映画『峠 最後のサムライ』のロケ地をめぐってサムライ気分を満喫No.4 市島邸・新発田城・菅谷不動尊菅谷寺/新発田市


2021年10月07日 8620ビュー
映画『峠 最後のサムライ』のロケ地をめぐる企画、最後となる4回目は新発田市内の3か所、市島邸新発田城、そして菅谷不動尊菅谷寺(すがたにふどうそんかんこくじ)を訪ねました。それでは早速、市島邸からご紹介したいと思います!

まずは市島邸について知るために展示館へ!

市島邸は8,000坪余りという広大な敷地に建てられた豪農の館です。かつては旧水原町で暮らしていましたが戊辰戦争で家が焼失し、明治時代に現在の場所に屋敷を構えました。表門や茶室、説教所など十二棟一構が1962年に県の文化財に指定されています。
まず向かったのは資料館です。かつては米蔵として使われていた場所で、当時はおよそ3,000俵のお米を収納していました。
展示されていた明治23年の多額納税者番付をみると、市島邸はなんと全国2位! その財力を災害支援、道路整備、貧しい人への救援などに使って地域貢献をしてきたそうです。そのような家の歴史や当時の暮らしぶり、交友関係が分かるような資料が展示されています。

渋沢栄一と大隈重信

ここで旬な展示を見つけました。今年(2021年)の大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一の書です。読み方は「開物成務(かいぶつせいむ)」。これは「人知を開発して、事業を完成させる」という意味だそうです。
他にも大隈重信が市島邸を訪ねたときの写真も展示されていました。じつは分家筋に当たる市島春城(本名・謙吉)は大隈が早稲田大学を創設するときに援助を行い、図書館長など大学の要職を歴任した人物なのだとか。渋沢に大隈、幕末の偉人の息吹が感じられる展示室でした。(不定期で入れ替えがあります)

撮影が行われた水月庵へ

それでは邸内へと参りましょう。本座敷と主屋をつなぐ渡り廊下は緑豊かな中庭に面しています。座敷に向かう途中にある水月庵で撮影が行われました。
池の上に建つ水月庵は当主が自然を楽しむほか、賓客の接待に充てられた場所でした。映画の撮影は渡り廊下側の中庭ではなく、反対側の池の方から行われました。スクリーンにはこのようなビューで登場しますので、要チェックですよ。
撮影されたのは、松たか子さん演じる河井継之助の妻・すがが、香川京子さん演じる継之助の母親と共に過ごすシーンです。私も登場人物になりきって、しばし風景を眺めてみました。
こちらは邸内唯一の洋間となる書斎です。書棚には図書館のように分類ラベルが貼られた本がずらりと並んでいます。じつはかつて市島文庫として地域住民に本を貸し出していたのだとか。現在は本の閲覧はできませんが、背表紙からどんな本が読まれていたのかが分かります。
家族の住まいとなっていたスペースは襖が全て取り払われ、93畳の大広間となっていました。ここは絵になる場所のため、結婚式の撮影などで利用する方もいるそうです。
ここの隣りにある仏間でも撮影が行われました。
ここで乙女心を刺激されるものを発見しました。天井から吊された照明の傘です。デザインがどれもこれもレトロで可愛い!ぜひそちらもチェックしてみてくださいね。

庭園でも撮影

邸内を一通り見て回った後は庭園を散策しました。
ここでは池のほとりの灯籠のそばに、継之助の妻・すががひとり佇む場面が撮影されました。
竹林では田中泯さん演じる継之助の父・代右衛門が、刀の素振りをするシーンを撮影。この空間だけまるで京都・嵯峨野のような雰囲気を漂わせています。ちなみに庭園内には他に梅林もあり、3月には花が咲き誇りきれいだそうです。

4シーンもの撮影が行われた市島邸。来館者のなかには「映画の公開が待ちきれなくて先に(ロケ場所を)見に来ました!」という方もいるそうです。

■市島邸
 住所:新潟県新発田市天王1563
 TEL:0254-32-2555
 開館時間:午前9時から午後5時(4〜11月)/午前9時から午後4時30分(12〜3月)
      いずれも受付は閉館30分前まで
 休館日:水曜日(祝日の場合は翌日)/12月29日〜1月3日
 入館料:大人620円/小・中学生310円/未就学児は無料

いざ、新発田城へ

次に向かったのは新発田城です。こちらは表門、旧二の丸隅櫓が国の重要文化財に指定されています。
ドン!と太鼓の音が聞こえてきそうな立派な門構えですよね。こちらが重文の表門になります。
表門をくぐると、しゃちほこが2体置かれています。これは三階櫓の屋根に載っているものと同じものだそうです。この2体、パッと見では同じに見えるのですが、実は3か所ほど違いがあり、オスとメスの対になっているのです。どこが違うのか、ぜひ現地で確認してみてください。
映画の撮影が行われたのはこの表門の2階です。継之助と永山絢斗さん演じる松蔵が会話をする場面に登場します。ここには歴代新発田藩士の肖像画が飾られていたり、三階櫓の復元模型があったり、城や藩の歴史についての展示がたくさんあります。まずはこちらを見学してから散策することをおすすめします。
新発田城は桜の名所として知られており、4月には「新発田城址公園桜まつり」が行われます。春にまた来てみたいと思いました。
ぜひ足を延ばして見てほしいのが三階櫓のしゃちほこです。丁字型の屋根に鯱(しゃち)が三匹載っているのですが、これが全国唯一なのだそうです。ただ三階櫓が建っているのは自衛隊の敷地内!なので、中に入ることはできません。いったん表門から外に出て、お堀沿いにグルぐるりと回ると「新発田城」と書かれた石碑があります。この石碑が櫓の正面に来る位置からだと、3匹を一度に見ることができますよ。

■新発田城
 住所:新潟県新発田市大手町6
 TEL:0254-22-9534
 開門時間:午前9時から午後5時(11月のみ午後4時30分まで)
 開門期間:4月〜11月
 入場料:無料

800年以上の歴史を持つ古刹、菅谷不動尊菅谷寺

最後にご紹介するのは菅谷不動尊菅谷寺です。源頼朝の叔父・護念上人(ごねんしょうにん)により文治元年(1185年)に創建されたお寺で、世にも珍しい「首だけの不動明王」像をお祀りしています。
護念上人は比叡山で修業をしていましたが、平家から命を狙われ逃げることを決意します。そのときに「私を連れていくように」と不動明王さまからお告げをもらうものの、仏像が大きくそのままでは持てなかったので、やむなく頭だけを箱に入れて出奔したのです。
全国をさまよった護念上人は越後へとやって来ました。一休みしようとしたとき、本尊の入った箱を地面に置くわけにもいかず、取りあえず近くにあった松の枝に掛けました。さて出発しようと思ったとき、なぜか箱がビクとも動きません。そこで護念上人は「この場所がご本尊安住の地だ」と悟り、菅谷寺を開山したのだとか。
上の写真がそのときの様子を絵にしたものです。ちなみに松があったと伝わる場所とお寺は少し離れているそうです。
本堂の前には香炉が置かれています。お線香をいただき1束奉納しました。なおこのカラフルな紙は巻き付けたままでいいそうです。
焚いた煙を体の気になる箇所に浴びると良いそうです。どこにしようか迷いましたが、とりあえず頭と顔にかけておきました(笑)。
本堂で目にすることができる仏像は、上人が持って来たものではありません。上人が運んだ頭だけの像は秘仏として、卯年・酉年のゴールデンウィーク頃に2週間ほどご開帳となります。次回は2年後の令和5年の予定です。
また毎年4月28日には「柴燈護摩(さいとうごま)」が行われます。これは火渡り神事でおおよそ11時頃から行われ、誰でも見学可能だそうです。
本堂に向かって左の広場周辺で映画の撮影は行われました。兵士たちが集まっているシーンで、エキストラも多数参加。その日はお寺の周りに幕末の兵士の格好をした人たちがたくさんいたそうです。

映画『峠 最後のサムライ』は新型コロナウイルス感染症の影響で何度も公開が延期になりました。2022年には無事にスクリーンで観られるといいですね。

■菅谷不動尊菅谷寺
 住所:新潟県新発田市菅谷860
 TEL:0254-29-2022
 拝観時間:午前9時〜午後4時
 入場料:無料

市島邸・新発田城・菅谷不動尊菅谷寺

この記事を書いた人
和田明子

長岡市のリバティデザインスタジオで、夫とともにグラフィックデザインやコンテンツ制作を行う。アート、映画、文学、建築、カフェ巡り、旅行、可愛いものが大好き。ウェブマガジン「WebSkip(https://webskip.net/)」も細々と更新中