良寛さんゆかりの地 和島を訪ねる/長岡市


2024年07月07日 380ビュー
こんにちは。長岡・柏崎地域振興局★ふらっと旅を楽しみ隊の智彦です。
「良寛さんゆかりの地」を訪ねる旅は、与板、出雲崎に引き続き、今回は良寛さんが生涯を終えた地・和島(わしま)です。
今回も前二回と同様、『良寛たずね道 八十八ケ所巡り』を参考に、和島の町を歩きながら良寛さんの足跡を訪ね、さらに和島の今の魅力を探ることにしました。(なお、以後は基本「良寛」と呼ばせてもらいます。)
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良寛さんゆかりの地 与板を訪ねる その一/長岡市|新潟県観光協会公式ブログ たびきち|【公式】新潟県のおすすめ観光・旅行情報!にいがた観光ナビ (niigata-kankou.or.jp)
良寛さんゆかりの地 与板を訪ねる その二/長岡市|新潟県観光協会公式ブログ たびきち|【公式】新潟県のおすすめ観光・旅行情報!にいがた観光ナビ (niigata-kankou.or.jp)

「出雲崎の旅」はこちら
良寛さんゆかりの地 出雲崎を訪ねる その一/出雲崎町|新潟県観光協会公式ブログ たびきち|【公式】新潟県のおすすめ観光・旅行情報!にいがた観光ナビ (niigata-kankou.or.jp)
良寛さんゆかりの地 出雲崎を訪ねる その二/出雲崎町|新潟県観光協会公式ブログ たびきち|【公式】新潟県のおすすめ観光・旅行情報!にいがた観光ナビ (niigata-kankou.or.jp)


ちなみに和島は、江戸時代には島崎(しまざき)川が新潟と柏崎を結ぶ物資の輸送に利用され、大変賑わったとのことです。さらに時代をずっと遡ると、平成2年に発掘された八幡林(はちまんばやし)遺跡は何と奈良・平安時代!この遺跡から「沼垂城(ぬたりのき)」と記された木簡などが出土し、日本書紀の記述を裏付けることになったそうです。今から1300年ほど前の和島は越後の国・古志郡(現在の長岡市とその周辺を含む)の中心地で、官衙(かんが:役所)跡と考えられています。歴史のロマンを感じさせますね。
今回の旅のスケジュールはこちらです。
 
今回の旅の予定
はちすば通り入口 → 木村家・庵室跡 → 隆泉寺・良寛墓碑 → 宇奈具志神社
 → 良寛の里美術館 → 道の駅良寛の里わしま

はちすば通り

はちすば通り。良寛と貞心尼(ていしんに)が清らかな師弟愛で唱和した歌を集めた「はちすの露」にちなんで名付けられました。「はちす」とは「蓮」のことです。

木村家・庵室跡

ほどなくすると木村家が見えてきました。良寛69歳の時にここ木村家の庵室に移り住み、晩年を過ごしました。貞心尼との出逢いの地であるとともに、貞心尼や弟・由之(ゆうし)、遍澄(へんちょう)法師に看取られ74歳の生涯を閉じた地でもあります。

隆泉寺・良寛墓碑

浄土真宗・隆泉寺(りゅうせんじ)。木村家の菩提寺です。
参道左手に大蔵経碑(だいぞうきょうひ)と托鉢する良寛像がありました。良寛像は近くに住むご老人をモデルにしたとのことですが、一番実物に近いと言われているそうです。
本堂左手奥に良寛禅師墓碑があります。隣に並ぶ由之のお墓とともに、まずは一同お参りをしました。
その後、本堂にご案内いただきました。御宮殿(おぐうでん)はタイの寺院のように八角形になっています。内陣は「出内陣(でないじん)」と呼ばれる珍しい造りだそうです。
ご案内いただいた隆泉寺ご住職 上戸聰(かんべ・さとる)様から、良寛にまつわるお話をうかがいました。
良寛は詩人として有名で、良寛の詩からは数多くの書物を読み、相当研究を重ねたことが感じられると語る上戸住職。ただ、詩がわかる人たちは良寛をとことん好きだが、漢詩も和歌も難しいため、興味のない人は全く興味がなく、両極端に分かれるのではないかとのことでした。書についても素人目には上手いとは思えないが、書家からは「大きな紙にこれだけ細い字で人々を魅了する作品となっているところがすごい」、「一幅の絵画として鑑賞すればよい」と聞いたことがあるそうです。
また、良寛は逸話などから「優しい人」とよく言われているが、自分を貫き通し生きるという点で、「厳しく、現実をしっかり見つめて生きた人」だと感じているそうです。仮に災難に遭ったとしても、現状をしっかり受け止め、そこから立ち直って生きていくことが大事という考え方。先が読めない現代、こうした考え方が生かされるかもしれませんね。

島崎地域は戊辰戦争で約2/3が失われ、隆泉寺も焼失。本堂は大正時代に建立されたとのこと。全国各地から良寛ファンが訪れている隆泉寺では、秋には菊のライトアップも行われ、多くの来訪者の目を楽しませてくれるそうです。
上戸住職さん、どうもありがとうございました。

宇奈具志神社

隆泉寺から良寛の里美術館に向け歩き進むと、右手に宇奈具志(うなぐし)神社が見えてきました。良寛はここで子どもたちと毬つきをしたそうです。また夏の暑いとき、良寛が涼を求めてよく足を運んだとのことで、参道左手にある「出田の宮(いずるたのみや)詩歌碑」には、その時の心地よさが記されています。

良寛の里美術館

はちすば通りを過ぎると、小高い丘の上に良寛の里美術館があります。
和島は良寛の遷化(せんげ:高僧がお亡くなりになること)の地であるとともに、貞心尼との「出逢いの地」。この美術館は良寛と貞心尼をイメージして、平成3年に開館しました。良寛に関する所蔵品は、大矢家から借用の良寛遺墨を含め約50点を中心に、貞心尼の書や良寛ゆかりの文人墨客の作品などを所蔵しています。
館内を見学する前に、館長の山田勝(やまだ・まさる)さんにお話をうかがいました。
山田さんは地元和島のご出身で、民間企業を退職された後、地元の「NPO法人和島夢来考房(わしまむらこうぼう)」に参加。平成16年にリニューアルオープンした「道の駅良寛の里わしま」の駅長を務め、令和3年からは駅長をバトンタッチして良寛の里美術館の館長に就任されました。「道の駅良寛の里わしま」の美術館ゾーンには、良寛の里美術館のほかに、菊盛記念美術館、歴史民俗資料館、茶室「指月亭」なども設置されています。
オープン当時には年間8万人もの来館者数を数えたこともありましたが、今ではファン層の高齢化や美術館離れ、最近では新型コロナウイルスなどの影響もあって、年間数千人程度とのこと。来館者の中には、「小学校の時に良寛さんの逸話が教科書に載っていたことを思い出し、良寛さんがお住まいになっていた地に来てみました」という方も。遠くは北海道や九州からお越しの方もおられるとのことで、改めて良寛の知名度の高さを感じました。
良寛については素人と語る山田さん、最初は美術館の案内に多少の不安があったとのことですが、様々な来館者と接する中で、良寛の遺墨を学ぶ専門家というよりも良寛に親しみを感じて訪れる人が大半であり、作品鑑賞もさることながら、良寛の人柄や生き方に触れてもらうことが大事なことだと感じるようになりました。
山田さんがまず取り組んだことは、逸話や時代背景に関する絵や写真などを使って、良寛や貞心尼などの代表的な作品のイメージがわきやすくなるように工夫したことです。また、従来の訳文も漢詩や和歌の直訳で、わかりづらい内容となっていたことから、現代文に置き換える意訳、いわゆる「自由訳」に替えていくことで、よりわかりやすくしようとしているそうです。
これらの解説は作品の近くにある看板やQRコードで見ることができますので、是非ご活用ください。
ほかにもご高齢の方々などのために、説明の文字を大きくして見やすくしたり、フリガナを付けて読みやすくしたそうです。
難しくてわかりづらい美術館から、良寛に親しみを増し、わかりやすい美術館へ
こうした取組は、まだ始まったばかりですが、これからもお客様の反応や専門家の方々などのご意見をうかがいながら進めていきたいとのことでした。
来館者には、まず良寛や貞心尼、展示作品をわかりやすく紹介するビデオ(30分程度)を見てもらい、他の用事がなければ山田さん自ら来館者をご案内するそうですが、とても好評とのことです。
この日は「良寛をめぐる人びとと良寛の魅力」と題する企画展が開催されていました。
良寛の屏風。それぞれの点が線と絡み、表情を変えながら舞い踊っている感じ。余白も生き生きとして、実に明るい作品だと思いました。自由自在・暢やかで、しかしながら全体として絶妙のバランスが取れている、まさに良寛ワールド!良寛の作品を眼前にすると、ただただ唸るばかりです。
貞心尼の直筆「やけのの一草」も展示されていましたが、平安時代のかなの古筆を随分学ばれた方だと感じました。かなりレベルの高い知識人だったのでしょう。「幕末女流三大歌人」と称され、良寛の歌を後世に伝える上で大きな功績があったとも評されています。
一口メモですが、貞心尼は1798年に長岡藩士の娘として今の長岡市表町に誕生、長岡市福島町の閻魔堂で庵主を務めていた1827年に初めて和島の良寛を訪ねました。ということは、2年後の2026(令和8)年は二人が出逢って200年目ということになりますね。1872年柏崎市にて75歳の生涯を閉じましたが、明治5年ですので、昭和生まれの私にとってはそんなに昔の人ではない気がします。
良寛と貞心尼の逸話は、「良寛いつわ」でも紹介されています。
山田館長さん、どうもありがとうございました。
茶室「指月亭(しげつてい)」
現在、「お茶の体験教室」(月1回)やお茶会に利用されています。事前予約で茶室の利用可能(有料)。2023年5月に開催された「良寛てまり茶会」では、二日間で380名の参加がありました。2024年11月に「良寛もみじ茶会」の開催が予定されています。

良寛の里美術館

(長岡市島崎3938、℡0258-74-3700)
営業:9:00~17:00
休館日:年末年始と毎月曜日(月曜日祝日の場合翌日)で、展示替えのための休館日もありますので、ホームページや「良寛の里わしま通信」(月刊)でご確認ください。

道の駅良寛の里わしま

お昼となりお腹も空いてきましたので、ランチにしようということになりました。目指すは「道の駅良寛の里わしま」です。国道116号線の近くということもあり、平日にもかかわらず車が多数止まっていました。
道の駅の隣に、和島にあった古民家(良寛遷化の天保2(1831)年の翌年に建てられ、現在築190年余)を移築した地域交流センター「もてなし家」があります。ここでは地元の特産品や新鮮な野菜、山菜など多くの物産が販売されています。
また、地元食材を生かした郷土料理などが楽しめるお食事処もあります。今日はこちらでこの日ご一緒した長岡観光コンベンション協会のIさんとの楽しいランチです。
特に打合せしたわけではないのですが、それぞれが別々のメニューを注文しました。
着席して周囲を見回すと、古民家にマッチした飾り付けがされていて、とてもいい雰囲気です。
ほどなく食券の番号が呼ばれ、各自取りに行きます。
良寛むすび(300円)」と「団子汁(500円)」。おむすび1個では物足りないと思っていましたが、大ぶりのおむすびと、しゃけ・おかか・梅干のたっぷりの具のおかげで満足度はかなり高まります。3種類の具の入ったおむすびなんて、良寛さんが聞いたらさぞかし驚かれたことでしょう。良寛さんの質素な食生活に思いを馳せながらいただきました、とIさん。ちなみに、ここで使用するお米は和島産「新之助」。売店でも販売しています。
団子汁は具だくさんの野菜と、もっちりした大きな団子が3つ!団子は表面がちょっとデコボコしていて、形が不揃いなのも手作り感があってほっこりしますよね。
最近、新メニューとして加わった「豚汁定食(1000円)」。量が多めで食べ応えがありますが、豚汁の玉ねぎが甘くて、おいしいご飯が益々進むとのこと。女性でもペロリと平らげる人気のメニューです。小皿が添えられているのもうれしいですね。
私が注文したのはTKG、そう、「たまごかけご飯定食(1000円)」です。少し赤味がかっているのかなと思っていましたが、割ってみると黄色の卵でした。地元産の平飼いで育った健康な鶏から生まれる卵ですので、味は折り紙付きです。椀汁もいい味ですね。
なお、秋・冬限定となりますが、人気の「田舎風煮込みうどん(850円)」も紹介しちゃいます。これも具だくさんですが、「田舎風」という言葉にお客様をもてなそうという心意気が感じられます。
体も心も芯から温まり、古民家ならではの落ち着いた雰囲気に眠くなりそうな一行、この後、吸い寄せられるように隣の「ひふみ堂」へ。ひふみ堂はもてなし家に併設されたスイーツショップです。
和島に来たら、地元産新鮮生乳から作られたガンジーソフトですが、「越後姫いちごソフト」も非常に気になりました。
ガンジーソフト(490円)。濃厚ですが、甘ったるくなく後味も爽やか。不動の4番、安定した間違いのない美味しさです。
越後姫いちごソフト(450円)。道の駅良寛の里わしまのオリジナルで、寺泊産の越後姫を使っているそうです。定番のガンジーソフトを脅かすか?
別腹も満たし、みな大満足。ごちそうさまでした。

道の駅良寛の里わしま 地域交流センター「もてなし家」                       スイーツショップ「ひふみ堂」

(長岡市島崎5713-2、℡0258-41-8110)
営業:9:00~17:00(季節により変動あり)、食事処:10:00~15:00
休館日:第1月曜日(祝日の場合無休)、年末年始 *5月、8月、11月無休

恥ずかしながら、例によって旅の思い出に自詠の歌・句を書いてみました。

「師を想ふ唱和の歌を綴りつつ蓮(はちす)の上の露を願ひて」
「春訪はむ手鞠に歌を添へ訪はむ」
今回の旅はここまで。
和島地域には、ほかにも旧島田小学校をリノベーションしたレストランとパン工房の「和島トゥー・ル・モンド」、ガンジー牛乳やスイーツを販売している「加勢牧場」などもあり、とても魅力にあふれています。皆さんも是非和島にお越しください。
(一社)長岡観光コンベンション協会のホームページ「長岡観光ナビ」でも良寛を詳しく紹介しています。是非ご覧ください!
新潟県長岡地域振興局の若手職員がインスタグラムにより局管内の魅力を発信する「にも(N:長岡、I:出雲崎、M:見附、O:小千谷)プロジェクト」に取り組んでいます。和島地域の情報も掲載。随時更新していますので、こちらも是非ご覧ください!

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この記事を書いた人
長岡・柏崎地域振興局★ふらっと旅を楽しみ隊

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