【珠玉のコース料理×ペアリング<第7弾>】 メニューは15,000円のコース一本!アトリエキャンティが繰り出すイノベーティブ・フュージョン。/新潟市


2023年01月01日 3988ビュー
こんにちは。 ライター&カメラマンのリョウヘイです。

珠玉のコース料理×ペアリングを巡る旅。シリーズ第7弾はJR新潟駅より徒歩3分の場所にあるアトリエキャンティさんです。

アトリエキャンティはオーナーシェフの川又真さんが2016年にオープンしたモダンイタリアンレストランで、オープン当初は夜だけでなくランチ営業をしたり、コース料理以外にもアラカルト、飲み放題など多彩なメニューを展開していました。

しかし、新型コロナウイルスが蔓延し始めた2020年3月にお店を休業。 その後は同店舗内でカヌレブランド「Canele de CHIANTI(カヌレドキャンティ)」を設立するなど、早々にレストランではない分野に舵を切ります。

2021年4月にカヌレドキャンティを新潟市中央区女池神明に移し、2021年10月、1年半ぶりにアトリエキャンティを再開しました。 それを機に、以前は24席で営業していたのを改め、カウンターの6席のみとし、ランチもやめて夜営業のみとなりました。

お店のスタイルは完全予約制とし、選べる料理は15,000円(税込)のコース料理+ドリンクのセットのみに。コース料理の開始時間も18:00スタートに定めるなど、実にシンプルな仕組みで営業を行っています。

そんなアトリエキャンティ、どんなお店なのでしょうか?行ってみましょう!

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カウンター6席のみの隠れ家レストラン

お店があるのは新潟駅北口を出て右へまっすぐ100m程進んだところ。

途中左手にあるセブンイレブン、ホテルシングルイン第1を過ぎ、新潟ターミナルホテルを過ぎて20m程進んだところの右側に入口があります。

うっかり通り過ぎてしまいそうな小さな入口で、モルタル仕上げのグレーの壁と水色のドアが印象的です。 そのドアを開けたところがこちらです。
いくつかのテーブルが並んでいますが、こちらはウェイティングスペースとのこと。
以前はこちらのテーブル席も客席として使っていましたが、今は奥にあるカウンター6席だけを客席にしています。
こちらがカウンター席。全体の照明は落とし気味で、料理にしっかりと光が当たる照明計画がなされています。
すぐ目の前にはキッチンが広がっており、調理する様子を眺めながらここでじっくりとコース料理を堪能できます。

バルスタイルから、コース料理一本へ

川又さんは1986年生まれ、長岡市出身。高校卒業後に新潟市内の製菓専門学校で2年間学び、新潟市内のレストランに就職。そこでお菓子作りと調理の両方を経験しながら、副料理長として6年勤務したそうです。

その後市内の別のレストランで料理長として3年働いた後、2016年に独立してアトリエキャンティを開きました。

「高校生の頃、理数系の科目が得意で大学進学も考えていましたが、手に職を就けたいと思い製菓専門学校に行くことにしました。ものづくりも甘いものも好きでしたし、計量して科学的な根拠に基づいて作るお菓子の世界が理系の僕には魅力に感じたんです」と川又さん。

20歳の時から独立願望を持っていた川又さんは、30歳になる前に独立するという目標を持ち、レストランに就職しました。
「そこではパティシエを募集しているということで入社したのですが、料理人が足りていないということで、はじめの1年は調理を任されました。その後、パティシエと料理人の両方の経験を積み、27歳で別のレストランに移りました。その時にはそろそろ独立をと考えていたのですが、転職先のオーナーから『いろんなお店を見ることも経験になるよ』とアドバイスを受け、そこで3年間働いたんです。どちらもイタリアンでしたが、それまでの師匠のやり方とは異なるやり方を学べたことは実際にとてもいい経験になりました」。
そして2016年8月にアトリエキャンティをオープンします。

ちなみに「キャンティ」とは、イタリア・トスカーナ地方で生産されている赤ワインの名称で、一般家庭で飲まれる安価なものからミシュランの星付きレストランで出される1本数万円のものまで幅があるのだそうです。 店名には、「日常使いにも記念日にも訪れてほしい」という思いを込めたといいます。
「最初は何でもやろうとしていて、バルみたいなスタイルで営業を始めました。24席を稼働させ、ランチも深夜帯も営業をするスタイルです。当時からコース料理をやっていましたが、アラカルトも飲み放題プランもやりながら一定のクオリティを保つことに苦労をしていました。それに、コース料理を味わっているお客さんの横で、飲み放題プランの宴会が行われているのはどうなんだろう?というのもありました。僕たちが本当に作りたい料理をしっかりとしたクオリティで提供したいと考え直し、2021年10月のリニューアルオープンを機に完全予約制にして、18時からの15,000円のコース料理1本だけというスタイルに変えたんです」。
川又さんが手掛けるコース料理は、イタリアンの要素を含みつつも、全体としてはジャンルにとらわれないイノベーティブ・フュージョン。料理やドリンクには新潟食材をふんだんに使い、「普段見ている新潟の食材にこんな使い方があったんだ!」と思わせる提案を大事にしています。

では、料理12品+ドリンク10杯のコース料理、今回はその一部をご紹介させて頂きます!

一品目 鱧のかき氷 × スパークリングワイン+メロンジュース

一品目は、新潟産の鱧(はも)のかき氷。「夏の産卵期が終わり、鱧はこれから脂がのって一番おいしい時季になります。このかき氷は鱧をぶつ切りにしてだしをとり、それを凍らせて削ったものなんですよ」と川又さん。

その下には水分を取ってねっとりとした状態の新潟産アオリイカが隠れています。上にのっているのは塩とトマトのエキスで漬け込んだ自家製のイクラ、ピスタチオ、すだちの皮。

「僕たちは最初にこの料理をお出ししていますが、氷のガリガリ、アオリイカのねっとり、ピスタチオのカリカリ、イクラのプチプチといったいろいろな食感を組み合わせてお客様を混乱させることを意図しています。僕らが提供しているのは12皿のコースなので、最初のものは忘れられがちですから、一皿目ではインパクトや不思議さを楽しんで頂きたいと思っているんです」と川又さん。

ドリンクは新潟市西蒲区のワイナリー“ドメーヌ・ショオ”のスパークリングワインをベースにしたカクテル。酸が強いスパークリングにメロン果汁を合わせることで、メロンソーダのようなイメージのドリンクに仕上げています。こちらもメロンソーダという意外性を味わってもらうことを意図しているのだそう。

二品目 南蛮海老のタルタル × シャインマスカットとトマトのノンアルコールカクテル

二品目は、佐渡産南蛮海老と白根産シャインマスカット、イタリア産チーズを合わせたタルタルです。爽やかなブルーのプレートに載って運ばれてきました。 上に載っている泡は、新潟産の完熟トマトを細かく刻み、裏ごしして取り出した透明なエキスで作られているのだそう。それがソースの役割を果たしています。

南蛮海老のタルタルは通年出している料理で、今回はシャインマスカットと合わせていますが、桃やル レクチエなど時期によって合わせるフルーツが変わるのだそう。 南蛮海老のねっとりとした甘さとフルーツの甘さ。種類の異なる甘さと食感を楽しめます。
飲み物は、シャインマスカットとトマトの果汁を組み合わせたノンアルコールカクテル。トマトの成分が南蛮海老の甘さを引き立てるペアリングです。

三品目 ツルムラサキのバーニャカウダー × ジャスミンコーラ

三品目は新津で採れたツルムラサキのバーニャカウダー。「バーニャカウダーはイタリアの料理で、ニンニクとアンチョビを使ってソースを作りますが、これはアンチョビの代わりにサンマのコンフィを使っています。サンマの頭や骨、内臓など全てをペーストにしており、ほろ苦さを味わって頂けます」と川又さん。

さらに、神楽南蛮から取った辛みのあるオイルと、ピリッとした青山椒をアクセントに。ツルムラサキは苦みやアク感がある野菜ですが、バーニャカウダーがそれに勝るほろ苦い味わいとなっています。 器の個性も強いですが、こちらは田上町の土生田焼の器なのだそうです。
ドリンクは、中国の特級のジャスミン茶と越後薬草のYASOコーラを合わせたジャスミンコーラ。苦みのある料理に甘いドリンクを合わせる「対比のペアリング」です。

四品目 ブリのソテー × ジンジャー烏龍茶

次はブリの大トロを皮付きのままソテーした料理。皮目をしっかり焼いてカリカリにしているのが特徴で、皮の食感まで味わえます。一方、身の部分は半生仕上げ。薬味として、上には穂じそ、横には赤じその新芽が添えられており、ブリの美味しさを引き立てます。
ブリは1週間ほど寝かせることで、水分が抜けて味が凝縮。皮もしっかり焼き切れるのだそう。
ドリンクは中国産の凍頂烏龍茶に八角の香りを移し、そこに越後薬草のYASOジンジャーというシロップを合わせています。魚のくさみを消す役割としてジンジャーシロップを選んでいます。

五品目 蒲原牛のロースト × キヨ・ワインズ やすし&きよし

五品目は阿賀野市の蒲原牛のイチボのロースト。こちらは脂身の部分をトリミングして赤身だけを使っており、噛めば噛むほど肉のうまみを味わえる逸品です。「僕は牛肉や鹿肉に関しては一切熟成はかけずにフレッシュな状態でお出ししています。肉汁があふれる状態が美味しいと思っているからです」と川又さん。

お肉の下に敷かれているのは、佐渡産の黒イチジク“おぎビオレー”。ソースは新津産のビーツと赤ワイン、牛の骨から取っただしを合わせたもので、血のような色が生命感を感じさせます。 合わせているワインは、弥彦村にあるワイナリー“キヨ・ワインズ”の赤ワイン。こちらは弥彦産のブドウが使われています。

「ブドウの生産者がやすしさん。ワイナリーを営むのがきよしさん。それで、『やすし&きよし』という名前が付いています。このワインは新潟県内の飲食店でしか飲めない銘柄で、『新潟の飲食界を盛り上げよう』というストーリーがあるんです。豊かな香りとサラサラと飲める軽さが特徴で、脂を落とした赤身の肉との相性がいいですよ」と川又さん。

自由な発想の料理をロジカルにつくり出す

「僕はイタリアで修業をしたわけでもなく、良くも悪くもイタリア料理に対してのプライドがないんです。どんな調理法を入れてもいいし、コースの中にお刺身のような料理が入っても、かき氷が入っても美味しければいいという考え方でやっています。ただ、『それってどんなジャンルなの?』とお客様に聞かれた時にすごく伝わりにくいため、『コースの中にパスタを入れているのでイタリアンです』と答えたりもするのですが、イノベーティブやノンジャンルというのが僕の料理だと思います」と川又さん。

伝統の食文化や調理法を忠実に守るレストランも素敵ですが、既成概念に捉われない川又さんのコース料理は新しい食の体験をもたらしてくれるもの。

12品のコース料理の中でどんなオリジナリティあふれる料理とドリンクが提供されるのか!?

そんなワクワクを体験するために訪れてみてはいかがでしょうか?
Atelier CHIANTI(アトリエキャンティ)

Atelier CHIANTI(アトリエキャンティ)

住所:新潟市中央区花園1-5-9ベロウ花園1F
電話:025-288-5302
営業時間:17:45~23:00 (料理L.O. 22:00 ドリンクL.O. 22:00)
定休日:月曜・火曜・水曜
※完全予約制1日3組限定。
※メニューはお任せコース・フルペアリングの一本のみ。
※ペアリングはアルコールorノンアルコールから選べる。

エリア

新潟・阿賀エリア

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この記事を書いた人
リョウヘイ

ライター・カメラマン・編集者。1983年生まれ、新潟県五泉市育ち。
建築学生時代に旅に目覚め、20代の頃に25カ国を旅行。東京都内の出版社で海外旅行情報誌の編集に携わった後、新潟へUターン。
2018年に独立。日本の地方から世界の辺境まで、旅をしながら多様な文化と暮らしを探るのがライフワーク。