんでしたが、客間にはせり出した造りや幅広の廻り縁、縁側の柱の省略など、眺めの良さや開放感を感じさせる細やかな配慮がなされており、主の心づくしが感じられるとのことです。
招かれたお客様もきっと心地よい雰囲気の中で、豊かな会話や食事を楽しんだことでしょう。
ほかにも、それぞれ変化と工夫に富んだ二つの茶室や、かつて大坂屋が廻船問屋として交易に使った舟の板を活用した廊下など匠の技が施されています。建築家を志す人たちや文化財に興味のある人たちが見学に訪れるほか、最近ではこの景色に合わせたコスプレで写真撮影などを楽しむ若い人たちもいるとか。午前9時~午後5時は1,500円、午後5時~午後9時は2,000円とのことですから、結構コスパ高めかも。
長岡市与板支所によれば、春と秋(5月中旬~下旬(令和5年は5月19日~28日)、11月上旬~中旬)に楽山亭をライトアップし、賑わいイベントを開催する予定があるので、多くの皆様からお越しいただきたいとのことでした。
5月中旬~下旬のライトアップです。(写真提供 長岡市与板支所)
楽山苑には良寛の碑が二基あります。
三輪家と良寛は深い絆があります。特に三輪家6代目の長高(ながたか)の一番下の弟・左一(さいち)とは唯一無二の親友でした。良寛は大坂屋を頻繁に訪れ、歌や学問を通じて左一と深く親交を結び、お互いに敬慕の念を抱いていたとのことです。
楽山苑には、年下でありながら先に亡くなった左一を良寛が偲び、その思い出を伝える碑が残っています。
長高には美しく賢い「おきし」という娘がいました。左一の姪に当たります。おきしは夫と死別して三輪家に戻り、出家して「維馨尼(いきょうに)」と名乗りました。この維馨尼が、寒い中、「大蔵経(だいぞうきょう)」(中国における仏教経典の総集)を購入するための資金調達に奔走する姿を見て、良寛は彼女を案じる手紙を書きました。その中で「天寒し自愛せよ」という、短いですが、とても心の込められた言葉が出てきます。 一説では、維馨尼は良寛が思慕の念を抱いていた女性であったとのこと。この天寒自愛の碑が、楽山亭を挟んで左一を偲ぶ碑の反対側にあります。

ロケハンで撮影した写真も紹介します。楽山苑の雪景色も冬ならではの絶景です。

※3月20日より全面見学可能(予定)。
楽山苑

楽山苑

お問い合わせ:
長岡市与板支所産業建設課
(長岡市与板町与板甲134 ℡0258-72-3201)

久廼弥

楽山苑の目と鼻の先に「久廼弥(ひさのや)」さんというお食事処があります。昼の営業は大河ドラマ「天地人」の放映がきっかけとなって始まったそうですが、そのランチを目当てにおじゃましました。
うっかり見落とすところでしたが、入口付近に「本日のランチ」という黒板が。本日は「二品定食」のラインナップです。
食いしん坊にとって、メニューを見て悩むのは至福のひと時です。普通、メインといったら一品ですよね。それがこの店では、数種類の中から二品も選ぶことができるのです。 本日のメニュー、「平政刺身、あぶりダコ刺身、サーモン刺身、イワシぬた、タコ刺身、チキンカツ、さばフライ、マグロフライ、さば塩焼」の何と九種類。誰が四番バッターになってもいいようなメンツです。どれもいい、どれでもいい・・・。
苦渋の決断でしたが、本日はあぶりダコ刺身とマグロフライをお願いすることにしました。ご飯と味噌汁、小鉢二品、お新香までついて、何とお値段750円。思わず感嘆の声が上がります。 連れは海鮮丼を注文しましたが、丼物はほかにも牛肉丼や豚肉丼、ニラもやし炒め丼もあります。魚介類だけではないんですね。ご主人の山田博章(やまだひろあき)さんが東京日本橋の丼物中心の飲食店で働いていた時、オフィス街で働くサラリーマンのお客様に短時間でいかに満足してもらうかが勝負だったそうです。ご主人の丼愛に納得。
ほどなくして登場。炙ることで旨味が増したタコ、これで一杯やりたい衝動を抑えます。マグロフライ、揚げたてのサクサク・アツアツ。マグロのお肉はさっぱりしているのでとても食べやすく、何枚でも食べられそう。堂々の二品です。 ご飯も盛りが素晴らしく、しかもすごくうまい!何でも地元産のコシヒカリを中心に県内米どころのコシヒカリも合わせているとのこと。
小鉢二皿、しっかり充実。栄養バランスに配慮され、ご主人の腕の凄さが随所に感じられます。魚の出汁が効いた味噌汁も手抜きがありません。
海鮮丼登場。新鮮さはもちろんのこと、マグロをはじめそれぞれの切身の分厚いこと!二品定食にもありましたが、酢で締めた鰯もいぶし銀の輝きです。こちらも味噌汁、小鉢二品、お新香がセットになっています。
ご主人に久廼弥の歴史をお聞きしました。
先々代が昭和2年(1927年)からお座敷での接待もできる飲食店として始めたそうですが、昭和40年頃から先代の考えもあって、仕出し・鮮魚店に。その後、平成13年(2001年)に今のご主人がお座敷の接待も再開して現在の形に至るとのことです。
新型コロナウイルスの感染拡大による影響はあるそうですが、ランチのほか夜の宴会もご予算に応じ、お任せ料理でお迎えしますよと語る山田さん。また、オードブルのテイクアウトも好評で、お客様の要望や家族構成なども聞きながら、できるだけ手作りをモットーにしているそうです。ご主人の食に対する思いやこだわりに感銘を受けました。
オードブルです。(写真提供 久廼弥)

久廼弥は地元のお客様から絶大な支持を受けていますが、地元以外からも多くのファンが訪れています。
他の飲食店とのコラボも展開する一方、与板観光協会の会長という要職も務めるご主人は、楽山苑のイベントなど様々な仕掛けによる地域の盛上げにも並々ならぬ意欲を見せるなど与板全体の発展をも見据えています。

 
久廼弥

久廼弥

(長岡市与板町与板甲271、℡0258-72-2708)
営業:月・火・木・金曜日 11:00~13:30、17:00~22:00
   土・日曜日、祝日 17:00~22:00(昼間の営業は応相談)
定休日:水曜日

久廼弥さんから通りを戻るような感じで歩きます。この辺はお寺がたくさんあります。

蓮正寺

浄土真宗・蓮正寺(れんしょうじ)。
本堂で19代住職の豊田朗(とよだあきら)さんがお出迎えくださいました。
このお寺は、良寛の父・以南の妹、つまり良寛の叔母さんが9代住職に嫁ぐなど良寛との関係がとても深いのだそうです。良寛も和島の島崎からよく遊びにやってきました。
豊田住職より学術的にも芸術的にも非常に価値がある良寛の遺品を拝見させていただきました。良寛の直筆をこんなに間近で見るのは初めてで、緊張しつつも、とても幸せな気持ちになりました。
瓢箪を半分にした水指に良寛が漆で書いたものがありました。本堂の仏具の修理のため使っていた漆を寸借したそうですが、漆の作品は珍しいとのことです。書かれている内容はちょっと意味深。禅の奥義を歌にしたものか、恋の歌なのか、単なる酔狂の歌なのかわからないが、 自身の恋心の歌だとしたら一層親近感が湧きます。相馬御風(そうまぎょふう)先生の箱書にも大感激です。
ほかにも良寛と父、弟、甥とその子などゆかりの人たちの書を集めた屏風や掛軸も拝見。皆さん、博学で上手いですねえ!一族の文学的素養に思わず見入ってしまいました。
木の額に「淡交斎(たんこうさい)」と記されていました。「淡交」とは荘子の言葉で、「あっさりとした君子の交わり」のことを言うそうです。文字のたたずまい、空間を大きくとったレイアウト、まさにこの言葉が表す懐の広さを感じざるを得ません。良寛さんが理想とした人間関係なのでしょう。
蓮正寺

蓮正寺

(長岡市与板町与板448、℡0258-41-5115)
ご紹介した文化財など貴重な宝物は事前に予約すればご覧いただけるそうです。

この後、蓮正寺から歩いて「蔵カフェ・茶々いま」へ向かうところですが、今回はここまで。
旅の後半は、その二に続きます。

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この記事を書いた人
長岡・柏崎地域振興局★ふらっと旅を楽しみ隊

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