【珠玉のコース料理×ペアリング<第4弾>】 西大畑町のオステリア バッコで、新潟食材を使ったイタリア料理を満喫/新潟市


2022年08月24日 6631ビュー
こんにちは。ライター&カメラマンのリョウヘイです。

珠玉のコース料理×ペアリングを巡る旅。シリーズ第4弾は新潟市中央区西大畑町にある、オステリア バッコさんです。 「バッコ(BACCO)」という店名は、神話に登場する酒の神様の名前から取ったものなのだそう。

こちらでは、昼・夜共にコース料理のみを提供しており、イタリアワインを豊富に扱っているのだそうです。
どんな料理とお酒が登場するのでしょうか?さっそく行ってみましょう。

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異国感あふれるイタリアンレストラン

西大畑町と言えば、新潟市中央区の高台に位置する格式高いエリア。旧齋藤家別邸や砂丘館といった歴史的な建築物が点在しています。
オステリア バッコさんがあるのは西大畑町の斜面を登るカーブに面した建物の1階部分。

入口前のテラスにはソファやテーブルが並んでおり、ヨーロッパの旧市街を切り取って来たかのような趣きを感じさせ、夜になるとまた違った風情になります。
お店のレースのカーテンから漏れる温かい光がきれいでワクワク感を高めてくれます。
入口に近づいてみましょう。
新潟市内とは思えない異国情緒…!ドアを開けると目の前に広がるのがこちらの空間です。
アンティーク家具が配されたインテリア。上質で温かみある雰囲気は特別な日のディナーにふさわしいですね。
テーブルは中央に1卓、窓側に1卓、壁側に3卓、程よい間隔で配されています。
入口のそばにはワインセラーの入口があります。そして、その隣にはカーテンで仕切れるもう一つの客席が。
こちらは個室風の空間。4~5人のグループで食事をするのにちょうどよさそうですね。

オステリア バッコはオーナーシェフ三善将則さんが、ソムリエ資格を持つ妻の渚さんと一緒に営んでいるお店。
元々この場所で将則さんのお父様がカジュアルなイタリア料理店を営んでおり、2011年に引き継いでから店名はそのままに、新しいオステリア バッコを始めたのだそうです。

こちらがオーナーシェフの三善将則さん。
将則さんは1976年生まれ。イタリア料理人だったお父様の影響を受け、高校卒業後に東京のイタリアンレストランで修業を始めたのだそうです。2005年に妻の渚さんとイタリアへ渡り、3年間修業。帰国後に東京のレストランでシェフを務め、2011年に新潟に戻りオステリア バッコを始め現在に至っています。

「料理で大切にしているのは、素材のおいしさを活かすシンプルな調理です。そのため、塩加減や火の入れ方がとても重要になってきます。塩一つまみ違うだけで印象が随分と変わってきますし、一見シンプルなんですが、家庭では真似ができないような火の入れ方をしています。私が出す料理はクラシックなスタイルが多いですが、そういったことに気を遣って料理をしています」と将則さん。
また、3年間のイタリアでの修行では、ウンブリア州トルジャーノ、エミリア・ロマーニャ州ボローニャの2つの町で働いたそうです。
「トルジャーノは海から離れた内陸の地域で、郷土料理の多くが肉料理でした。働いていたレストランでは魚料理も出していましたが、休日に同僚の家に遊びに行くと、振る舞ってくれるのは肉料理が多かったです。その家のおじいちゃんが生ハムやサラミを作っていたりして、そういうのを見せてもらえたのも面白かったですね。イタリアでは技術的なことも学びましたが、それ以上に、イタリア人が何を考えて料理を作っているのかや、家庭で食べられている郷土料理などの食文化、生活を感じられたのがいい経験になりました。それが今の私の料理のベースになっているのか、お客様から『イタリアで食べるイタリア料理のようですね』と感想を頂くことがあります」と将則さん。
お昼は4,510円(11:00までの要予約、最終入店13:00)と6,930円(前日までの要予約、最終入店13:00)のコース料理を提供。

夜は6,930円・9,680円(それぞれ前日までの要予約、最終入店19:30)、13,200円(3日前までの要予約、最終入店19:00)のコース料理を提供しています。

また、コース料理に合わせたペアリングワインを4,620円(前日までの要予約)で味わうことができます。
(上記金額は全て税込)

手間暇を惜しまない本格的なイタリア料理

それでは、夜に提供される9,680円のコースとイタリアワインのペアリング4,620円を味わわせて頂きましょう。

料理の前に最初にセッティングされたのがこちら。
ほぼ毎日焼いているという自家製のフォカッチャとチャバタに、スティック状のグリッシーニ、イタリア産のエクストラバージンオリーブオイルが並びます。

ローズマリーが練り込まれたフォカッチャはさっぱりとしていて、料理に合うのはもちろん、オリーブオイルを付けてずっと食べていたくなります。

一品目 南蛮海老のクスクス × バルバメト エクストラブリュット(プロセッコ)

一品目の料理は、いろいろな野菜のベビーリーフがたっぷり載ったサラダ風のクスクスです。からし菜やディルの花、ペッパークレスなどが入っており、香りやピリッとした辛味もあります。 その下の赤みがかったクスクスは、新潟産南蛮海老の頭を使って取ったスープで蒸したもの。南蛮海老の身も入っており、海老の香りとおいしさがたっぷり詰まった一皿です。枝豆も入っており、新潟の夏を感じられます。

それに合わせるワインは、イタリア北東部にあるベネト州のカジュアルなスパークリングワイン。酸味とリンゴのような甘みが特徴で、南蛮海老の甘いニュアンスに合わせているのだそう。スッキリと清涼感のあるワインで心地よいスタートになりました。

二品目 花ズッキーニのフリット × ポイエルエサンドリ ノジオラ(ノジオラ)

二品目は、新潟産のズッキーニの花の中に、新潟産のスズキ、ズッキーニの実、自家製ドライトマト、イタリア産ストラッチャテッラ(モッツァレラのようなクリーミーなチーズ)を詰めて揚げた料理。ソースはイタリアンパセリとレモン、アンチョビを使ったサルサベルデ。 なんともユニークな姿の料理ですが、イタリアでは定番のものなのだそう。チーズの塩味とアンチョビの香り、さまざまな具が溶け合うフリットなのでした。

それに合わせるのは、北イタリアのトレンティーノで採れる固有土着品種「ノジオラ」を使ったワイン。酸味が強く青リンゴのようなさっぱりとした風味が特徴とのことで、フリットを食べた後に飲むと、油分をスッと流してくれました。

三品目 穴子のアグロドルチェ × マリアボルトロッティ エリオビアンコ(ソーヴィニョン)

お次は、ウナギの蒲焼きのように見えますが、穴子を甘辛く煮た料理。アグロドルチェとは「甘酸っぱい」という意味のイタリア語で、甘いお酒とモストコット(ブドウ果汁を煮詰めた調味料)が使われています。煮汁とバルサミコを使って照り焼きのように仕上げているそうです。

下に敷かれているのは、新潟産の丸茄子をトマトで煮込んだもの。 実にふっくらとした穴子で、甘酸っぱさを山椒のような香りのスパイスが引き締めます。ふっくらとした身の秘密は、活き穴子を新鮮な状態で使うことなのだそう。

ワインはイタリア中北部のエミリア・ロマーニャ州で採れるソーヴィニョン・ブラン。果皮と一緒に醸造しているため、少しオレンジがかった色味になっているのだそう。アグロドルチェの複雑な風味に合わせて選ばれた銘柄です。

四品目 甘鯛のクロッカンテ × イルヴェイ ピノグリージョ(ピノグリージョ)

四品目も魚が続きます。甘鯛の鱗に油をかけ、弱火でパリパリになるように焼いた料理で、日本料理の松笠焼きのようです。ソースは、ハマグリと新潟県産の自然栽培のグリーンピースを使ったもので鮮やかな黄緑色が美しい一品。シンプルな味付けで、甘鯛の鱗のカリカリとした食感にふっくらとした身、優しい味わいのソースが一体になっています。

ワインは先ほどと同じエミリア・ロマーニャ州のもの。ピノグリージョという品種を皮ごと浸けて醸造し、ロゼワインのようにしているそうです。ハマグリとグリーンピースのちょっとした苦みにピノグリージョの苦みを合わせることで、料理を邪魔しないようにと選んだもの。料理に同調し寄り添ってくれるワインです。

五品目 サマートリュフのタヤリン × ヴァイラ ランゲロッソ(ネッビオーロ主体)

お次はパスタの登場です。タヤリンという自家製の細い平打ちのパスタをバターとパルメザンチーズであえ、イタリア産サマートリュフをかけたシンプルな料理。イタリア北部ピエモンテ州のアルバという町でよく食べられている郷土料理なのだそう。バター、チーズ、トリュフの豊かな香りをじっくりと堪能できるシンプルなパスタです。

ワインはピエモンテ州で採れるネッビオーロを主体としたもので、同じピエモンテ州の郷土料理と合わせて選んだそうです。酸味もありつつ、スーッと溶けていくような程よいタンニンの苦みが、料理となじんで流してくれます。

六品目 カヴァテッリ ジロール茸のラグーソース × オルマンニ キャンティクラシコ(サンジョヴェーゼ主体)

もう一つパスタが続きます。こちらも自家製で、カヴァテッリという南イタリア発祥のショートパスタです。赤ワインで煮込んだ牛肉とフランス産のジロール茸とをあえた料理で、しっかりと弾力がある貝殻のようなパスタに、濃厚なラグーがよく合います。

ワインはイタリア中部のトスカーナ州でつくられているサンジョヴェーゼを醸造したもので、このサンジョヴェーゼはイタリアで最も多くつくられている赤ワインブドウ品種なのだそう。 キャンティクラシコはタンニンが強めで、木樽の香りを感じさせるのが特徴。それらが肉の甘みや濃い味わいになじみます。

七品目 蒲原牛のアロスト × サンピエトラーナ1952(ネグロアマーロ・モンテプルチャーノ)

パスタが2品続いた後にいよいよ肉料理です。こちらは阿賀野市で育てられた蒲原牛のロースト。しっかりと厚みのある牛肉は、外側はしっかりと焼き固められ、中は柔らかく美味。パルミジャーノチーズを使ったソースも味わい深い一皿です。ジロール茸やモロッコインゲン、ズッキーニやトウモロコシなどの野菜が添えられています。

この料理に合わせる最後のワインは、南イタリア・プーリア州の土着品種ネグロアマーノとイタリア全土でつくられているモンテプルチャーノを使ったもの。どちらもブドウをぎゅっと凝縮したような濃い味わいが特徴なのだそうです。樽の香りやチョコレートのような香りもあり、しっかりとした肉料理に合う赤ワインでした。

お口直しのグラニテ

肉料理を食べ終わったところで、お口直しのグラニテ(シャーベット状の氷菓)。こちらはタイムやローズマリーなどのハーブにレモン、パスティス(アニスというスパイス入りのフランスのお酒)が使われたもの。お口の中をすっきりとさせて、デザートへと気分を切り替えます。

苺とマスカルポーネのパフェ

新潟県産のイチゴ「越後姫」にマスカルポーネチーズ、焼きメレンゲ、木イチゴのジェラートを組み合わせたかわいらしいデザートが運ばれてきました。越後姫の甘さ、マスカルポーネのコク、木イチゴジェラートの酸味…、あらゆるものが一体となった大人のパフェなのでした。

小菓子と食後のお飲み物

パフェを食べ終え、余韻に浸りながら最後のコーヒータイム。バーチ・ディ・ダーマ(「貴婦人のキス」を意味するお菓子)、リコッタチーズのタルト、ブルッティ・マ・ブオーニ(「醜いけどおいしい」という意味の焼き菓子)といったお菓子も将則さんの手作り。すべてイタリアの郷土菓子なのだそうですよ。

一層上質な時間を愉しめるお店へ

イタリア各地の食文化を伝える料理の数々に、北イタリアから南イタリアまでイタリア全土を表現するようなワインのペアリング。イタリアワインは北が軽やかなものが多く、南に行くほど濃くなっていくのだそうです。

「イタリアにはワインのブドウ品種が300以上あり、日本ではあまり知られていないものも多いです。地域によって異なるイタリアワインの特徴を知って頂けたらうれしいですね」とソムリエの渚さん。 最後にシェフの将則さんに今後の展望について伺いました。 「以前はアラカルトも提供していましたが、2022年から昼も夜もコース料理のみの提供に切り替えました。今後も一層ゆっくり過ごして頂けるレストランにしていきたいと思います」と将則さん。

東京・イタリアでの修業経験を持つ将則さんが手掛ける、新潟食材とイタリアの食文化を融合させた特別なコース料理を、イタリア各地のワインと共に味わう時間。それは、新潟とイタリアの2つの地域への興味が深まっていく特別な体験になることでしょう。
OSTERIA BACCO(オステリア バッコ)

OSTERIA BACCO(オステリア バッコ)

住所:新潟市中央区西大畑町591-1 異人池ハウス103
電話:025-211-4994
営業時間:12:00~13:00入店(15:00閉店)、18:00~19:30入店(22:30閉店)
定休日:火曜日・水曜日

エリア

新潟・阿賀エリア

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この記事を書いた人
リョウヘイ

ライター・カメラマン・編集者。1983年生まれ、新潟県五泉市育ち。
建築学生時代に旅に目覚め、20代の頃に25カ国を旅行。東京都内の出版社で海外旅行情報誌の編集に携わった後、新潟へUターン。
2018年に独立。日本の地方から世界の辺境まで、旅をしながら多様な文化と暮らしを探るのがライフワーク。