日本庭園と家屋のコラボレーションを楽しむ、越後豪農の館「椿寿荘」/田上町


2020年12月24日 9473ビュー
新潟県内に点在する豪農の館。かつて新潟には広大な土地を所有する大地主がいたことを表しています。中でも、1,000ヘクタール以上の田畑や山林を持つ地主が県内には5家あり、「千町歩(せんちょうぶ)地主」と呼ばれていました。そのうちの一つが、田上町にいた田巻家(原田巻家)です。田巻家(原田巻家)は江戸後期から昭和初期にかけて栄えた大地主で、離座敷として「椿寿荘(ちんじゅそう)」を建てました。
 
今回は、細部までこだわって造られた日本建築と美しい庭園が魅力の「椿寿荘」の楽しみ方をご紹介します!

江戸後期から昭和初期にかけて栄えた、大地主の離座敷

JR信越本線「羽生田駅」から5分ほど車を走らせると、閑静な住宅街に木造の大きなお屋敷が見えてきます。ここが今回ご紹介する越後豪農の館「椿寿荘」。大正3年から約3年半の歳月をかけて建てられた田上の豪農田巻家(原田巻家)の離座敷です。
 
江戸後期から昭和初期にかけて一千町歩を超える大地主として栄えた田巻家(原田巻家)。第7代堅太郎氏は当時の日本三名人のひとりに数えられた富山県井波の宮大工、松井角平に「何年かかってもいいから、できるだけ豪華にしてくれ」と依頼。その理由は、不況が続き、苦しんでいた小作人に仕事を与えるためだったといいます。熱意に感銘して、宮大工は仕事を引き受けることにしたそうです。
 
全国の銘木を集めるなど、贅の限りを尽くして建てられた「椿寿荘」。そのおかげで、館内には見どころのスポットが多数存在します。

贅の限りを尽くして建てられた、絢爛な造りと庭園を堪能

さっそく中に入ると、お土産コーナーとともに入館料を支払う受付が。大人400円、小人300円(税込)で入館可能です。希望者はスタッフによる案内を無料でお願いすることも。せっかくなので、案内付きで館内をまわることにしました。
館長の樋浦貞吉さん案内のもと、門をくぐり、まずは大名玄関へ。樹齢800年を超える会津ケヤキを、床には茨城の白みかげ石を使い、お客様をお出迎えします。
玄関から右手に進むと、3室続き48畳の大広間に入ります。すぐに目を奪われるのは、大広間から見える庭園の美しさ。
奥にある五重塔の石組みは須弥山を、脇に置いてある石は山々を表しています。そこからは建物のほうに向かって飛び石が置かれ、川の流れを表現。深山幽谷の世界が広がっています。
縁側に使われているのも、樹齢800年を超える会津のケヤキ。ゆったりとした気持ちで庭を眺めるだけで、心が落ち着いていきます。
椿寿荘は、大地主や寺院、町屋などにある新潟県の代表的な日本庭園を保有する「にいがた庭園街道」のひとつ。「にいがた庭園街道」には、日本庭園はもちろん、伝統建築、原風景の街道、温泉の4つの要素があります。これらをすべて満たした場所だけが認められるのです。
庭を眺めるなら、もう一つ特等席があります。それが上座の四角く切り取られた障子から見る景色。先ほどの五重塔や山々を表す石だけを切り取って眺めることができます。
中から楽しんだら、今度は庭園を散策。建物と樹々の美しいコラボレーションを楽しみながら、自分の好きな場所を探してみてくださいね。

建物内に配された銘木の数々にも注目!

庭園の美しさにばかり目を奪われているわけにはいきません。建物内に配された銘木の数々にもご注目ください。菊の欄間は、クスノキの一枚板から彫り出したもの。井波の彫刻師岩倉理八による作品です。
ひさしを支えるのは、一本ものの吉野杉。20m以上あるというのだから、驚きです。こうした各地の銘木が至るところにつかわれている椿寿荘。なんと17年もの歳月をかけて収集したそうです。当時、費やした費用は、8万円。諸説はありますが、当時の田上村(現:田上町)の年間予算が1万円だったというのだから、その莫大な費用におののいてしまいますね。

庭園を眺めながらお腹を満たす、幸せのひととき

事前に予約すれば、税込2,400円(入館料込み)でお弁当をいただくことも可能です。湯田上温泉の4軒の宿が週替わりで担当しているのだそう。この日は、温泉旅館「末廣館」の地物の食材を使ったお弁当。大広間の隣にある奥次の間でいただきました。
 
たっぷりの味噌をつけて焼いたナスがとにかく絶品。肉厚でジューシーなナスと甘い味噌が混ざり合い、しっかりとした味わいに。何個でも食べたくなる味でした。
 
庭園を眺めながらこうしたお弁当をゆっくりと堪能。風で木の葉も揺れ、心地よい時間を過ごせました。

田上の名産を自宅で味わう、おすすめ土産物をご紹介

建物内もすべて回ったら、最後は入り口脇にあるお土産物コーナーへ。田上特産の食品から工芸品、新潟のお土産まで幅広く取り揃えてあります。
 
その中から、スタッフさんに選んでもらったのが、田上町特産「たけのこ」をたっぷりと詰めた「たけのこ水煮」(税込1,000円)と、ミツバチのハチミツ「里山の恵み」(税込1,300円)です。
春になると、里山でたくさん獲れる田上町のたけのこ。エグ味が少なく、香りが高いと評判です。そんなたけのこを水煮にして誰でも食べられるようにした商品。家に帰ってからも田上町を楽しめそうな一品ですね。
 
もう一つは、田上町の野生のミツバチが様々な草木の花から集めたハチミツです。通常は規格化された巣箱を使って採蜜しますが、このハチミツは野生の蜜だけ。大変貴重なハチミツです。里山の魅力を凝縮した一品。ぜひご家庭で楽しんでみてください。
 

四季折々で楽しめる椿寿荘で、ゆったりとした時間を

椿寿荘は、紅葉の季節だけでなく、春夏秋冬それぞれの季節で楽しめます。これから訪れる冬の季節でも、美しい雪景色が目の前に広がるそう。来る度に新しい景色で出合える椿寿荘にぜひ足を運んでみませんか?

椿寿荘

住所:新潟県南蒲原郡田上町大字田上丁2402-8
営業時間: 9時~16時
休館日:年末年始、毎週水曜日(10月、11月を除く)
料金:大人:400円(300円)、小人:300円(200円)
※( )は団体20名様以上

この記事を書いた人
madoka

新潟県在住ライター。旅での気づきを日常に持ち帰ってもらえるように、地域の人や暮らしも含めて伝えるようにしています。

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