木喰上人が彫り上げた33体の観音像。木喰仏35体が圧巻の「小栗山木喰観音堂」/小千谷市


2024年10月13日 1965ビュー
国指定重要無形民俗文化財「牛の角突き」が行われる「小千谷闘牛場」近く、わずか400メートルほどの場所に「小栗山(こぐりやま)木喰(もくじき)観音堂」があります。

そこには33体の観音像と、行基菩薩像、大黒天像が安置されています。35体すべてを彫ったのが木喰上人。享和3年(1803)8月1日から24日までの間に彫り上げたと言われています。

24日間で35体を彫り上げた!?86才で!?

一カ月もかからないで35体も…!? にわかに信じられない量と時間です。そして、もっと信じられないのが、当時、木喰上人は86才だった(※注)というのです。

(※注)生年からの計算では85才ですが、86才は「数え年」になります。数え年とは生まれた時に1歳とし、それ以降は新年の元日になるたびに1歳ずつ増えていくという年齢の数え方です。
仏像の背面にはすべて、自筆の銘文が書かれており、管理人さんが指差している部分に「八十六才」とあります。

享保3年(1718)に甲斐国(現在の山梨県)で生まれた木喰上人、亡くなったのは文化7年(1810)、93才だったと言われています。越後(新潟県)には生涯で二度、滞在しました。天明元年(1781)~天明5年(1785)に佐渡を、享和2年(1802)~文化2年(1805)に中越地域を。生涯で全国に1000体以上の彫仏を遺しましたが、現在確認されているのは約500体、そのうち約半数の250余体は、新潟県下に遺されています。(※参考)

(※参考)『野に生きる微笑仏 越後の木喰上人』著者:広井忠男、昭和62年発行、新潟日報事業社出版部

中央には如意輪観音、行基菩薩、大黒天の三体

御堂の中央に3体が並びます。真ん中の如意輪観音が本尊で、最も大きく高さ244センチ。一木彫全国木喰仏中、二番目の大きさを誇ります。右側の行基菩薩が120センチ、大黒天が121センチ。
原材料はイチョウの木で、地域住民が総出で運び上げた巨木と伝えられています。

左右に16体ずつ、合計で32体の観音像

通称「小観音」と呼ばれる32体の観音像が、本尊の左右に16体ずつ、三段の階段に並び安置されています。千手千眼観世音が12体、十一面観世音が5体、聖観世音が6体、如意輪観世音が4体、淮胝(じゅんてい)観世音が2体、子安観世音が1体、馬頭観世音が2体。すべてに「享和三年八月朔(一)日 日本千タイの内 天下和順 天一自在法門」「日本廻覧 八十六才 日月清明木喰五行菩薩」と書かれています。

本尊の如意輪観世音

背面の日付は「八月十八日」となっています。「本尊として如意輪観音をすえることは珍しいという。(※抜粋)」
 
(※抜粋)と表記の部分は、すべて『野に生きる微笑仏 越後の木喰上人』(著者:広井忠男、昭和62年発行、新潟日報事業社出版部)からになります。

本尊右側の行基菩薩

背面の日付は「八月二十四日」。「当時、再建された観音堂の仏像は消失してしまって何も残っていない。消失前の本尊が行基菩薩の像であったということから、村人が依頼したか、木喰上人が配慮して彫ったと考えられる。(※抜粋)」

本尊左側の大黒天

背面の日付は、行基菩薩と同じく「八月二十四日」。「恵比寿と大黒は、農業・漁業の豊作・大漁を祈る収穫の神様である。木喰上人は、全国にこの仏像をかなり彫仏している。(※抜粋)」

これだけの観音様が並ぶのは実に圧巻

「一カ所に三十体以上を集めた群像は全国に四カ所しかないが、その全てが新潟県に祀られている。本堂の他、長岡市の宝生寺、前島金毘羅堂、柏崎市安住寺。この合計だけで百三十体を楽に超える。(※抜粋)」
手前に、右肘をたて、右手を頬にあてた如意輪観音があります。
手前に十一面観世音と千手千眼観世音。
32体の観世音は70~80センチ。安置場所は特に決まっていないそうです。32体の観音様は同じようであって、お顔はひとつひとつ違い、なんだか心惹かれる観音様を見つけると、ぐっと吸い寄せられるような気持ちになります。
千手千眼観世音。「千の慈悲で衆生を救済するので大悲観音という(※抜粋)」そうです。いいお顔ですね。いつまでも飽きることなく、ずっと見ていられる。
私が最初に、木喰仏を見たのは20年程前でした。観光コースに入っていたので、写真を見ると「あんまり好きじゃないかも」と思いました。渋々と、という感じで訪れたのですが。
 
本物を見て「うわっ、すごい…!」と感激しました。想定外だった存在感に引き込まれました。目の前にあるのは「木で彫られた仏像」なのですが、それも粗削りの。でも、やっぱり当然、単なる木ではないのです。生きて存在するような、そこに「ある」というより「居る」ような、圧倒的なオーラを感じました。

木喰仏に対面すると私は、なんとなく、あたたかい気持ちになります。「生きるのは大変だけど、がんばろうぜ」と、仏様と木喰上人から励ましてもらえるような気がするのです。

丸くあれ。木喰上人の教えと理想とは。

まんまると まるめまるめよ わが心
 まんまる丸く 丸くまんまる
 
木喰上人が詠んだ歌です。「木喰上人は説いた。人生も家庭も夫婦も親子も村内も、円満が大切だ。すべて社会が円満であるためには、まず人の心が円満でなければならない。おだやかな心で許しあって日々を送りましょう。(※抜粋)」
 
「木喰上人は“天下和順 日月清明”と好んで彫仏の背面に記した。和と円満の好きな人であった。自らを“明満”と号したのも、満月の如くに明るく円満に生きたいとする憧れがこめられている。(※抜粋)」
 
満月の如く、丸い心で。木喰上人の、そんな思いが込められているからこそ、まん丸い観音様は、いつまでも見飽きないのかもしれません。

毎月17日が開帳日。予約をすれば開帳日以外でもOK

開帳日は毎月17日で、牛の角突き開催日も開帳していて、2024年は残り11月4日(月・祝)です。積雪期間は拝観できません。時間は午前9時~午後3時頃(前後する場合あり)。御詠歌は現在、あげていません。

毎月17日以外であっても、予約すれば拝観できます。資料代として一人300円が必要です。現地案内人の都合上、希望日に拝観できない場合があります。

観音堂専用の駐車場はありませんので、小千谷闘牛場の駐車場をご利用ください。

【予約先/問い合わせ先】

・東山地区振興協議会 電話:0258-59-2003
・小千谷観光協会 電話:0258-86-0288

小栗山木喰観音堂

【住所】新潟県小千谷市小栗山
【交通アクセス】関越自動車道「小千谷IC」より車で約30分

小千谷駅前の「カフェ カルチョフィ」でランチ

小栗山木喰観音堂から約8キロ、車で15分ほど移動して、小千谷駅前の「カフェ カルチョフィ」でランチを食べました。

熱烈なファンのオススメがナポリタン

先客の女性がいました。彼女は、このカフェでランチを食べるためだけに、燕市から約1時間かけて来訪したとのこと。この2年間ほど、月に一度は来ているそうで、オススメを聞くと…。

「ナポリタンね!トマトソースとケチャップでベタベタしたの、あるでしょ?あれはあれで美味しいんだけど、そういうのじゃないの。ナポリタンだけど、普通のナポリタンと違うの。見た目から違うから!」
オーダーしてみると、「すごーい!これ、ナポリタン!?」というビジュアル。「どうやって盛り付けしているの?こんなにキレイなの崩しちゃうと、もったいないね」と言いながら、食べてみると「美味しい。トマトソースのパスタって、色々なお店で食べられるけど、美味しいお店って意外と少ないのよね。どうしてこんなに美味しいの?」
店主さんは、東京の中野で大変人気があった「アザミ」という喫茶店で20年ほど働いて味を受け継いだのだそうです。「カルチョフィ」は一昨年(2022年)5月にオープンしました。
薩摩ハーブ悠然鶏のクリームソース。抗生物質を使っていない鶏だそうです。モッチリとちょうどいい歯応えのパスタと、まろやかなクリームソース。
メニューは、こんな感じで黒板に書かれています。
ファンの女性がオーダーしたのは、シーフードカレー。「今日こそ、カレーを食べようと思って来たの!」とのことでした。

「“推し”のお店はいくつかあるけど、ここは1軍で、超お気に入り。料理を食べたいというのもあるけど、店主さんに会いたいというのもある。お店って、人柄ありきだから。」と絶賛していました。

デザートも魅力的なメニューが目白押し

こちらは、ココアパフェ。アイスココアの上にバニラアイスと有機バナナなどが盛り付けてあります。自家製ココアペーストで、チョコレートパフェ風。バナナが美味しくて、良い食材を使っているなあと感心。
フランカーメル。新潟県産いもジェンヌ(紅はるか)を使ったクリームで豆乳プリンを豪華に。豆乳プリンは自家製で、沖縄県波照間島産の黒糖と、九州産ふくゆたか100%の無調整豆乳を使っています。

※季節や天候の関係で食材が変更になることがあります。
イタリア風チーズケーキ。自家製ティラミスで、リキュールを効かせたコーヒー風味のチーズケーキ。甘すぎず柔らかすぎず、絶妙なバランス。いくつでも食べられそうなほどです。

カウンターのみ5席の、小さなお店

カウンター5席の小さなお店ですので、私たちは2名で予約をしました。先客の女性と3人でワイワイと楽しく食べたあと、次の予約のお客さんが扉の外に見えて「じゃ、私たちは出ましょうか。」となりました。居心地がよいカフェなので、いつまでも居てしまいそうで、ちょうどよく次のお客さんと入れ替わりできました。
皆さまもぜひ、来店の際には予約をおすすめします。席数の関係で、未就学児及び団体はお受けできませんとのこと。予約方法は、店頭もしくはインスタグラムでメッセージをお送りください。
Café Carciofi(カフェ カルチョフィ)

Café Carciofi(カフェ カルチョフィ)

【住所】新潟県小千谷市東栄1-2-1
【営業時間】午前10時30分〜午後7時30分(ラストオーダー午後6時30分、ランチラストオーダー午後2時30分)
【定休日】毎週月曜

小栗山木喰観音堂とCafé Carciofi

この記事を書いた人
シバゴー

南魚沼市在住。趣味は写真撮影と読書で、本で調べた所へ行って写真を撮ることをライフワークとしています。神社彫刻が好きで、幕末の彫刻家・石川雲蝶と小林源太郎、「雲蝶のストーカー」を公言する中島すい子さんのファン。地域の郷土史研究家・細矢菊治さんや、地元を撮影した写真家・中俣正義さん、高橋藤雄さんのファンでもあります。