トリエンナーレ以外の年も楽しめる!大地の芸術祭「2023年の越後妻有」/十日町市・津南町


2023年07月12日 3797ビュー
3年に1度開催の「大地の芸術祭  越後妻有アートトリエンナーレ」。コロナ禍で1年延期され、2022年に大々的に開催されました。実は私は大地の芸術祭の大ファンで、数えてみたら昨年はなんと8回も出掛けていました。
その大地の芸術祭ですが、今年も4月から11月まで通年プログラム「2023年の越後妻有」が開催され、多くの作品が公開されています。中には新企画展、新展開のものもあるので、昨年トリエンナーレに参加した方も、楽しめる内容になっていますよ。
では早速行ってみましょう!

磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]

まず初めに訪ねたのが、中里エリアにある磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]。こちらでは『[SoKo]:特別企画展示』が開催中です。
作家の磯辺行久さんは、越後妻有の大地を可視化するというテーマを掲げ、2000年の第1回のトリエンナーレから、ずっと参加し続けている作家です。
かつての信濃川の川筋を約600本の黄色い旗で再現した「川はどこへいった」など、まさに大地そのものをアートとして、地域に根ざした作品を発表してきました。磯辺さんの芸術祭参加作品を年代順に辿ることができます。
2022年のトリエンナーレでは「消えた集落 閉村の碑からよみとるもうひとつの理由」というプロジェクトが、旧松代町の小貫集落で展開されました。そこで使用した四寸柱を美術館内に運び込んで展示。いかにダイナミックなアートだったのかということが伝わってきました。
2階の展示コーナーでは、その杭が実際にどのように使われたのかが分かる展示があるので、ぜひ見比べてみてください。
磯辺さんは現代アートのレジェンドのひとり。今までどのような作品を手掛けてきたのか、常設展でたっぷり鑑賞できます。
2階の展示室では、いままで芸術祭に参加してきた作家たちの作品を見ることができます。こちらはジョゼ・デ・ギマランイスの作品。妻有広域のサイン、まつだい雪国農耕文化村センター「農舞台」のサインなどを手掛けた方です。
ほかにも「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」の田島征三さん、写真界のレジェンド・森山大道さんなど、ビッグネームの作品がずらりと並んでいます。

磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]

住所:十日町市角間未1528-2(清津峡渓谷トンネルのすぐそば)
期間:2023/4/29~11/5の土日祝
開館時間:10:00-17:00(10・11月は16:00まで)
料金:一般500円、小中250円(常設作品含む)

越後妻有「上郷クローブ座」

次に向かったのは、長野県境近くの津南エリアにある「上郷クローブ座」です。
2012年に閉校になった旧津南町立上郷中学校が、15年の芸術祭からパフォーミング・アーツの拠点に生まれ変わりました。
ここには鑑賞者が実際に参加者となって、楽しめる展示が待っています。タイトルはずばり「農具は楽器だ!」。手掛けたのは「岡淳+音楽水車プロジェクト」です。プロジェクトを率いる岡さんはプロのジャズミュージシャンです。
会場は3階にです。タイトルの通り、置かれている楽器はすべて、かつて地元で農具として使われていたもの。岡さんは「私はジャズミュージシャンなので、制作も即興的で、出会った農具からインスピレーションを得ながら」作ったと語っています。
こちらの楽器は昨年のトリエンナーレでは津南中等教育学校の体育館などに展示され、生徒たちと一緒に音楽を奏でるライブイベントも行われました。
奥の教室に置かれた楽器は自動演奏で動きますが、手前の方に置かれたものは鑑賞者が実際に触れて演奏することが出来ます。童心に帰って、たっぷりと楽しみました。
7月29日以降は、上郷クローブ座に隣接するギャラリー「香港ハウス」がオープンします。こちらでは香港のアーティストチーム、ツールボックス・パーカッションによる企画展「再聴:山の音」が行われます。音を発するオブジェが配された実験的な作品になるようです。初日にツールボックス・パーカッションによるオープニングパフォーマンスも予定されています。
(上の写真は2022年のもの)

越後妻有「上郷クローブ座」

住所:津南町上郷宮野原7-3
期間:2023/4/29~11/5の土日祝
開館時間:10:00-17:00(10・11月は16:00まで)
料金:4/29~7/28:一般400円、小中200円(上郷クローブ座)/7/29~11/5:一般600円、小中300円(上郷クローブ座+香港ハウス)

ギャラリー湯山

松之山エリアに移動して訪ねたのは「ギャラリー湯山」です。2006年に実施した空家プロジェクトの「湯山の家」を常設のギャラリー(冬期休業)として、作品発表を行っています。
運営の中心となっているのは、1960年代から70年代にかけて活動していた前衛美術グループ「新潟現代美術家集団GUN」の前山忠さんです。
取材時には美術家・石川雷太さんの企画展『進化・革命・幻想』が行われていました。鋭い言葉で問題提起をする作品の数々に思わずどきり。突き刺さる言葉を胸に、屋外に出てみると、こちらにも言葉が……。
石川さんの知人である、真言宗の僧侶が書いた文章から抜粋した言葉で「全ての存在は自然、宇宙から出てきたもので、またそこに帰っていく」という内容の文章が書かれています。石川さんは「言葉が書かれたガラスの向こうに自然そのものが見える。元々ある自然そのものを作品の一部として取り込んで、越後妻有の大地を体感しながら、作品について思考してほしい」という思いを込めたそうです。

7月から11月にかけて3本の企画展が予定されています。6月の企画展同様に、ギャラリーの外に見える松之山の自然そのものも、アートに取り入れたダイナミックな作品も展開されるようです。こちらも楽しみですね。

ギャラリー湯山

住所:十日町市松之山湯山446
会期:7/8~7/30/8/11~9/24/10/7~11/5の土日祝
開館時間:10:00-16:00
料金:共通チケット、もしくはギャラリー湯山個別鑑賞料(一般300円、小中学生150円)

黄金の遊戯場

今回訪ねた中で個人的に一番楽しみにしていたのが、松代地域にある豊福亮さんの作品「黄金の遊戯場」です。こちらは古民家をまるごとアート作品にしてしまった大胆な作品。日用品や工業品をすべて金色に塗装し、家中を飾り付けました。そこにさまざまな遊具を置き、鑑賞者はアートを体感しながら実際に遊ぶこともできます。
今年新たに設置された遊具はこちら。なんと屋内に釣り堀が出現!。池にいるのはおもちゃの魚ですが、実際に水が張られています。巨大なUFO型の乗り物が浮かんでおり、そこに乗り込んで釣り糸を垂らすという仕掛けです。
階段が小さくて急なので乗り込むときには足元に気を付けてください。宇宙船に乗って、不思議空間で遊んでいるような気分になれました。
この圧倒的な世界観を味わうだけでも一見の価値ありです。1階から2階まで、全ての部屋をぜひくまなく観て回ってみてください。

黄金の遊戯場

住所:十日町市松代2061
期間:2023/4/29-11/5の土日祝
開館時間:10:00-17:00(10・11月は16:00まで)
料金:共通チケット、または個別鑑賞券一般300円、小中150円

鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館

最後に訪ねたのは十日町市エリアの鉢集落にある、鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館です。こちらは廃校になった小学校の木造校舎を美術館にしたものです。
絵本作家の田島征三さんの『学校はカラッポにならない』という物語が校舎いっぱいに広がっています。みんなの笑い声を食べるトペラトト、夢をぺしゃんこにするドラドラバンなど、田島さんの絵本に出てきた奇妙で可愛いオバケたちが校舎のあちこちに潜んでいます。
取材時は、春の企画展覧会「木ノ実がうたう アートはおどる」が展開中(7/2まで)。木ノ実を題材にした絵本や作品を発表し続けてきた田島さんの、新たな作品を観ることができました。
作品は屋内に留まりません。外にはビオトープがあり、その周りにもたくさんのアートがありますよ。

鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館

住所:十日町市真田甲2310-1
期間:2023年4/29-11/27(祝日を除く火・水曜休館)
開館時間:10:00-17:00(10・11月は16:00まで)
料金:共通チケット、または一般800円 小中学生400円

お楽しみグルメ情報

大地の芸術祭のもうひとつの楽しみが、地元食材などを使ったおいしい食べ物たちです。ジャンルもさまざま。その中から今年の新メニューをいくつかご紹介します。
まずは越後妻有里山現代美術館MonET(モネ)1階コミュニティスペースに期間限定オープンのカフェから「TSUMARI BURGER」で、季節ごとに内容が変わります。こちらは夏メニューの「妻有ポークとかぐら南蛮タルタルのダンプリングバーガー」です。
築100年を超える古民家「うぶすなの家」では、イタリアンのシェフが手掛けたメニューを展開。名付けて【うぶすなハイカラ定食】です。いちばん人気は写真の「からりとカツレツ」。カツの周りに添えられた丸くて可愛らしいものは、野菜のソースです。ほかに「ふっくらハンバーグ」、お肉不使用の「じゅわっと生揚げ&車麩」の3種があります。

新企画やイベントが続々

7月からMonETでは、今期より新たな取組として、長期にわたる連続企画展が始まります。4名のゲストキュレーターを迎え、それぞれが今後の美術をひらいていくアーティストを選び、2か月ごとに個展を行うという趣向。
トップバッターは、美術評論家の椹木野衣セレクト。総勢9名のグループ「カタルシスの岸辺」による『マテリアルショップ カタルシスの岸辺 十日町店 ×「死蔵データGP 2022-2023」記録展』が行われます。
動画、画像、テキストデータなど、これまでに収集した顧みられることのなかった死蔵データを、アート作品として一挙公開。さらに、死蔵データ買い取り企画も行われるそうです。おそらく大地の芸術祭史上初となる内容の企画展です。
果たしてどのような盛り上がりを見せるのでしょうか。
ちょうど夏休みが始まる頃の7月29日から多くの新企画が追加される模様。
絵本と木の実の美術館では、昨年惜しくも亡くなったおおたか静流さんと、田島征三さんによる展覧会「シズリン!いつまでもここにいてね- Ohtaka Sizzle with Ehon to Kinomi-」が、奴奈川キャンパスでは奴奈川の空を体験する「上を向いて歩こう」が行われます。同キャンパスでは10月に「おにぎりのための運動会!」も開催予定。

それにしても、本当に何回行っても楽しめるのが「大地の芸術祭」だと、しみじみ実感しました。

共通チケット

すべての作品を1回ずつ鑑賞できる。(2回目のみ、共通チケット提示で個別鑑賞料金半額)
※一部対象外作品あり

一般(高校生以上) 2,500円
小中学生 1,000円
小学生未満 無料

販売・有効期間
2023年4月29日〜11月5日

大地の芸術祭「2023年の越後妻有」

この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中