「口いっぱいにイチゴを頬張りたい」 新潟ならではの食の可能性を広げるタカギ農場の取り組み/新潟市


2021年06月22日 8109ビュー
みなさん、こんにちは。
 
“新潟の食”と聞いて、何を思い浮かべますか。きっとお米とお酒ですよね。日々の食卓と並び、また広がる一面の田んぼと畑の光景から紐づいて思い出されるでしょう。
 
ライターの水澤自身は農家の子どもに生まれたこともあり、お米づくりに親しみを持ちつつも他にもたくさんの特産となりえる食が身近にあったからこそ、その魅力を伝えていきたい。
 
今回訪れたのは、新潟市北区にある『タカギ農場』と併設する農家レストラン『ラ・トラットリア エストルト』。観光農園『イチゴ園』でのイチゴ狩り(2月末から5月末まで)も運営し、産地直食を掲げる農業生産法人有限会社高儀農場の代表である高橋真之介さんに食の可能性と想いを伺いました。

……その前にイチゴを食べにいこう!

『タカギ農場』で越後姫を食べ尽くす

はじめに、越後姫を見に観光農園『イチゴ園』へとお邪魔しました。
 
農場の近くには日本海から流れる阿賀野川と新井郷川があり、水源豊かな土壌が育まれています。イチゴ園で採れた越後姫は、イチゴ狩りシーズンには園内で収穫ができ、その場で食べることができます。また、お隣の農場で育てられるフルーツトマトなどの野菜は朝に収穫、その日のうちにお隣のレストラン『ラ・トラットリア エストルト』で提供されます。
(越後姫は日光が差しやすいビニールハウスで育てられている)
数ある品種の中でも特に甘みが強く、果肉が柔らかくてジューシーなのが特徴の越後姫は、新潟のイチゴとして1996年に品種登録されました。表面からも滴り落ちそうなみずみずしい艶は水が豊かな新潟ならではであり、タカギ農場では1999年から栽培して観光イチゴ園を始めました。
 
翌2000年には、タカギ農場の理念である産地直食を掲げるレストランを立ち上げるなど採れたての本物の美味しさを追求してきたのです。
 
では、農家レストラン『ラ・トラットリア エストルト』に移動し、実食のお時間です!
[ 12種類農場サラダ レギュラーサイズ 385円 ]
 
1985年から農場で育て、市場に広めてきたフルーツトマトを使ったサラダを。
[ 本日のパスタ 〜自家製フォカッチャパン ドリンク付き〜 1320円 ]

自慢のトマト100パーセント使用の濃厚トマトソースと食感の良いアスパラガスを使用した日替わりパスタランチを。
[ 越後姫づくしデザート4種盛り合わせ 1980円 ]

お待ちかねのいちごを。
いちごイチゴを。
いちごイチゴ苺をいただきました。ごちそうさまでした。
 
越後姫を一口食べるとあふれんばかりの果汁。甘味だけではなく、ほどよい酸味が口いっぱいに広がるからこそ、何度も何度も口に運びたくなる味です。
 
加えて、アイスやジャム、クリームと越後姫が持つ素材を何層にも味わうことができるため、まるで口の中で合奏曲が奏でられているよう。
 
あの料理もこの料理も、農場で育てられた食材を活かしたメニューです。他のメニューも知りたい方は公式サイトをご覧ください。
*季節によってメニュー内容は変更になります。

産地直食にこだわる想いを代表に聞く

百聞は一見にしかずならぬ、一食にはかなわない。

実際に足を運んでタカギ農場の食材たちの鼓動を感じてほしいと考えつつこれまでのお話を踏まえて、今回料理を提供してくださったタカギ農場代表の高橋真之介さんに産地直食の想いを伺いました。

ーー越後姫をはじめ、食べれば食べるほど幸せの余韻にひたれる時間をありがとうございました。産地に訪れて、その場で食べるスタイルは理にかなっているかと考えますが、いつ頃から始められたのでしょうか。

高橋:もともとは創業者で父の高橋治儀の「お客さんの口に入るまで責任を持って(農業を)やりたい」という想いが根本にあって。

1989年に自宅車庫での直売所開店から始まり、2000年にはビニールハウスでレストラン『エストルト』開店、と父の想いが形となっていきました。

しかし、ビニールハウスでレストラン営業をすることが農地法上で問題となり、行政と協議した結果、休業することとなりました。

ーーむずかしい判断を迫られたのですね。

高橋:弊社のフルーツトマトはすでに流通はしていましたが、「トマト以外にも野菜やイチゴも生産者とお客様が直接顔を合わせられる産地で食べてもらいたい!」という想いはずっと変わらずにありました。

ただ、当時から来てくださった子ども連れの親御さんやおじいちゃん、おばあちゃんが休業してもなお足を運んでくださって……10年ぐらい続いたのかな。

ちょうどその頃、2016年に新潟で国家戦略農業特区のお話があって、じゃあ改めてレストランを立ち上げようと考えて現在のラ・トラットリア エストルトが誕生したのです。

ーーこれまで通ってくださった方にもうれしいお知らせでしたね。レストランの料理人として食材と向き合っている高橋さんの姿を拝見しましたが、農業ではなく敢えて料理を提供する側にいるのはなぜでしょうか。

高橋:私は長男ですが笑 17歳のときに先ほどお伝えしたビニールハウスのレストランがオープンして、父が手伝ってみてはどうかと。幼かったせいか農家に興味がなかったものの料理にはまって、休業するまでずっと手伝いをしていました。

その後、新潟市のレストランで弟子入りを経たあと、タカギ農場で自家製ソーセージを作っていて、ソーセージの担当者が離れるタイミングで父に「(自家製ソーセージづくりを)引き継いでくれないか?」と。

だから、レストランが休業中でもお客様が来てくださるのは間近でみていましたので、料理人として今もみなさんを大切にしていきたいのです。

ーー高橋さんはイタリアンの料理人として、また代表として産地で一生懸命作られた野菜や越後姫をどうお届けしていますか。味の工夫というか。

高橋:お客さんの口に入るものにはまず責任を持つこと。私たちの経営理念でもあります。

例えば、越後姫はイチゴの中でも特に果肉が柔らかく傷つきやすいので、採れたてをそのまま産地で食べたほうがおいしいに決まっていますよね。フルーツトマトもそう。隣で栽培しているからこそ、他から仕入れたものよりも新鮮で、何よりも安心で安全な野菜を提供できるんです。生産者ならではですね。

だから味付けはよりシンプルに。

フルーツトマトのジューシーさを最大限に活かすために、ピッツァは薪窯で焼いています。また、サラダにおいてはドレッシングをつけなくてもそのまま食べられるほどなので、敢えてオリーブオイルや少量の塩で和えたものを提供しています。結果として、妊婦の方や食に気をつけている方でも安心して召し上がってもらえるんです。

ーー本当に産地直食を体現されているのですね。今後の展開についても教えてください。

高橋:新潟は雪が多いため、どうしても農業は他県に比べて弱いとされています。ただ、野菜や越後姫の美味しさをより一層活かす産地直食はそのままに、一歩進んだ食べ方のご提案はできますので。来年度のイチゴ狩りもそう、体験を活かしながら伝えていきたいです。

終わりに

今回タカギ農場に訪れてみて、新潟はさまざまな食材の産地であって食そのものの可能性を広げてくれる地域だと再認識しました。

また、高橋さんが加えて話した「農家なら産地直食のような形を行うのが一番いい」。その言葉を聞いた私は、農家さん自身も自分たちが丹精込めて育てたものを誰が食べているかを知ることで、明日からの農業への意欲につながってくるものだと気付かされました。

食べる側も作る側も。お互いの食への想いに触れられ、深められるタカギ農場の産地直食への取り組み。これからも、私は食べ手としてお邪魔しよう!

(※すべて税込価格)
タカギ農場|農家レストラン ラ・トラットリア・エストルト

タカギ農場|農家レストラン ラ・トラットリア・エストルト

住所:〒950-3134 新潟県新潟市北区新崎2757番地
営業時間:AM11:00〜PM3:00(ラストオーダーPM2:30)
定休日:火曜日(祭日除く)
電話番号:025-259-8000※ご予約は電話受付
Webサイト:http://www.fruitstomato.com/

タカギ農場

この記事を書いた人
水澤 陽介(みずさわ ようすけ)

新潟県生まれ、東京、沖縄を経て地元新潟にUターン。2021年2月、三条市の中央商店街に本屋「SANJO PUBLISHING」を立ち上げ、“まちを編集する本屋さん”をモットーにまちの魅力を集め、届けています。 まちを編集する本屋「SANJO PUBLISHING」(https://note.com/ncl_sanjo